判決WATCHING 〜2000年 米国知的財産権法関連 〜
菊間 忠之
(翻訳ミス、要約ミスなどがあるかもしれません。ご指摘、ご指導を頂ければ幸いです。メールでご連絡ください。)
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Stryker Corp. v. Davol Inc.
(99-1202, -1555, CAFC, Dec. 12, 2000, Mayer, Newman and Scahll)
*Prosecution Laches
Symbol Technologies v. Lemelson Medical, Education & Research Foudation,
Limited Partnership
(00-1583, Dec. 18, 2000)
*"Integral"の解釈
Vanguard Products Corp. v. Parker Hannifin Corp.
(99-1427, CAFC, Dec. 14, 2000, Mayer, Friedman and Newman)
"Integral"の記述、製法の違いに関する主張によって、クレーム発明は明細書に開示されている製法で得られたものに限定されない。
*設計変更
Stryker Corp. v. Davol Inc.
(99-1202, -1555, CAFC, Dec. 12, 2000, Mayer, Friedman and Newman)
D社は以前差し止めを受けていた製品を設計変更して、再度販売したが、その設計変更はマイナーであったために、3倍賠償、弁護士費用の支払いを命じられた。
*非自明性
Apple Computer, Inc. v. Articulate Systems, Inc.
(99-1165, -1198, CAFC, Dec. 7, 2000, Newman, Archer and Clevenger)
*非自明性
Richard Ruiz v. A. B. Chance Co.
(99-1557, -1563, CAFC, Dec. 6, 2000, Newman, Michel and Rader)
非自明性の判断では、2以上の引例を組み合わせる動機付けがあるか否かを事実認定する必要がある。1966年の最高裁判決Graham事件参照。
*裁判管轄
LSI Industries Inc. v. Hubbell Lighting Inc.
(00-1052, CAFC, Nov. 29, 2000, Gajarsa, Linn and Dyk)
H社が特許侵害品をオハイオ州で販売していないのでオハイオ州でLSI社はH社に提訴できないと主張したが、CAFCはH社は侵害品以外の製品をオハイオ州に販売しており、オハイオ州に販売店を持っている。従ってH社は"Continuous
and Systematic"にオハイオ州と関係しているから、オハイオ州に裁判管轄権があると判示した。
*均等論と禁反言
Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kabushiki Co.
(95-1066, CAFC, Nov. 29, 2000, en Banc)
1997年の最高裁判決(Warner-Jenkinson事件)で提起された均等論の解釈についてこのFesto事件においてCAFCが意見を示した。本事件では5つの点について争われ、そのうち4つについてCAFCは回答をした。
(1)クレームの補正によって禁反言が生じたか否かの判断において、”特許性に関係する実質的理由”というのは先行技術を回避するために行われた補正に限定されるか? 回答:限定されない。先行技術を回避するために行われたものにも禁反言は適用ある。
(2)自発的クレーム補正は禁反言を生じさせるか? 回答:生じさせる。
(3)補正によって禁反言が生じたとしても、補正後のクレームの文言どおりに限定されるのではなく、その補正後のクレームからも均等の範囲があるか? 回答:禁反言が適用されたら均等の範囲はない。
(4)補正についての説明がなく禁反言の適用が推定された場合でも、補正後のクレームから均等の範囲があるか? 回答:禁反言の適用が推定されたら均等の範囲はない。
*明細書に開示された発明の態様に限定
John D. Watts v. XL Systems, Inc.
(99-1526, CAFC, Nov. 14, 2000, Bryson, Gajarsa and Linn)
地裁はクレームをmeans claim形式として表現されているとしてクレーム解釈を非侵害の判決をした。CAFCはクレームはmeans
claim形式ではなく通常のクレーム形式であるとしたが、結論としては、明細書に開示された態様にクレームの用語"sealingly
connected"を解釈し非侵害とした。審査禁反言と、クレームの術語が不明瞭であり明細書に開示された態様は一つしか無かったことから、クレームの用語を限定的に解釈した。
*権利行使不能
Li Second Family Limited Partnership v. Toshiba Corp.
(99-1451, CAFC, Nov. 8, 2000, Plager, Clevenger and Schall)
Liは、1971年に半導体の製造方法に関する出願をし、それを1973年にCIP出願し、1990年に登録(800特許)になった。800特許ではグルーブの底が0.1ミクロン以内との限定があった。
一方で、1971年の出願に基づいて1977年にCIP出願し1990年に半導体の構造についての発明が特許(513特許)された。513特許は800特許の審査官とは別の審査官が審査していた。513特許にはグルーブの底が1ミクロン以内との限定があった。513特許の審査では、先行技術の発明日との後先が争点の一部となっていたが、513特許は先行技術よりも早い日の発明日を認められなかった。513特許の審査経過を800特許の審査においてLiは開示しなかった。
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Texas Instruments Inc. v. I.T.C.
(00-1381, CAFC, Nov. 7, 2000, Newman, Lourie and Rader)
*非自明性、弁護士費用
Yamanouchi Pharmaceutical Co., Ltd. v. Merck & Co., Inc.
(99-521, CAFC, Nov. 3, 2000, Newman, Rader and Gajarsa)
*ネット販売に関する特許
Interactive Gift Express, Inc.(現 E-Data Corp.) v. Compuserve Incorporated
et al.
(99-1324, CAFC, Nov. 3, 2000, Plager, Schall and Linn)
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Lawrence N. Sparks v. Eastman Kodak Co.
(00-1049, CAFC, Oct. 31, 2000, Lourie, Rader and Linn)
E社はS氏のふまじめな控訴による損害賠償を求めたが、それが拒否された。
*112条(lack of a written description)
Purdue Pharma L.P. v. Faulding Inc. and Zeneca Inc.
(99-1416, -1433, CAFC, Oct. 25, 2000,Plager, Smith and Bryson)
*Obviousness
Brown & Williamson Tobacco Corp. v. Phillips Morris Inc.
(99-1389, CAFC, Oct. 17, 2000, Clevenger, Bryson and Linn)
British American Tobacco Co., Ltd.(BAT社)の従業員Luke氏が1980年代に煙草葉を減らした紙巻き煙草の研究をしていた。そして効果的に燃える様に巻き煙草の円周を小さくすることを思いついた。BAT社の子会社、B&W社はLuke氏の極細たばこの米国における排他的ライセンスを得た。B&W社はこのLukeたばこを包含する発明を出願し1987年1月20日に登録になった。特許発明は円周10〜19mmを一要件としていた。伝統的たばこは円周が23〜27mmであった。B&W社は"Capri"(円周17mm)の販売を開始した。2年以上経過後に競業のPM社は"Virginia
Slims Super Slims"(VSSS)の販売を開始した。B&W社はPM社を特許侵害で提訴した。地裁は特許発明は自明ゆえに無効との判決をした。
(CAFC)1974年にReynolds Tobacco Co.(R社)が"More"を販売した。"More"の販売は102bの先行技術となる。"More"は円周20.8mmであったがその他の要件はクレームの要件を満たしていた。発明時の当業者において23〜27mmの伝統的たばこを21mmの細いたばこにすることは良く知られていた。引例Riceなどが節約のために煙草を細くすることを示唆している。発明の効果は燃えやすくなることであるがLukeの研究目的は煙草節約であった。以上のことなどから自明であると判決した。
*商標
On-Line Careline, Inc. v. American Online, Inc.
(99-1432, CAFC, Oct. 10, 2000, Plager, Louri and Gajarsa)
Careline社のインターネット接続サービスの商標"On-Line Today"とAOL社のインターネット目次サービスの商標"Online
Today"は混同を生じる。
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Bottom Line Management, Inc. v. Pan Man, Inc.
(99-1467, CAFC, Oct. 4, 2000, Mayer, Friedman and Michel)
*発明者の署名
Ajinomoto Co., Inc. v. Archer-Daniels-Midland Co.
(99-1089,-1099,-1209,-1210, CAFC, Oct. 3, 2000, Newman, Smith and Rader)
A社は14名のロシア人発明者による発明を米国出願し、その譲受人である。米国出願の際に提出したDeclarationに14名の発明者のサインがなされていたが、専門家鑑定で6又は7名のサインは本人のサインではないとした。ただし、元々のサインはロシア語文字であり、英語でサインされたものとの比較は困難であった。ADM社は該発明のロシア出願のサインが当該14名のサインではないとの主張はしなかったが、米国のサインは本人がサインしたものではないから権利無効であると主張した。CAFCは米国法の技術的要求についての知識にかけていただけであり、騙す意図はなかったとして権利無効とのADM社主張を退け、ADM社がA社に損害賠償するよう判決した。
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Gerald Banks v. Unisys Corp.
(00-1030, CAFC, Sep. 28, 2000, Mayer, Friedman and Schall)
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Lampi Corp. v. American Power Products, Inc.
(00-1011,-1055, CAFC, Sep. 28, 2000, Mayer, Rader and Bryson)
*商標
Packard Press, Inc. v. Hewlett-Packard Co.
(00-1076, CAFC, Sep. 25, 2000, Mayer, Clevenger and Rader)
情報プロセッシングサービスについての"Packard Technologies"と幅広いコンピュータハードウェア製品についての"Hewlett-Packard"との混同があり得るか否か? 特許庁は混同すると審決した。CAFCは:1)"Packard"だけを観てマークが類似するとの判断は誤りである、外観や呼称についての判断もしなければならない。2)物とサービスの類比判断に誤りがある。として差し戻した。
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Moore U.S.A., Inc. v. Standard Register Co.
(98-1386,-1387, CAFC, Sep. 22, 2000, Newman, Michel and Clevenger)
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Life Technologies, Inc. v. Clontech Laboratories, Inc.
(99-1550, CAFC, Sep. 21, 2000, Michel, Bryson and Gajarsa)
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Cultor Corp. v. A.E. Staley Mfg. Co.
(99-1232, CAFC, Sep. 21, 2000, Newman, Friedman and Rader)
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Southwest Software, Inc. v. Harlequin Inc.
(99-1213,-1214, CAFC, Sep. 18, 2000, Michel, Skelton and Schall)
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Caterpillar Inc. v. Deere & Co.
(99-1593, CAFC, Sep. 14, 2000, Mayer, Plager and Lourie)
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Upjohn Co. v. MOVA Pharmaceutical Co.
(99-1092, CAFC, Sep. 11, 2000, Newman, Skelton and Archer)
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Ecolochem, Inc. v. Southern California Edison Co.
(99-1043, CAFC, Sep. 7, 2000, Michel, Clevenger and Rader)
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Sibia Neurosciences, Inc. v. Cadus Pharmaceutical Corp.
(99-1381, CAFC, Sep. 6, 2000, Mayer, Michel and Gajarsa)
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Dow Chemical Co. v. The United State
(97-5035,-5038, CAFC, Sep. 6, 2000, Rich, Archer and Gajarsa)
米国鉱山局がダウ社の特許を侵害したとして87百万ドルの損害賠償を支払えというクレーム裁判所の判決が、提訴から17年目の今年、CAFCによって棄却された。クレームの解釈に誤りがあり、正しい解釈によって侵害判断をするように差し戻した。
*不公正行為〜発明者
Perseptive Biosystems, Inc. v. Pharmacia Biotech, Inc.
(98-1325, CAFC, Aug. 29, 2000, Newman, Plager and Clevenger)
クロマトグラフィーに関する発明の特許出願を3人の発明者(Afeyan, Regnier
and Dean)のみで行った。しかし、他にも発明者として該出願に関与すべき人(Waner,
Lloyd and Round)がいることが判明した。3人だけで行った次の5つの特許出願手続きが不公正行為になるか否が争点となった。5つの行為:1)"RegnierがPolymer
Labsで粒子研究に初めて着手し直接に関与したと陳述した。2)実際はLloydとRoundsが特性を発見した時に、彼らだけで発見したと陳述した。3)3人の発明者のうち少なくとも一人は、彼の研究室とPolymer
Labsとが深く協力し合っていたことを意図的に開示しなかった。4)Polymer Labsの研究データを広い範囲で交換しあっていたことを隠した。5)Polymer
Labsが単に素原料を供給しているだけであると示唆した。
多数意見として、3人の発明者だけに特許を与えるべきか否かは重要なことである。またPolymer
Labsの協力を意図的に隠していた。以上から本出願手続きには不公正な行為があり、権利行使不能であると判決した。
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C & F Packing Co. v. IBP, Inc.
(99-1312,-1313, CAFC, Aug. 25, 2000)
*輸入業者は中国で使われたプロセスが米国特許によって包含されるものでないことを証明する必要がない。
Nutrinova Nutrition Specialties & Food Ingerdients GmbH v. Int'l Trade
Commission
(99-1293, CAFC, Aug. 25, 2000)
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CAE Screenplates Inc. v. Heinrich Fiedler GmbH
(99-1278, CAFC, Aug. 24, 2000)
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Jet, Inc. v. Sewage Aeration Systems
(99-1518, CAFC, Aug. 23, 2000, Mayer, Clevenger and Gajarsa)
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KCJ Corporation v. Kinetic Concepts, Inc.
(99-1248, CAFC, Aug. 18, 2000, Plager, Clevenger and Rader)
*排他的実施権者の訴訟当事者適格
Prima Tek II, L.L.C. v. A-Roo Company
(99-1581, CAFC, Aug. 17, 2000, Mayer, Clevenger and Gajarsa)
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Tom Cunningham v. Laser Golf Corp.
(99-1585, CAFC, Aug. 15, 2000)
*ダブルパテント
Eli Lilly & Co. v. Barr Laboratories, Inc.
(99-1262,-1263,-1264,-1303, CAFC, Aug. 9, 2000)
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Arjun Singh v. Anthony J. Brake
(99-1259, CAFC, Aug. 4, 2000)
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Genentech Inc. v. Chiron Corp.
(99-1506, CAFC, Aug. 4, 2000)
G社の発明者がC社よりも早くIGF-1を製造した。しかし、G社発明者はIGF-1に蛋白質成長促進効果があることに気づいていなかった。G社はコンサルタントにIGF-1の試験を依頼した。コンサルタントはこの試験で蛋白質の成長促進効果があることに気づいたが、G社発明者には報告しなかった。CAFCはコンサルタントの試験はG社発明者が蛋白質成長促進効果確認のために依頼したものではないから、G社発明者が本発明の有用性を確立したものではないとして、G社がC社よりも早く発明をなしたとの地裁判決を棄却した。
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Hilgraeve Corp. v. McAfee Associates, Inc.
(99-1481,-1491, CAFC, Aug. 2, 2000)
*組換DNA(クレーム解釈)
Schering Corporation and Biogen, Inc. v. Amgen Inc.
(99-1251, CAFC, Aug. 1, 2000, Rader, Archer and Gajarsa)
*故意侵害(Willful Infringement)評決において、損害賠償額の増額及び代理人費用の請求を明確な理由なしに拒否できない。
Tate Access Floors, Inc. v. Maxcess Technologies, Inc.
(99-1347, -1348, CAFC, Aug. 1, 2000, Michel, Lourie and Schall)
*審査経過参酌
Hockerson-Halberstadt, Inc. v. Avia Group International, Inc.
(99-1505, CAFC, July 27, 2000, Mayer, Clevenger and Gajarsa)
*商標:In Privity
International Nutrition Company v. Horphag Research, Ltd.
(99-1385, CAFC, July 27, 2000, Lourie, Clevenger and Bryson)
*審理引き延ばし、訴訟費用支払いを弁護士に
Fiskars, Inc. v. Hunt Manufactureing Co.
(98-1560, -1566, CAFC, July 24, 2000, Newman, Rader and Schall)
*ミーンズクレーム
Ishida Co., Ltd. v. Alfred A. Taylor
(99-1537, CAFC, July 20, 2000, Michel, Clevenger and Rader)
*112条第2パラグラフ
Sandra Solomon v. Kimberly-Clark Corporation
(00-1033, CAFC, June 30, 2000, Lourie, Clevenger and Bryson)
S社は女性の生理期間中に使用される使い捨てパンティに関する特許権者である。特許は厚い吸収層と薄い部材からなる窪み部分とをクレームしていた。デポジションにおいて、発明者は均一な厚みの部材でパンティはできていると証言した。この証言から、明細書に発明者が発明と考える
Subject matterをクレームしなければならないという112条に違反し、特許無効であると地裁は判決した。
(CAFC)112条はクレーム発明の定義付けの問題である。従って、クレーム発明は、発明者の証言とではなく、明細書の記述と対比して判断すべきである。発明者の証言に基づいた112条による権利無効の判断は誤りである。発明者が発明と考える
Subject matterの問題はむしろ102条(f)の問題である。K社は明瞭明白な証拠(Clearly
and Convincing evidence)を示していない。地裁判決を破棄する。
*審査経過禁反言
Canton Bio-Medical, Inc. v. Integrated Liner technologies, Inc.
(98-1568, CAFC, June 30, 2000, Newman, Froedman and Rader)
*untimely
Glitsch, Inc. (Tray, Inc.) v. Koch Engineering Company, Inc.
(99-1377, CAFC, June 30, 2000,Lourie, Clevenger and Bryson)
G社が特許権侵害とトレードシークレットの悪用でK社を訴えた。1993年に公判裁で不利になった。K社は権利乱用の抗弁をしようとしたが、適時でないとされた。そこで、K社は権利乱用の確認の訴を起こした。
(CAFC)権利乱用の抗弁を拒否されたことに対しての訴えは新たな訴ではなく、最初の訴のなかで行うべきであると判示した。
*商業目的にプロトタイプ機器を試験するのは侵害になる。
Embrex, Inc. v. Service Engineering Corp.
(99-1064, CAFC, June 28, 2000, Lourie, Clevenger and Rader; Per Curiam)
*専門家意見
Arthur A. Collins, Inc. v. Northern Telecom Limited
(99-1400, CAFC, June 16, 2000, Newman, Bryson and Gajarsa)
専門家の意見(侵害であるという鑑定)を支持する事実を示さなかったので、特許権非侵害とされた。
*”Quasi-Estoppel”
In re Baker Hughes Incoporation
(99-1463, CAFC, June 14, 2000, Mayer, Plager and Lourie)
(背景)P社が当初特許権を所有していて、B社が2個の引例に基づいて再審査請求を行った。B社以外にも再審査を請求した者がおり、二件の再審査は併合され審議されていた。その後、B社は当該特許の所有者になり、再審査の請求人ではなく被請求人になった。審判部は該特許発明はB社が提出した2個の引例に基づいて自明であると審決した。B社は控訴した。
(CAFC)B社は審判部のクレーム解釈は誤りであり、拒絶すべきでないと主張した。これに対して審判部は、解釈に誤りはない。自明というよりは実質同一(Anticiation)であると反論した。さらに、審判部は、再審査請求時に提出した引例から特許性がないとB社が主張しており、特許が有効であるとの反論は”Quasi-Estoppel”であると主張した。
(判示事項)自明性(法律問題)に関する規定は103条にある。この規定では本願発明と引例との相違点が自明な事項か否かで特許すべきかどうかを決する。従って、”Quasi-Estoppel”であるとの審判部の主張は誤りである。Quasi-Estoppelは納税者が自己の有利のために、同じ事実に基づいて反対の立場になることを妨げる目的がある。Quasi-Estoppelはduty
of consistency(一貫性)として知られている。先の意見(立場)が、事実についての過った陳述になる場合にだけ適用される。法律についての過った陳述には適用がない。
この事件で、審判部はB社の再審査における陳述が事実についての過った陳述になることを示していない。B社の再審査における地位が変わったとしても、審査は法律問題として独立に行われるのであるからB社の地位変動はduty
of consistencyに影響しない。従ってQuasi-Estoppelは適用されない。自明性についてCAFCは判断し、審判部のクレーム解釈は誤りであると判示し、審判部の審決を覆した。
*Offer to Sell in China
Rotec Industries, Inc. v. Mitsubishi Corporation
(99-1275, CAFC, June 13, 2000, Michel, Clevenger and Rader)
R社はコンクリートの長距離輸送用のコンベヤーシステムに関する特許権を有していた。三菱に特許権侵害で提訴した。M社は中国のダム建設プロジェクトのためにシステムを売った。1994年改正法で導入された"Offer
to Sell"が米国で行われたか、それとも中国で行われたかが争点であった。販売申出の意味は契約法に従って解釈される。その解釈によれば、米国での販売申出を立証する証拠はない。従ってM社は権利侵害してない。
*On Sale Bar
Alexey T. Zacharin v. United States
(99-5086, CAFC, June 13, 2000, Newman, Michel and Gajarsa)
試験又は研究のために製品が使われるかどうかに関わらず、製品の供給契約は販売契約である。
*Best mode開示要件
Northern Telecom Limited v. Samsung Electronics Co., Ltd.
(99-1208, -1227, CAFC, June 13, 2000, Michel, Archer and Clevenger)
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Environ Products, Inc. v. Furon Company
(99-1218, -1219, CAFC, June 12, 2000, Mayer, Newman and Lourie)
*商標登録異議
Recot, Inc. v. M. C. Becton
(99-1291, CAFC, June 7, 2000, Michel, Clevenger and Rader)
指定商品スナック菓子の登録商標"FRITO-LAY"とドッグフードの商標出願"FIDO
LAY"との誤認混同の有無。
USPTO審判部は誤認混同は生じないと審決した。
CAFCはUSPTOが次のような過った判断をしたと判示した。商品の類似性が低いとし、また"FRITO-LAY"の知名度(周知性:スナック菓子のシェア50%以上)を軽くみた。人間用スナック菓子を供給している数社はペットフードも供給していることを考慮しなかった。両商品は高額でなく衝動的に購入されるものであるという点を重視しなかった。商標の一部同士のみで、すなわち、"FRITO"と"FIDO"との外観、観念及び呼称の類似性のみで判断をした。
CAFCは審決を取り消し、審判部に差し戻した。
*継続出願の特許主題の重要要素が元に出願に記載されていない場合でも、特許は自動的に無効とならず、単に出願日が遡及しない(120条の効果がない)というだけである。
Martin Gardner Reiffin v. Microsoft Corporation
(99-1502, CAFC, June 5, 2000, Newman, Michel and Schall)
(Per Curiam)
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Elekta Instrument S.A. v. O.U.R. Scientific International, Inc.
(99-1556, CAFC, June 1, 2000, Lourie, Rader and Bryson)
クレームの用語は明細書の記述によって限定してはいけない。一方でクレームの限定で定義された用語で明細書の記述を限定しても良い。現クレームは先行技術に対する応答によって補正されたという事実によってもクレームを限定解釈すべきことを支持する。
*Sanction(民事訴訟規則11条)
Hoffman-La Roche Inc. v. Torpharm, Inc.
(99-1466, CAFC, May 23, 2000, Mayer, Friedman and Gajarsa)
*均等論〜非侵害
Vehicular Technologies Corporation v. Titan wheel International, Inc.
(99-1042, CAFC, May 22, 2000, Plager, Clevenger and Rader)
*損害賠償額の算定
U.S. Valves, Inc. v. Robert F. Dray, Sr., and Integrated Molding Technologies
(99-586, -1587, CAFC, May 22, 2000, Michel, Clevenger and Rader)
*
Advanced Display Systems, Inc. v. Kent State Univarsity and Kent Display
Systems, Inc.
(99-1042, -1013, CAFC, May 18, 2000, Plager, Schall and Gajarsa)
*Surrender
Bayer AG and Bayer Corporation v. Elan Pharmaceutical Research Corporation
and Elan Corporation
(99-1365, CAFC, May 12, 2000, Clevenger, Schall and Bryson)
*Obvious
Riverwood International Corporation v. The Mead Corporation
(99-1274, CAFC, May 17, 2000, Mayer, Schall and Gajarsa)
自明性の認定要件 (1)先行技術の範囲と内容、(2)先行技術とクレーム間の相違、(3)先行技術における当業者の水準、および非自明性の客観的証拠、(4)引例の教示を組み合わせるような示唆または動機付けの存在
商業的成功に関する証拠は低く評価された。
*Anticipation
In re Gilbert P. Hyatt
(99-1182, CAFC, May 12, 2000, Lourie, Rader and Bryson)
*クレームの文言解釈
Aqua-Aerobic Systems, Inc. v. Aerators Inc.
(98-1465, CAFC, May 3, 2000, Newman, Smith and Bryson)
*ミーンズクレームの解釈
Envirco Corporation v. Clestra Cleanroom, Inc.
(99-1111, CAFC, April 18, 2000, Mayer, Lourie and Rader)
地裁は"baffle means"を112条第6節のミーンズプラスファンクションクレームの構成要件であるとして、明細書に開示されている構造及びその均等な物に限定的にクレームを解釈し、非侵害の略式判決を下した。
しかし、CAFCは"means"の単語が使われた場合にはミーンズプラスファンクションクレームであると推定されるが、その機能を実現するために構造が十分にクレーム中で表されている場合にはこの推定は働かない。"baffle"はそれ自身だけで構造を表す単語である。そしてクレーム中で"baffle"の構造を開示している。従って、"baffle
means"はミーンズプラスファンクションクレームの構成要件ではないと認定し、クレームは明細書に開示されているものによって限定的に解釈されないと判決した。
*Abstructの役割
Hill-Rom Company, Inc. v. Kinetic Concepts, Inc.
(99-1314, -1315, CAFC, April 14, 2000, Plager, Lourie and Bryson)
規則1.72では、クレームの範囲を解釈するために要約Abstactを使うことを禁止している。ところが、地裁はクレーム中の"cushion"の解釈をするときに、辞書及び明細書の記述を参酌できるとした。そして、明細書の記述だけでなく、要約の記述も参酌してクレーム解釈を行った。地裁はこの解釈方法で非侵害の判決をした。CAFCも地裁判決を追認し、規則1.72を適用しなかった。
*"On Sale" Bar
STX, LLC v. Brine, Inc. and Warrior Lacrosse, Inc.
(99-1341, CAFC, April 13, 2000, Mayer, Lourie and Schall)
S社のセールスマンが出願日の1年2日前に購入申込書を書いていた。S社は、該製品は開発中(発明未完成)にあったと主張したが、扱い易さの改良や特性の向上などのために調整が必要であるということは無関係であるとして、権利無効とされた。
*ミーンズクレームの均等解釈
Kemco Sales, Inc v. Control Papers Company, Inc.
(99-1349, CAFC, April 7, 2000, Plager, Lourie and Clevenger)
K社特許は封筒に関する発明に係るものである。クレーム中の"closing
means"に対応する構造として、明細書中にはフラップだけが開示されていた。
被疑侵害物はクレーム中の"closing means"と同じ機能Functionを実現するが、実質的に異なる方法Wayで実質的に異なる結果Resultとなる地裁は認定し非侵害の略式判決を下した。CAFChaこれを追認した。
*"On Sale" Bar
Helifix Limited v. Blok-Lok, Ltd.
(99-1196, CAFC, April 7, 2000, Rader, Schall and Gajarsa)
1998年のPfaff事件において"On Sale"の条件:商業的な販売申出された客体が特許されるために十分なものであることが必要であることが示された。特許されるために十分なものであるという証明の一手段として発明がReduction
to practiceされたことを立証する方法がある。
本事件ではH社はTrade showでReduction to practiceがあったか否かが争点となったが、B社はH社のパンフレットなどを証拠に立証を試みたが十分でなく、CAFCはH社特許無効という地裁判決を覆した。
*均等論
Optical Disc Coporation v. Del Mar Avionics and Bruce Del Mar
(99-1225, CAFC, April 7, 2000, Plager, Schall and Gajarsa)
*Sanction(民事訴訟法規則11条)
View Engineering, Inc. v. Robotic Vision Systems, Inc.
(99-1399, CAFC, March 29, 2000, Michel, Lourie and Linn)
R社はコンピュータチップのスキャニングに関する147特許を保持していた。V社は、147特許は無効であり、V社の製品は非侵害であるとの確認の訴を提起した。R社は8件の特許権をV社は侵害しているとして反訴した。
ディスカバリーの手続きの間にR社は2件の特許権は非侵害である決定し、訴を取り下げた。その後さらに3件の特許権についての訴も取り下げた。V社はR社とモリソン事務所は理由のない根拠によって8件もの特許権の侵害の訴を提起したとして、規則11条のSanction(制裁)を求める動議をした。
V社製品を見たことがなにR社副社長が「V社はR社特許権を侵害しているらしい」という信念に基づいてMorrison事務所は訴を提起した。事実に関する理にかなった調査をせずに8件もの特許権についての侵害を訴えた。地裁はこれらの事実からMorrison事務所に対しV社の訴訟費用の75%に当たる約98,000ドルの制裁を課す決定をした。CAFCは地裁判断に同意した。
*パラメーター特許
Union Oil Company of California v. Atlantic Richfield Company
(99-1066, CAFC, March 29, 2000, Mayer, Lourie and Rader)
(背景)UNOCAL社は清浄ガソリンに関する393特許を所有していた。この特許は8つの化学的特性で規定された清浄ガソリン組成物をクレームしている。クレームにはガソリンの分子構造や、成分に関する規定はない。いわゆるパラメータだけで規定されたクレームである。
アトランティック社、モービル社、シェル社などの精油会社は特許無効の確認の訴を提起した。UNOCAL社は故意侵害で反訴した。49日間のトライアルの後、判事は102条と112条とを分けて無効かどうかを陪審員に求めた。13日間の討議の結果、陪審員は争点となるクレームは明細書の記述で支持されており112条の規定を満たしている、102条の無効もないと評決した。A社らはJMOLのモーションを起こしたが、地裁は「発明者がクレームされたSubject
Matterを所持していたという評決を支持するに十分な証拠が、明細書の記述の中にある」として、モーションを否定した。A社らはCAFCに控訴した。
(CAFC)・[102条]A社ら、軍用機用やレーシング用の燃料によって新規性がないとの主張をしたが、それら燃料が本特許クレームの特性を持っていたのかどうかを単一引例で十分に示していないとして地裁の判断を追認した。
・[112条]112条第一節の記載要件はクレームされた化合物のIdentical
descriptionを要求していないが、発明者がクレームされたものを発明したことを当業者に理解できるように十分開示することを要求している。トライアル中になされた当業者による技術説明など、明細書の審査によって、地裁がなした「発明者がクレームされたSubject
Matterを所持していたという評決を支持するに十分な証拠が、明細書の記述の中にある」という判決に、CAFCは同意した。
Lourie判事は「発明者がクレームされたSubject Matterを所持していたという十分な証拠が、明細書の記述の中にない」として反対意見を述べている。
*Means Plus Function
Clearstream Wastewater Systems, Inc. v. Hydro-Action, Inc.
(99-1299, CAFC, March 27, 2000, Plager, Schall and Gajarsa)
CWS社の特許のクレームには、"Injecting Air"というMeans Plus
Functionを含む構成要素の組み合わせに係る発明が請求されていた。HA社はMeansに対応する明細書中に記載された構造は新規な構造物でなければならないから、クレームにおいてMeansが包含する範囲は、新規構造物に限ると主張した。明細書にはMeansに対応する構造物として従来技術において使われている構造物が開示されていたが、地裁はMeansの範囲から従来技術に相当する構造物を除外してクレーム解釈した。
(CAFC)発明の新規性はMeansに対応する構造の新規性とは無関係である。構成要素の組み合わせにおいて各構成要素が従来技術であっても構わない。地裁の解釈は誤りである。
*Means Plus Function
IMS Technology, Inc. v. Haas Automation, Inc.
(99-1019, -1067, CAFC, March 27, 2000, Mayer, Michel and Plager)
*均等論
Zodiac Pool Care, Inc. v. Hoffinger Industries, Inc.
(99-1224, -1233, CAFC, March 24, 2000, Bryson, Skelton and Gajarsa)
*数値限定
Jeneric/Pentron, Inc. v. Dillon Company, Inc.
(99-1283, CAFC, March 20, 2000, Newman, Archer and Rader)
酸化セリウムの含有量が0〜1%の歯科用磁器組成物とクレームしている特許で、酸化セリウム含有量1.61%の磁器組成物を侵害で訴えた。しかし、同じクレーム内で、他の成分の含有量については”約”という接頭語をつけていた、また先行技術を避けるためにその数値範囲を狭く解釈する必要があったという理由で、非侵害の判決をした。CAFCはこれに同意した。
*二次的意義(Secondary Meaning)が示された場合に限り、
未登録の製品デザイン〜トレードドレス〜は自他識別力があり、保護対象となり得る。
Wal-Mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.
(99-150, US Supreme Court, March 22, 2000)
*
Semiconductor Energey Laboratory Co., Ltd. v. Samsung Electronics Co.,
Ltd. et al.
(98-1377, 99-1103, CAFC, March 2, 2000, Michel, Skelton and Schall)
(背景)SEL社は半導体技術の研究開発を行っている日本企業で、ライセンス供与によって業をなしている。1980年からSEL社は各国に5000件以上の特許出願をし、米国にも1500件の権利を有している。山崎俊平氏は社長であり、争点となった636特許の発明者でもあった。
1995年6月7日に636特許が出願され1996年8月6日に特許発行した。1995年11月15日に15頁に及ぶIDSを、90件の文献リストと共に提出している。このリストには日本の特開昭56-135968号(キャノン出願)が含まれていた。キャノン出願は日本語で29頁あったが、その内容を英文で1頁に要約し、それをIDSとして提出した。
1996年10月10日にSEL社はS社をヴァージニア東部地裁に636特許の侵害で提訴した。S社は不公正行為により権利行使不能の主張をした。地裁はこれを認めた。
(CAFC) CAFCは騙す意図と重大性について検討し、IDSで提出した英文要約は発明の重要部分について記述していなかった。米国弁護士のGerard
Fergusonがこの出願を代理していた。F氏がUSPTOに或る重大な先行技術文献 を提出することを求めたという理由で、山崎氏はF氏の代理権を一時的に取り消したことがあった。CAFCはだます意図があったとして地裁の判決を確認した。
*移転契約
Speedplay, Inc. v. Bebop, Incorporated
(99-1527, -1528, CAFC, March 1, 2000, Bryson, Skelton and Gajarsa)
S社は会社創設者と、次のような条項を含む移転契約を締結していた。B社は下記契約では特許権の移転はなされていないからS社に提訴権はないと主張した。CAFCは特許権侵害についての訴訟を起こすことができると判決した。
(1)契約書には間違った特許番号が記述されていた。
(2)創設者は制限された提訴権を保持する。
(3)創設者はS社によって制限された拒否権を保持する。
(4)創設者は改良について制限された権利を保持する。
(5)契約は将来の特許についても権利移転することを規定していた。
*
Urtra-Tex Surfaces, Inc. v. Hill Brothers Chemical Co.
(99-1081, -1024, CAFC, February 29, 2000, Mayer, Archer and Lourie)
*
CSU, L.L.C. v. Xerox Coporation
(99-1323, CAFC, February 17, 2000, Mayer, Archer and Plager)
*
In re Robert J. Gartside and Richard C. Norton
(99-1241, CAFC, February 15, 2000, Lourie, Clevenger and Rader)
*
Cortland Line Company, Inc. v. The Orivis Company, Inc.
(99-1081, -1109, CAFC, February 14, 2000, Rader, Friedman and Archer)
*
Kraft Foods, Inc. v. International Trading Company
(99-1240, CAFC, February 14, 2000, Michel, Smith and Rader)
*
In re Spalding Sports Worldwide Inc.
(595, CAFC, February 11, 2000, Lourie, Rader, and Bryson)
*
Phonometrics, Inc. v. Hospitality Franchise Systems, Inc.
(99-1086, CAFC, February 9, 2000, Rader, Skelton and Archer)
*裁判管轄
Ole K. Nilssen v. Motorola, Inc.
(99-1223, CAFC, February 9, 2000, Lourie, Rader, and Bryson)
(背景)1993年にNilssenがM社をイリノイ州北部連邦地裁に、特許権侵害(連邦法)と、トレードシークレットの盗用、契約違反(州法)などを主張して訴えた。地裁での訴答(Pleading)は特許事件に関しては十分行われなかった。特許事件のディスカバリーが始まる前に、州法事件のディスカバリーが終結したので、またNilssenが再審査請求を行ったので、地裁は特許事件を除いた州法事件についての公判(Trial)を行った。M社は特許事件を切り放し、概事件については再出訴すべきだと提案し、Nilssenはそれに反対したが、地裁はM社の提案を受け、特許事件を棄却し、特許事件について再度訴状を提出するように求めた。Nilssenは特許事件を1996年9月に再出訴した。1998年州法事件に関して地裁は判決をなした。NilssenはCAFCに控訴した。M社は第7巡回連邦裁判所への移転を動議した。地裁はM社の動議を棄却した。
(CAFC)特許事件は棄却されており、本事件は特許に関するものではないからCAFCに管轄権がないと判断した。
*抵触審査
S. Sheffield Eaton, Jr v. Joseph T. Evans, Jr
(99-1276, CAFC, February 2, 2000, Rader, Archer and Gajarsa)
(背景)Eatonは4,873,664特許を取得していた。EvansはSN07/057,100出願をしていた。両発明は非揮発性強誘電体メモリーセルに関するものであった。USPTOは抵触審査の宣言をした。Evansは1985年にKrysalis社で強誘電体を使ったメモリーセルの開発を始め、1986年4月にシングルセルメモリーの設計を始めた。1986年の6〜7月ごろに同僚のWomackがシングルセルメモリーのプロトタイプ”TD01”を開発し、同時に同僚のKinneyがTD01の特性を調べた。TD01には抵触審査のカウントの要件である”sense
amplifier”が取り付けられていなかったが、USPTO審判部は1986年10月3日にはカウントの主題を着想していたとKinneyの証言によって確信させられた。そして、TD01を試験する際にsense
amplifierではなくオシロスコープを取り付けていたが、TD01が意図した目的どおりに動作したことから1986年12月にはカウントの主題を実施したと判断した。一方、Eatonは1987年2月12日に米国出願しこの日が発明実施日と擬制された。そしてたとえEatonが先に着想していたとしても、発明実施までに理に適った勤勉さがなかったとして、Evansが先発明者であると審決を下した。Eatonはこれに控訴した。
(CAFC)抵触審査では均等論の適用はない。Evansのプロトタイプにはオシロスコープが取り付けられており、これによって、同一の方法、同一の機能、同一の結果が得られたとして、USPTOはTD01はカウントの要件を満たしていると判断したがそれは誤りであると判決した。
*自明性
Winner International Royalty Corp. v. Ching-Rong Wang
(98-1553, CAFC, January 27, 2000, Michel, Rader and Gajarsa)
*
Pioneer Hi-Bred International, Inc. v. J.E.M. AG Supply, Inc.
(99-1035, CAFC, January 19, 2000, Mayer, Newman and Lourie)
*
Automated Business Companies, Inc. v. NEC America, Inc.
(99-1316, CAFC, January 28, 2000, Michel, Plager and Bryson)
*
Arthur Vanmoor v. Wal-Mart Stores, Inc.
(99-1190, -1256, CAFC, January10, 2000, Mayer, Archer and Rader)
以上。