判決WATCHING 〜1999年 米国知的財産権法関連 〜
菊間 忠之
(翻訳ミス、要約ミスなどがあるかもしれません。ご指摘、ご指導を頂ければ幸いです。メールでご連絡ください。)
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Vivid Technologies, Inc. v. American Science & Engineering, Inc.
(98-1303, CAFC, December 29, 1999, Newman, Lourie and Schall)
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Atmel Corporation v. Infromation Storage Devices, Inc.
(99-1082, CAFC, December 28, 1999, Mayer, Lourie and Black)
*The Gray Market
Gamut Trading Company et.al. v. I.T.C. and Kubota Tractor Corporation et.al.
(97-1414, CAFC, December 22, 1999, Rich, Smith and Newman)
(背景)Kubota社は、農業用耕作トラクターを製造販売し、米国にも輸入していた。Kubota社は日本向けには米作に適した耕作トラクターを販売し、米国向けには米国仕様のトラクターを輸出していた。Kubota社の米国法人は米国仕様のトラクターのメンテナンス業務おこなっていた。Gamut社は日本仕様のKubota社製の中古トラクターを購入し米国に輸入して、商標"Kubota"を付けたまま販売した。Gamut社から該トラクターを購入した者が、Kubota米国法人にメンテナンスの依頼をしてくるようになったが、該社は米国仕様のトラクターのメンテナンスしかできない体制にあったので、対応ができなかった。Kubota社はITCに商標権侵害で提訴し輸入差止を求め、それが認められた。Gamutは控訴した。
(CAFC) Kubota社が製造している日本仕様のトラクターと米国仕様のトラクターとでは、機械強度、走行速度、ホイールベース、トレッド幅などが相違していた。また日本仕様のトラクターには英語による注意書きや指示ラベルの代わりに日本語のものが張られていた。さらに米国では日本仕様トラクターの交換部品、マニュアルなどが準備されていない。日本仕様トラクターは、米国仕様トラクターと実質的な相違があり、いわゆる"Gray
Market Goods"であるとしてITCの決定を確認した。
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Wang Laboratories, Inc. v. America Online, Inc.
(98-1363, CAFC, December 17, 1999, Mayer, Newman and Gajarsa)
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Hollyanne Corporation v. TFT, Inc.
(99-229, CAFC, December 15, 1999, Michel Skelton and Schall)
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The Toro Company v. White Consolidated Industries, Inc.
(98-1334, CAFC, December 10, 1999, Newman, Friedman and Rader)
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In re The Boston Beer Co., Ltd.
(99-1123, CAFC, December 7, 1999, Mayer, Michel and Lourie)
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Marquip, Inc. v. Fosber American, Inc. and Fosber SPA
(99-1025, -1120, CAFC, December 6, 1999, Michel, Rader and Gajarsa)
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The Univ. of Colorado v. American Cyanamid Co.
(97-1468, 98-1113, CAFC, November 19, 1999, Rich, Rader and Bryson)
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U.S. Test, Inc. and Robby Cobb v. N D E Environmental Corp. and United
Coastal Insurance Co.
(99-1087, CAFC, November 19, 1999, Mayer, Michel and Lourie)
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Intergraph Corporation v. Intel Corporation
(98-1308, CAFC, November 5, 1999, Newman, Smith and Plager)
*自明タイプのダブルパテント
Georgia-Pacific Corporation v. United States Gypsum Co. and L&W Supply
Corp.
(97-1238, -1244, CAFC, November 1, 1999, Bryson, Archer and Gajarsa)
*不正競争に関する争いで和解をした後で、特許権侵害で同一製品について争えない。
Augustine Medical, Inc. v. Progressive Dynamics, Inc. et al.
(98-1364, CAFC, October 25, 1999, Mayer, Rader and Gajarsa)
(背景)A社は1993年6月にブランケットに関してP社などを不正競争などで訴えた。この訴訟では特許権についての争点にしなかった。1995年4月両社は和解することになる。この和解交渉のときにA社は和解契約後の特許権侵害を和解条項から除くように交渉に臨んだが、P社はこれを拒否した。
1995年10月、A社はP社を和解契約の対象品と同一の製品(ブランケット)が特許権侵害であるとして起訴した。地裁は、和解契約によって特許権侵害は解決済みとしてA社の主張を退けた。A社は控訴した
(CAFC)和解契約では、A社はA社とそのオーナーが”持つ、持っていた又は持つかもしれない”P社への請求権を放棄する旨が宣言されていた。A社は和解契約前にP社が該製品を販売していたことを知っており、和解契約前に特許権の行使ができた。契約によってA社が将来持つかもしれないP社に対する請求権を放棄したものとの解釈するのは相当である。
*地理的表示を含む商標において、地理的表示をDisclaimしても、商標登録は拒絶される。
In re Hiromichi Wada
(99-1160, CAFC, October 20, 1999, Plager, Schall and Gajarsa)
(背景)Wada氏はミシガン州に住む日本人で、"NEW YORK WAYS GALLERY"商標を、革製バッグ、カバン、バックパック、財布などを指定商品として、Intent-to-use
商標登録出願を行った。特許商標庁は、"NEW YORK"は著名な都市名(地理的表示)である、またNew
Yorkは革製品のデザイン、製造が行われているので、原産地表示として、公衆に誤認を生じさせる。従って、NEW
YORKを含む商標は登録できないと査定した。W氏は審判請求した。しかし審判でも同様の理由で登録を拒絶された。W氏は該商標中の"NEW
YORK"部分の排他的権利を放棄する宣言をしたが、この宣言によっても登録は拒絶された。
(CAFC)地理的表示に該当するか否かは、A)その商標が良く知られた地理的場所を表すことが一番重要な機能になっていないか、B)購買者がその場所と関係があると誤信するような商品を指定していないかで判断する。本商標はA)B)ともに満たす。NAFTAによるランハム法に対する修正以前は、二次的要素を考慮して商標登録をすることがあった。また二次的要素が無くても、地理的表示に相当する部分の排他的権利を放棄すれば商標登録をしてきた。しかし、NAFTA後は、たとえ、地理的表示に相当する部分の権利を放棄したとしても、二次的要素があったとしても、登録しないことになった。これは特許庁公報にも記載されていた。従って、地裁の判断を追認する。
*均等論
Overhead Door Corporation and GMI Holdings, Inc. v. The Chamberlain Group,
Inc.
(98-1428, CAFC, October 13, 1999, Michel, Rader and Schall)
*Means-Plus-Function〜クレーム解釈
Micro Chemical Inc. and William Pratt v. Great Plains Chemical Co., Inc.,
Lextron, Inc and Robert C. Hummel
(98-1393, CAFC, October 6, 1999, Plager, Rader and Bryson)
*Offer for Sale
Tec Air, Inc., v. Denso Manufacturing Michigan Inc. and Denso Corporation
(99-1011, CAFC, September 30, 1999, Mayer, Michel and Lourie)
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Mehl/Biophile International Corp., v. Sandy Milgraum, M.D.
(99-1038, CAFC, September 30, 1999, Mayer, Michel and Rader)
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The L.D. Kichler Co. v. Davoil, Inc.
(98-1488, CAFC, September 30, 1999, Mayer, Newman and Lourie)
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Enzo Biochem, Inc. v. Calgene, Inc
(98-438, -1479, CAFC, September 24, 1999, Lourie, Smith and Schall)
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Elkay Manufacturing Company v. Ebco Manufacturing Company and Ebtech Corporation
(98-1596, 99-1276, CAFC, September 15, 1999, Rich, Plager and Gajarsa)
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K-2 Corporation v. Salomon S.A. and Salomon/North America, Inc.
(98-1552, CAFC, September 13, 1999, Clevenger, Rader and Gajarsa)
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Diversey Lever, Inc. v. Ecolab, Inc.
(98-1380, -1477, -1472, -1534, CAFC, September 10, 1999, Mayer, Newman and Schall)
*署名者は宣誓供述書の英文を理解できなければならないか?
Seiko Epson Corporation and Epson America, Inc. v. Nu-Kote International,
Inc and Pelikan Produktions, A.G.
(97-1313, -1548, -1566, -1567, -1588, 98-1015, CAFC, September 8, 1999, Newman, Plager and Bryson)
(背景)インクカートリッジに関する多数の特許権をE社が所有し、それに基づいてN社を特許侵害で提訴していた。1995年11月に地裁はそのうちの一つの特許権の侵害を認定し、仮差止命令をした。N社は控訴したが、この件に関してCAFCは地裁判決を支持した。一方、1997年3月、地裁は、別の4つの特許権について、特許庁への不公平行為があったとして権利行使不能の判決を下した。また、1997年8月、地裁は、意匠特許について無効の判決を下した。E社は権利行使不能及び無効の判決に対して控訴した。
(争点1:権利行使不能)
英語を読めない発明者が、図面に開示されていた図が発明者によって発明したものを表示するものであって先行技術を表示するものでないことを供述するために英文のDeclarationを提出した。地裁は、このDeclaration提出は37CFR1.69(外国語による宣誓書及び供述書)の規定(翻訳付きのDeclarationを要求)を満たさない行為なので、これを特許庁に対する不公平行為と認定し、権利行使不能になると判断した。
CAFCは、不公平行為の要件として”騙す意図deceptive intent”と”重大性
material misrepresention”を挙げ、Declarationの内容に誤りはない。3名の発明者の中の2名は英語を理解でき、第3番目の発明者に説明しているなどの行為があった。従って、英語を理解できない者によって署名されたというだけで権利行使不能としない。
(争点2:意匠権無効)
「インクカートリッジはプリンターに使用しているときは、その形態を見ることができない。需要者はカートリッジ使用中は、その形状、デザインに関心がない。従って、意匠特許は無効であると地裁は判断した。
CAFCは次のように判示した。意匠特許は、使用時に外観を眺めることができるか否かを要件としていない。生産された物のデザインであること及び特許法の要件を満たすデザインであることのみを要件としている。
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Process Contorl Corporation v. Hydreclaim Corpration
(98-1082, -1277, CAFC, September 7, 1999, Bryson, Friedman and Gajarsa)
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Atlas Powder Company v. Hanex Products, Inc.
(99-1041, CAFC, September 7, 1999, Mayer, Michel and Rader)
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Merck & Co., Inc. v. Mylan Pharmaceuticals, Inc.
(99-1044, CAFC, September 3, 1999, Newman, Lourie and Clevenger)
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Robotic Vision Systems, Inc. v. View Engineering, Inc.
(98-1477, CAFC, September 3, 1999, Clevenger, Bryson and Gajarsa)
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Mitsubishi Electric Corporation v. Ampex Corporation
(98-1502, -1538, CAFC, August 30, 1999, Newman, Skelton and Lourie)
*"res judicata" 〜 既判事項
United Technologies Corporation v. Chromalloy Gas Turbine Corpration
(98-1577, CAFC, August 25, 1999, Schall, Gajarsa and Cudahy)
*商標(一般名称)
In re The American Fertility Society
(98-1540, CAFC, August 19, 1999, Michel, Gajarsa and Cudahy)
「Society」と「reproductive medicne」とは共に一般名称である。「Society
for Reproductive medicine」を、単に「Society」と「reproductive medicne」を引用しただけで、商標全体としても、一般名称であるとすることはできない。
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SunTiger, Inc. v. BluBlocker Corporation
(98-1333, CAFC, August 19, 1999, Plager, Friedman and Lourie)
(背景) 特許権者S社の特許発明は、「515nmより短い波長の可視光を99%超遮断し、636nmより長い波長の可視光を90%以上透過する」ことを特徴とするレンズであった。
B社は、レンズの上部では光透過率が高く、下部では光透過率が低くなるように、コート材が傾斜させて被覆されており、下部右側はS社特許の特徴を備えているが他の部分は該特徴を備えていない。
クレーム解釈において、上記特徴は、レンズ自体が持つ特徴(B社主張)なのか、それともレンズを被覆するコート材が持つ特徴(S社主張)なのかが争われた。地裁は前者であると判決し、そのクレーム解釈によってB社レンズを非侵害とした。
(CAFC) クレーム解釈は地裁と同じ結論を下した。しかし、地裁は右下部が特許発明の特徴を満たしているかどうかを評価していない。被疑侵害物の一部についてだけでもクレームの要件を満たすならば侵害であるとするに十分であるとCAFCは判示した。
*証拠の裏付け(Corroboration)
Dale E. Oney v. Darrell Ratliff and Jungle Rags. Inc., Walt Disney Company,
Walt Disney Products, Walt Disney World Company and The Disney Store, Inc.
(98-1591, CAFC, August 12, 1999, Newman, Lourie and Kelly)
非常に緊密な関係にあり、長年の親交を有する者による証言でも、先発明の証拠の裏付けになる。
*101条
Juicy Whip, Inc. v. Orange Bang, Inc. and Unique Beverage Dispensers, Inc.
(98-1379, CAFC, August 6, 1999, Rich Schall and Bryson)
(背景)ジュースの自動販売機には2種類ある。1種は、"Pre Mix"自動販売機、すなわち予めジュース原液と水とを混合し、調製済ジュースを販売するもので、調製済ジュース自身を陳列容器に入れて展示することができるものである。販売されるジュースそのものを展示するによって、ジュースの購買意欲を向上させる。"Pre
Mix"自動販売機では、陳列展示用のジュースに雑菌等が繁殖しやすいので、頻繁にクリーニングしなければならなかった。もう1種は、"Post
Mix"自動販売機、すなわちジュース原液と水とが分離して貯蔵され、販売直前に原液と水とを混合し、調製直後のジュースを販売するものである。"Post
Mix"自動販売機ではジュース自身を陳列展示することが難しい。
J社は"Post Mix"自動販売機に関する特許権を所有していた。この特許発明では"Pre
Mix"自動販売機のようにジュースを陳列容器に入れて展示することができたが、販売されるジュース自身を陳列展示するものではなかった。販売されるジュースは顧客が販売機で購入する直前にジュース原液と水とを混合して得られたものであった。
従って、特許発明の自動販売機は、販売されないものを陳列して、顧客に購買意欲を促し、ジュースを販売するものである。
(争点) 顧客(公共の人)を騙すことになる本特許発明は101条の有用性を満たしているか?
(CAFC)公序良俗、公衆衛生を害する発明は特許されないのが原則である。本特許発明は顧客を騙す可能性があるけれど、本特許発明はジュースを展示できることによって顧客の購買意欲を向上させるという効果を"Post
Mix"自動販売機に備えさせ、且つ"Pre Mix"自動販売機のような欠点(細菌繁殖など)を無くしたものである。従って、101条の有用性を満たすので、特許は有効である。
*クレーム解釈&均等論
George Zelinski, Jr. and Pinbreaker, Inc. v. Brunswick Corporation
(98-1214, CAFC July 29, 1999, Plager, Rader and Bryson)
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CSU, L.L.C. v. Xerox Corporation
(99-1323, CAFC July 21, 1999)
*ミーンズクレーム
WMS Gaming Inc. v. International Game Technology
(97-1307, 98-1053, CAFC July 20, 1999, Rich, Rader and Schall)
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In Re International Flavors & Fragrances Inc.
(98-1517, CAFC July 20, 1999, Clevenger, Bryson and Gajarsa)
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Hockerson-Halberstadt, Inc. v. Converse, Inc.
(98-1501, CAFC July 20, 1999, Rich, Rader and Gajarsa)
(背景)
HHI社は運動シューズに関する895特許を有していた。HHI社は、Nike社、Reebok社、L.A.Gear社などを特許侵害で提訴していた。Reebok社はこれに対して特許庁へ再審査請求を行い、再審査の審理が開始された。HHI社、再審査の審理中にクレームを補正した。
その後、HHI社はC社を特許侵害で提訴した。C社は、再審査における補正はクレームを拡張するものであるから特許無効を主張して反訴した。
C社の主張は、再審査前のクレームは"the support band inclines upwardly
from the lower rim of the heel portion means"と限定されていたが、再審査後のクレームは"the
midsole and support band having wall means which inclines upwardly from
the lower rim of the heel portion"となり、midsoleとsupport bandとでwall
meansが形成されているとだけの規定となった。そのため、support bandが、midsoleの周りに取り付けられているもの(B)だけでなく、midsoleの頂部に取り付けられたもの(A)まで含むことになったというものである。HHI社は、再審査前のクレームは(A)と(B)の両方を包含していると主張したが、地裁はC社の主張を認め、特許無効の判決をした。HHI社は控訴した。
(CAFC)
再審査請求でクレームが拡張されたか否かの基準は、再発行出願でクレームが拡張されたか否かの基準と同じである。すなわち、「補正前のクレームで侵害とならなかったもの補正後のクレームに包含されるようになった場合は補正後のクレームは補正前のクレームより拡張されている。たとえ、ある構成要件を減縮するものであっても、他の構成要件を拡張するものであるときはクレームは拡張されたと考える」である。
本事件では、地裁で争われた部分の補正(1)とは別に、heel portion meansがピラミッド形をしているという補正(2)が行われていた。地裁で争われた補正(1)だけを独立に検討するとクレームは拡張されたかのように見える。しかし、クレームが拡張されたか否かを判断するときはクレーム全体で判断しなければならない。補正(1)と(2)とを考慮すると、クレーム全体としてはピラミッド形という限定によって範囲が縮減されている。従って、地裁の判決を取り消し、差し戻した。
*クレーム解釈
Smiths Industries Medical Systems, Inc.(Intertech Resources Inc.の承継人)
v. Vital Signs, Inc.
(98-1106, CAFC July 14, 1999, Lourie, Clevenger and Gajarsa)
99年5月10日の判決を見直し、再判決した。
*102(g)抵触審査
Rexam Industries Corp. v. Eastman Kodak company and Avery Dennison Corp.
(98-1279, CAFC July 16, 1999, Rich Newman and Lourie)
(背景)
Kodakの特許出願とRexamの特許権との間で抵触審査が宣言され、Kodakはクレーム66〜76について特許出願日を擬制発明実施日として主張した。この抵触審査で審判部はKodakを先発明者と認定し審決した。Rexamは146条に基づく審決取消訴訟を起こした。
KodakはAvery出願の存在に気付き、抵触審査の審決に対して争わないとの契約をした。Kodakの特許出願とAveryの特許出願との間で抵触審査が宣言され、Kodakはクレーム66〜76について特許出願日を擬制発明実施日として主張した。この抵触審査で審判部はAveryを先発明者と認定し審決した。Kodakは契約を遵守し審決取消訴訟を起こさなかったが、特許出願は放棄しなかった。
(審決取消訴訟)
KodakとRexamとは審判で行った主張を繰り返していた。KodakとAveryの審決が確定したことを受けて、Rexamは、KodakがKodakとAveryの審決確定させたことによって、擬制発明実施日を放棄した、そしてKodakがAveryの先発明を容認したことによって146条の訴訟ではKodakに対して反対の判決を請求するものとして扱うべきであるとのモーションを請求した。地裁はRexamのモーションを却下した。
(CAFC)
RexamはKodakがAveryとの抵触審査で負けたことで、146条の取消訴訟を継続していく利益がないし、抵触審査で負けたクレーム66〜76を含むKodak出願は特許にならないから、146条の訴訟では先発明の主張を不可能にするべきだと主張した。
CAFCは、瑕疵のある特許を成立させない、有効な特許だけを維持するという公益を考慮すれば、Rexamより先発明であるとのKodakの主張は上記状況下においても146条の審決取消訴訟ででき、Rexamの特許は102(g)によって無効であると判決した。
先行判決として、102(b)/103の拒絶理由のある特許出願(1)ではあったが抵触審査で他の特許出願(2)の発明より先発明であることが認定されたものが引用された。
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Pharmacia & Upjohn Company v. Mylan Pharmaceuticals, Inc.
(99-1001, CAFC July 16, 1999, Lourie, Smith and Schall)
(背景)特許権者Upjohnは糖尿患者用の薬に関する163特許を所有していた。UpjohnはMova
Pharmaceuticals Corp.に対してプエルトリコ地裁に163特許の侵害で提訴していた。Movaは、103条により特許無効、及び不公平行為により権利行使不可の反訴をし、陪審はMovaの主張を認めた。UpjohnはJMOLを請求していた。
JMOLの係属中にUpjohnはMylanを163特許の侵害で、ウエストヴァージニア北部地裁に提訴した。しかし、地裁は審査経過禁反言によりMylanの製品は非侵害、またMova事件の平行禁反言(collateral
estoppel)により権利無効及び権利行使不可の判決を下した。98年8月17日にMova事件のUpjohnのJMOLが却下され、同日にMylanの弁護士費用の請求が第4巡回裁判所の判例を引用して却下された。第4巡回裁判所の判例では、弁護士費用の請求を認めるのは裁判所の裁量である。この裁量は、いやがらせ的な、不当な訴訟のような例外的な状況にある場合を除いて適用すべきでないと説示している。Mylanは控訴した。
(CAFC)
地裁が、前記の例外的状況にあるかどうかの判断において、特許庁に対する不公平行為を考慮しなかったのは誤りである。また、平行している訴訟で権利無効の判断がされたからといって自動的に権利者にペナルティが与えられるわけではない。権利者の訴訟が不正競業的、悪意、不公平行為、いやがらせなどの例外的状況にあったかどうかの判断もしていない。従って、地裁判決を取り消し、差し戻す。
*On Sale Bar
Brasseler, U.S.A. I, L.P. v. Stryker Sales Corporation and Stryker Corporation
(98-1512,-1524, CAFC July 9, 1999, Plager, Lourie and Clevenger)
(背景)
B社は外科手術用ノコギリ刃に関する特許権を有していた。B社と訴外のDS社とが協力してノコギリ刃の開発を行い、共同発明者4名の中2名はB社従業員、1名はDS社従業員、そしてのこり1名はDS社のオーナーであった。DS社はノコギリ刃製造会社で、B社のためにノコギリ刃を製造し、販売していた。B社はそのノコギリ刃を取り付けた医療器具を病院に販売していた。
DS社は出願前一年以上前に特許発明に係るノコギリ刃3000本をB社に販売した。
(争点)DS社のB社への販売はOn Sale Barになるか?
(CAFC)102(b)の"Sale" 又は"Offer to Sale"は二つの区別された主体間での販売又は販売申出である。DS社とB社とはオーナーが共通していないし、親子会社の関係もない。両社は法人格が全く異なる会社である。したがって、DS社のB社への販売はOn
Sale Barになる。
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In Re Cambridge Biotech Corporation
Institute Pasteur and Genetic Systems Corporation v. Cambridge Biotech
Corporation
(98-1012,-1013,-1041,-1265,-1276, CAFC July 7, 1999, Lourie, Archer and
Rader)
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Zenith Electronics Corporation and Elgo Touchsystems, Inc. v. EXEC, Inc.
(98-1288, CAFC July 7, 1999, Plager, Skelton and Gajarsa)
*クレーム解釈
Gary E. Rhine v. CASIO, Incorporated and CASIO Computer Co., Ltd.
(98-1432, CAFC July 6, 1999, Mayer, Skelton and Clevenger)
*第112条第6パラグラフ、Component by Component Comparison
Odetics, Inc. v. Storage Technology Corporation, VISA International Service
Association, Inc. VISA USA, Inc. and Crestar BANK, Inc.
(98-1533, -1585, CAFC July 6, 1999, Lourie, Clevenger and Schall)
*クレーム解釈
Burke, Inc. v. Bruno Independent Living Aids, Inc.
(97-1273, CAFC July 2, 1999, Lourie, Archer and Rader)
*On Sale Bar
Abbott Laboratories v. Geneva Pharmaceuticals, Inc. et al.
(98-1593,-1594,-1595, CAFC July 1, 1999, Plager, Lourie and Bryson)
*クレーム解釈における内的証拠と外的証拠
Pitney Bowes, Inc. v. Hewlett-Packard Company
(98-1298, -1347, CAFC June 23, 1999, Michel, Plager and Rader)
*州を工業所有権侵害で訴えることができない。
1)COLLEGE SAVINGS BANK v. FLORIDA PREPAID POSTSECONDARY ED. EXPENSE BD.(98-149)(College
Savings Bank I)
2)FLORIDA PREPAID POSTSECONDARY ED. EXPENSE BD. v. COLLEGE SAVINGS BANK(98-531)(College
Savings Bank II)
6月23日に上記事件についての決定的な判決が最高裁で言い渡された。5−4で保守的な州権擁護派が多数となった。判決では、特許権及び著作権の侵害で起訴すること及びランハム法下の商標権侵害で起訴することから州を免除することを廃止した1992年の立法(公法102−560)は憲法の修正条項第11条に違反するとした。
(参考)
州は、訴訟に関連する行為によって、修正条項第11条の訴訟免除を放棄できる。
ジェネンテック社 対 カリフォルニア大学理事 事件(Fed. Cir. 1998; 143
F.3d 1446, 46 USPQ2d 1586)で対象となった特許権は、州立大学の規則によってカリフォルニア州が所有していた。
被疑侵害者は特許無効、権利行使不能及び非侵害の確認判決を求める訴えを起こした。大学は特許侵害と他の救済を求めて反訴した。その後で、鏡像訴訟、すなわち、大学が原告になり、被疑侵害者が被告になる訴訟を、別の裁判所でも起こした。
(35USC§271(h)と§296に成分化された)公法102−560は確認訴訟における裁判所の処置について主要な影響をしていた。公法102−560は第35法典(米国特許法)違反に対する訴訟から州が免除されるという修正条項第11条の規定を廃止するために1992年に制定された。事実審裁判所は公法102−560は米国憲法修正条項第11条に違反し、州が特許権者であるときは、少なくとも州に対する確認判決訴訟から免除されるように適用されると判示した。したがって、事実審裁判所は被疑侵害者による大学に対する確認の訴えを却下した。被疑侵害者は控訴した。
控訴審において、被疑侵害者は、事実審裁判所の決定はジェネンテックI(Fed.
Cir. 1993; 998 F.2d 931, 27 USPQ2d 1241)に関するCAFCの先の判決と明らかに矛盾していることを指摘した。ジェネンテックIにおける争点は、公法102−560が、州による特許侵害を除いて、第35法典下の権利主張のための確認判決訴訟から、州が免除されることを廃止したかどうかであった。CAFCは公法102−560の制定経過を参酌すれば、修正条項第11条はそのような訴訟から州を除外していないと判示していた。州は侵害についてだけでなく、第35法典下の他の違反についても明らかに管理されると、CAFCは判示した。従って、公法102−560は確認判決訴訟を含む第35法典下の全ての訴訟に及ぶと、ジェネンテックIにおいてCAFCは解釈した。
しかし、大学を被告とする確認判決訴訟の却下に対する被疑侵害者の控訴において、CAFCは、憲法上有効であることを確認するように公法102−560を解釈し又は適用するかどうかを決定する必要はないと結論を下した。その代わりに、本事件の事実関係から、訴訟に関連する大学の行為によって、大学がその免除規定を放棄し、そして訴訟することを承諾したとCAFCは結論した。したがって、CAFCは、ジェネンテックIにおいて求められたような、修正条項第14条と第1章の特許条項とが公法102−560を支持しているかどうかを決定することをはっきりと拒否した。また、CAFCは公法102−560が、州による侵害に対して憲法上保証された賠償を与えると解釈され又は適用され得るかどうかの判断も明確に拒否した。
大学は、いくつかの要因の組合せに基づいて訴訟することを承諾していたとCAFCは判断した。すなわち、大学は連邦法上の財産権を創出したこと; それが連邦の司法権を介してのみ国全体に効力を発する財産権であったこと; 連邦裁判所に提訴するとの脅しに大学が関与したこと; 及び全国的な差止めによる救済手段に関与したこと; によって、大学は自ら、連邦司法権の管轄によってのみ解決できる第3章の問題と論争を引き起こしたのである。意識的にそして大学の管理下で行われたこれら行為によって、大学は、確認判決訴訟をすることに承認したことを明らかにしていた、そして州の手足として免除事項を放棄していたと、CAFCは述べた。
大学は連邦特許を取得する行為だけで免除事項を放棄したとは判決していないとCAFCは述べた。大学は、特許権侵害の告発及び連邦法下の救済手続を行使するとの脅しによって、連邦法上の訴因を作り出す行動をしたのである。大学が連邦の闘技場に入ることを選択したときに、大学の独断及び主導的行為によって論争が起きたときに、及び連邦裁判所でのみ行使できる連邦法上の財産権(州に対して治外法権の財産権を含む)を行使するために連邦法制度と連邦司法権に大学が関わったときに、大学はその論争を解決するために連邦政府の管轄から免除されるということを放棄した、とCAFCは判示した。
大学は、被疑侵害者が起こした連邦法上の確認判決訴訟に同意していないと主張した。しかし、確認判決訴訟は大学の意識的行為によって実行可能になったと、CAFCは反論した。
また、大学の特許取得行為が州によって設立認可された大学の教育研究目的の核ではなかったことが実際的な重要性を持ったとCAFCは考えた。
特許権は国全体に効力が及ぶことをCAFCは強調した。連邦政府は、特許権者に、米国のいかなる場所においても、他人が、特許された主題(特許品)を製造し、使用しあるいは販売することを排除する権利を付与する。特許権の発生、特許権の有効性又は特許権の行使のいずれでもなければ、州法の問題である。しかし、被疑侵害者に対する大学の脅しは、国全体に効力の及ぶ権利に関わることであったので、州法によって取り締まれない、州法から独立した問題であった。特許権の有効性及び侵害に対して有効な救済を州裁判所は与えることができない。大学が連邦特許の所有者であるということだけで連邦の免除規定を放棄したとはならないが、大学の特許権行使に関わる行為が、免除規定を放棄していないということを肯定できなくしたと、CAFCは判示した。
従って、大学は修正条項第11条の免除を放棄し、訴訟することを承認していたとCAFCは結論づけた。確認判決訴訟は事実審裁判所によって不適切に却下されたので、CAFCはその却下判決を取り消し、更なる審議のために差し戻した。
*特許庁の審決(行政処分)は、
行政手続法(Administrative Procedure Act)の基準"substantial evidence"
または "arbitrary and capricious"でレビューすべきか?、事実問題として"Clearly
erroneous"基準でレビューすべきか?
In re Zurko
(98-377.1999-Decided June 10, 1999, Supreme Courts)
行政庁の下す判断の再審理は、行政手続法706条により、原則として”arbitrary,
capricious, an abuse of discretion, or unsupported by substantial evidence)”の場合に覆されます。この再審理基準は、行政手続法559条により、判例法や特許審査のごとき事実問題に関する事項は除外されるとしています。CAFCは、この除外規定に基づき、裁判所のレビュー基準である”clearly
erroneous standard”でレビューすべきである(96-1258,Decided May 4, 1998
CAFC in banc)と判決していた。
CAFCが特許庁の判断を再審理する際に、行政庁の判断に対する再審理基準を採用するか、あるいは裁判所の再審理基準を採用すべきかの問題について、最高裁は先例の言葉遣いを調べた後、従前のCCPAが裁判所の基準を採用していたと示す証拠が薄弱であり、逆に行政庁の再審理基準を採用している、もしくは採用すべきとする節があることを理由に、行政庁の基準を採用すべしとした。
*公用〜102(b)、証拠のCorrobotation
Finnigan Corporation v. I.T.C and Bruker-Franzen Analytik Gmbh and Hewlett-Packard
Company
(98-1411, CAFC June 9, 1999, Rich, Michel and Lourie)
*クレーム解釈
Pall Corporation v. Hemasure Inc.
(98-1388, CAFC June 8, 1999, Mayer, Newman and Schall)
*審査経過参酌
Augustine Medical, Inc. v. Gaymar Industries, Inc and Mallinckrodt Group,Inc.
(98-1001,-1002,-1054,-1244,-1266 CAFC June 8, 1999, Mayer, Rader and Gajarsa)
*権利解釈(審査経過参酌、"All Element Rule")
Loral Fairchild Corporation v. Sony Corporation and Sony Electonics Inc.
(97-1017, CAFC June 8, 1999, Michel, Archer, and Plager)
*"On Sale"
Scaltech Inc. v. Retec/Tetra, L.L.C.
(97-1365, -1480, CAFC June 4, 1999, Rich, Plager and Gajarsa)
1998年12月の"Pfaff"事件の最高裁判決「"On Sale"になるには、1)発明が販売の商業的申出された者でなければならない。2)発明が特許出願する準備ができている程度のものである。ことを必要とする。」を受けて、判断された。
*ミーンズクレームの解釈、均等論、クレームのプレアンブル部中の用語が権利限定するか否か
General Electric Company v. Nintendo Company, Ltd
(98-1089, CAFC June 2, 1999, Newman, Michel and Plager)
*植物品種保護法(PVPA)
Delta and Pine Land Company v. The Sinkers Corporation
(98-1296, May 14, 1999, CAFC, Michel, Clevenger and Rader)
*クレーム解釈
Smiths Industries Medical Systems, Inc.(Intertech Resources Inc.) v. Vital
Signs, Inc.
(98-1106, May 10, 1999, CAFC, Lourie, Clevenger and Gajarsa)
*[判例変更]トレードドレスの権利は、同一対象についての特許権が存在しても、独立に存在する。
Midwest Industries, Inc. v. Karavan Trilers, Inc.
(98-1435, May 5, 1999, CAFC [en banc], Schall, Smith and Bryson; Mayer,
Rich, Smith, Newman, Michel, Plager, Lourie, Clevenger, Rader, Schall,
Bryson, and Gajarsa have joined)
(地裁)
M社とK社は共に自動車で牽引するボート用トレーラーを製造販売していた。通常、ボートをトレーラーの上に引き上げるためにトレーラーには、その前部にウインチが取り付けられた支柱が取り付けられている。
M社は、K社に対して、該ウインチに関する意匠特許の侵害、連邦法及び州法上の商標権侵害で提訴し、さらに、ウインチ支柱の形状をコピーされたとしてトレードドレスの侵害、及びコモンロー上の商標権侵害でも訴えた。
M社は261特許の排他的実施権者であり、その特許ではトレーラーの一部としてウインチ支柱が記述されていた。ところがM社は261特許の侵害でK社を訴えなかった。
K社は第10巡回裁判所のVornado判決を引用して、M社261特許にはウインチ支柱が開示されているから、特許権以外の権利(トレードドレス権)を行使することはできないとモーションを起こした。Vornado判決では、「原告がグリルファンに関する存続中の特許権を保持している場合には、グリルファンに関するトレードドレスによる権利行使を拒否する。なぜなら、トレードドレスの権利行使を認めた場合には、”特許権の存続期間が満了後、特許発明を何人も実施できる”ということを妨げることになるからである。」
地裁はK社のモーションを容認した。M社は再考慮のモーションなどをしたが、特許権以外の権利の行使は認められなかった。M社は控訴した。
(CAFC)
この判決はen banc(判事全員の合議体)で審理され、Vornado判決を覆す判決を下した。すなわち、トレードドレスの権利は、特許権が存在しようがしまいが、それに関係せずに行使することができる。
トレードドレスの権利が有効か否かは、ウインチ支柱の形状が、機能上不可欠な形状なのかどうかによって左右される。地裁はその判断をしていないので差し戻す。
*先の判決の日から後の判決の日までの利率は後の判決で示された利率で計算すべき
Transmatic, Inc. v. Gulton Industries, Inc.
(98-1385, April 29, 1999, CAFC, Michel, Lourie and Gajarsa)
第一回目の判決では特許侵害の損害賠償額の利子利率を高率で認定した。その後、第二回目の判決で、その利子利率が低率になり、第一回目の判決の日から第二回目の判決の日までの利率は第一回目の判決で示された利率(高率)で計算すべきであると地裁は判示した。
CAFCは、第6巡回裁判所の先判例に基づいて、第一回目の判決の日から第二回目の判決の日までの利率は第二回目の判決で示された利率(低率)で計算すべきであると判断した。
*先行技術に動機付けがない
In re Anita Dembiczak and Benson Zinbarg
(98-1498, April 28, 1999, CAFC, Mayer, Michel and Clevenger)
*クレームが明細書の記述で支持されていないとの無効主張が拒否された
Johnson Worldwide Associates Inc. v. Zebco Corporation and Brunswick Corporation
(98-1331, April 27, 1999, CAFC, Mayer, Clevenger and Gajarsa)
クレームの用語の意味は、その用語が不明確な場合は又は明細書作成者が特別な意味を付与した場合を除いて、通常の慣用の意味であると解釈する。
クレームが明細書の記述で支持されていないとの無効主張を認めた"Gentry
Gallery"事件では、明細書が"crystal clear"に、明白に、狭い範囲しか開示していなかった。
*不公正行為に責任のある会社社長及ぶ株主を、判決後の裁判審理に加えた。
Ohio Cellular Products corporation and Donald E. Nelson v. Adams USA Inc.
and Apehead Manufacturing, Inc. v. All American Sports corporation
(98-1448, April 23, 1999, CAFC, Newman, Michel and Plager)
オハイオ社とアダムス社との間での裁判でオハイオ社に弁護士費用の支払責任がありそして両当事者が責任の重さについての交渉を試みるよう地裁が判決した後で、アダムス社がネルソン氏には不公正行為の責任があり、この裁判審理に加えることを動議した。地裁はこれを認めたので、オハイオ社とネルソン氏が控訴した。
CAFCは、ドナルド・ネルソンを加えることを求めたアダムスUSAの動議を許可した。オハイオ・セルラー社の社長で株主であるネルソン氏は、米国特許庁から重要な先行技術文献を意図的に取り下げたことについての個人的責任があると判決した。
*仮想クレーム
Streamfeeder, LLC. v. Sure-Feed Systems, Inc. and Mailing Machine Service,
Inc.
(98-1521, April 20, 1999, CAFC, Lourie, Schall and Bryson)
Wilson Sports 事件において、明細書に記述されたクレームより広く、被疑侵害物を文言上含むような仮想クレームを作り、その仮想クレームが
特許庁によって特許されるものである場合は、均等論侵害があると判示している。本件でも同様に仮想クレームによって均等論侵害が論じられたが、その仮想クレームの作り方について判断した。
(地裁)
Streamfeeder社は均等論侵害でSurefeed社を訴えた。両社の争点は被疑侵害物のゲート部分が、クレームされた装置のゲートと同じ方法で機能するものかどうかに絞られた。Surefeed社はクレーム1の範囲を被疑侵害物が含むように広げると従来技術を含まざるを得なくなるとして、非侵害の略式判決を請求した。Streamfeeder社はクレーム1に基づいて仮想クレームを提出し抗弁した結果、地裁は”仮想クレームには従来技術が含まれず、特許庁において特許されるものである”として略式判決の請求を拒否した。Surefeed社はモーションをいくつか行ったが拒否された。Surefeed社は控訴した。
(CAFC)
Surefeedは控訴審で、まず、”特許権者は主張している均等範囲が従来技術を包含しないことを立証する責任がある”、”Streamfeeder社の仮想クレームは、一要件を拡張し、他の一要件を減縮したもので不適当なものである”と主張した。
1)立証責任:均等論侵害が一見明らかである場合には、被疑侵害物が先行技術に含まれる物であることを示すための証拠を提出する責任は被疑者にある。しかし、仮想クレームが先行技術を包含しないことを説得するための立証責任は特許権者にある。
2)仮想クレームを勝手に作成することはできない。特許庁の審査段階では、補正されたクレームは特許性を判断されるからかなり自由にクレームを補正できる。仮想クレームは、クレームの文言の範囲から実質的に均等な範囲にある主題を包含するためにクレームを拡張したものである。訴訟中又は特許庁非係属中においては、被疑侵害物を包含するが先行技術を包含しないように、ある部分を拡張し、別の部分を縮減した仮想クレームを作ることはできない。クレームの一要件を拡張したのと同時に他の一要件を縮減した仮想クレームは判例法上も支持されていない。Streamfeeder社の仮想クレームから縮減した要件部分を除くと、先行技術を包含することになる。従って、仮想クレームによる解析で、均等論侵害はないと判断できる。
*弁護士の懲戒処分
Steven E. Lipman v. Q. Todd Dickinson, Acting Commissioner of Patents and
Trademarks
(96-1548, April 20, 1999, CAFC, Newman, Archer and Bryson)
*"All Element"ルールは構成要素の1対1の対応を必ずしも要求しない。
Festo Corporation v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd.
(95-1066, April 19, 1999, CAFC, Rich, Newman and Michel)
特許クレームと被疑侵害物との間で、対応する構成要素が1対1で存在しなくとも、被疑侵害物によって特許クレームの構成要素の機能を実現できるならば、"All
Element"ルールは満たされるとCAFCは判示した。
また、特許庁からの拒絶理由に対する応答ではなく、特許クレームを自主的に補正した場合は、審査経過禁反言にはならないと判示した。
*トレードドレス
Sunrise Jewelry MFG. Corp. v. Fred S.A.
(98-1022, April 16, 1999, CAFC, Plager, Bryson and Gajarsa)
(背景)
S社は、時計や宝飾具のための”金属性の船舶ロープのデザイン”に関するF社の登録を取り消すための請願を特許庁に提出したが、特許庁審判部は、一般的であるからということでデザインを取り消すことはできないとして、請願を却下した。S社は控訴した。
(CAFC)
本件では、F社商標が製品の意匠及び形状として使用されていた。ランハム法では商標は”物品を特定及び区別するために、・・・物品の出所(具体的出所が特定できなくても)を示すために使用される文字、名称、シンボル・・・”と定義されている。その商標が一般名称であった場合には出所表示機能を果たすことができないので、その商標登録を拒絶し、取り消す。
出所表示には、名称、文字、シンボル・・・トレードドレスが含まれる。一般的デザインは出所表示機能を果たさないので、そのようなデザインは登録を取り消すべきである。
*
Karlin Technology Inc. and Sofamor Danek Group, Inc. v. Surgical Dynamics,
Inc.
(97-1470, April 16, 1999, CAFC, Rich, Clevenger and Gajarsa)
権利者が意識的に限定していない限り、明細書中の好ましい実施態様にクレームを限定して解釈してはいけない。
*101条 〜 数学式
AT&T Corp. v. Excel Communications, Inc. et al
(98-1338, April 14, 1999, CAFC, Plager, Clevenger and Rader)
(事件概要)
長距離電話システムに関する特許を所有するATTがExcel特許侵害で提訴、それに対してExcelは101条の発明要件を満たしていないから特許無効を主張した。
該特許のクレームには暗示的に数学アルゴリズムが含まれており、数学は発明要件を満たさないというものであった。地裁はExcelの主張を認め特許無効を認定した。ATTは控訴した。
(CAFC判示事項)
本判決は、昨年のビジネス方法発明に関する判決〜State Street v. Signature〜における判断手法をさらに支持するものとなっている。本判決の要点は3つある。
1)クレームの形式は問題にならない。101条の範囲は、クレームが装置であろうとプロセスであろうと関係なしに適用する。
2)物理的変化や変換("Physical Transformation")は要求されない。Excelは特許クレームには物理的変化が含まれていないから、101条の要件を満たさないと主張した。しかし、CAFCは、これを完全に否定した。要求されるのは、有用な、有形の、実用の結果を提供するデータの変換だけである。"Physical
transformation"は、数学アルゴリズムが有用な応用法をどのように引き起こすことができるかの単なる一例である。クレーム発明が、機能を実現している限り、クレームは101条の要件を満たしている。
3)In re Schraderとは区別した。Schraderでは、単にデータを集めるだけの数学アルゴリズムであったので、オークションにおけるせり値を集める方法は特許されないと判決された。
結局、本件では、コンピュータのレコードにデータ領域を加えることは、”有用で、有形で、実用の結果”をもたらすから、特許性があるとした。
*ミーンズクレームの解釈
Rodime PLC v. Seagate Technology, Inc.
(98-1076, 98-1112, -1204, April 13, 1999, CAFC, Lourie Friedman and Rader)
ハードディスク・ドライブ・システムに関する特許権の侵害事件で、クレーム中のpositioning
meansの構成の解釈が行われた。meansの用語が使用されているが、構造を規定した記述があるので、112条第6パラグラフのmeans
plus functionではないと判示した。
*ミーンズクレームの解釈(明細書の記載参酌により用語の意義を限定)
Signtech USA, Ltd. v. Vutek, Inc.
(98-1171, April 8, 1999, CAFC, Mayer, Newman and Rader)
インクジェットプリンターに関する特許権の侵害事件で、クレーム中のmeans
plus functionの構成の解釈が行われ、明細書の記述により意義が限定された。
*確認の訴
Amana Refrigeration, Inc. v. Quadlux, Inc.
(98-1200, April 5, 1999, CAFC, Mayer, Archer and Lourie)
(背景) Q社は、電子レンジと同様に手早く調理できるが、従来式のオーブンと同様の調理結果を達成できる調理装置の005特許を有し、その製品として"FlashBake"オーブンを製造販売していた。一方、A社は1993年8月に"FlashBake"技術のライセンスを受けるべく交渉を開始し、秘密保持契約を両社は締結した。Q社の代理人は、A社を2回訪問したが、Q社は別の製造会社にライセンスすることを決め、1994年2月に交渉は不成功に終わった。
A社は"FlashBake"のような"WAVE"オーブンを開発し上市した。1996年11月21日にQ社の弁護士が、005特許の公報写を同封した警告書を、A社に送付し、Q社は特許権と秘密保持契約と両方を行使するつもりであることを言明した。さらに、Q社は、メリーランド州、オハイオ州及びイリノイ州の3販売会社が、"FlashBakeオーブンの模倣品の導入を続けている"と主張されるA社と取引したことを理由に、該販売会社との契約関係を終了する旨の手紙を該販売会社に送付した。
A社は特許無効、権利非侵害の確認の訴を起こし、さらに名誉毀損及び営業上の中傷発言に対する損害賠償を請求した。Q社は1997年7月31日に、A社が過去ならびに現在、宣伝し、製造し、営業し及び販売している製品に対して005特許の侵害があるという主張をしていないという誓約書を提出した。
(地裁) Q社の誓約書によって確認の訴に論点がないから、訴えを却下した。そして、人的管轄権が存在しないので名誉毀損及び営業上の誹謗中傷に関する請求を却下した。
(CAFC) "Actual controversy"がある場合にだけ確認の訴を起こせる。"Actual
controversy"が存在するとするためには、(1)特許権者が、被疑侵害者を明確に脅かすものあるいはその他の行為で、被疑侵害者に特許権侵害の訴が起きるのではないかと思わせるような道理があり、且つ(2)侵害を構成できる活動又はそのような活動を行おうとしている段階を具体化できる活動が存在する必要がある。
したがって、現段階では、誓約書によって、A社に、上記のような脅威は取り除かれ、双方に争いがない。また将来の脅威や再発行特許後の脅威を基礎にした確認の訴はできない。
*製法特許の用尽
Glass Equipment Development, Inc. v. Besten, Inc. and Simonton Windows
Co.
(96-1467, -1481, April 5, 1999, CAFC, Rich, Newman and Clevenger)
(背景)
GED社はスペイサーフレーム組立体に関する195特許の譲受人である。コーナーキーは装置特許の構成要素であるが、それ自身はクレームされていない。GED社は訴外A社にコーナーキーを含むスペイサーフレームの製造について、該特許のライセンスを与えていた。
GED社はスペイサーフレーム組立体の製法に関する582特許の譲受人でもある。該特許発明の製法は、一軸押出機が使われる。該製法は、4つのスペイサーフレーム部品をコーナーキーを使って接続固定し、フレームセグメントのコーナーキーに封止剤/接着剤を適用する一軸押出機に該固定されたスペイサーフレーム部品を通す工程を有している。
S社は1988年以前は、A社からコーナーキーが供給され、582特許を侵害しない別の方法でスペイサーフレームを製造していた。1988年にGED社の競業メーカーB社から一軸押出機を購入し、その押出機でスペイサーフレームの製造を始めた。A社からは引き続きコーナーキーが供給されていた。1993年GED社は製法特許の侵害でS社を訴え、侵害を誘導したとしてB社を訴えた。が、1994年にS社とGED社とは和解した。GED社のライセンサーA社から供給されたコーナーキーを該方法特許を侵害せずに使用する方法はないから、S社はGED社から黙示のライセンスを受けていることになり、その結果、GED社のS社への訴えは禁反言により妨げられるとB社は主張した。
B社は該方法特許を侵害しない"handgun"方法と"cartwheel"方法とを証拠として紹介した。この2方法ではコーナーキーを使用できた。
(地裁)非公開見解として、地裁は、A社によって供給されたコーナーキーを該方法特許を侵害せずに使用する方法が”商業的存続(commercially
viable)”が有るか無いかによって、略式判決が左右されると述べていた。
その後、公開見解として、地裁は、A社によって販売されていたコーナーキーを使って非侵害の方法"cartwheel"方法が1981〜83年まで訴外L社によって、1988年までS社によって行われていたが、1995年9月時点ではコーナーキーを使った非侵害の方法は存在しなくなった。これらの会社は、特許方法が製造方法として最適なもの"profitable"であったので、"carwheel"方法から特許方法に変換していった。非侵害の方法は、事業としての使用を支持されなくなっていた。
結局、(1)A社が販売するコーナーキーを使用する非侵害の方法は"商業的存在"意義がなかった、(2)S社がGED社のラインセンサーA社からコーナーキーを購入し、使用することで、GED社の黙示のライセンスを受けていた、(3)S社は特許を侵害していないから、B社はS社の侵害を誘導したという責任はないと地裁は略式判決した。GED社は控訴した。
(CAFC)S社がライセンサー(黙示のライセンサーであっても)であるならば、S社は誘導侵害にならないとの主張は正しい。黙示のライセンスの存在を立証するには、権利者が販売した物を使用する方法として特許非侵害となる方法が存在しないことを証明する必要がある。
非侵害方法が商業的存在意義を持っているかどうかの判断は、特許方法が非侵害方法よりも"Profitable"か否かの基準ではなく、非侵害方法を改良し、継続していくことが"unreasonable"か否かで判断すべきである。
*裁判管轄
Zeneca Limited v. Mylan Pharmaceuticals, Inc.
(97-1477, April 1, 1999, CAFC, Rich, Rader and Gajarsa)
(概要)
M社はウエスト・ヴァージニア州に本店があり、同州法によって設立された会社である。M社は、ペンシルヴァニア州に業務拠点をもつMylan
Laboratories Inc.の子会社である。一方、Z社は英国に本店を持つ英国法によって設立された会社である。
M社は、通常形状の乳ガン治療薬タモキシフェンを市場に販売する許可を得るために、メリーランド州、ロックビルにあるFDAに請願書を提出した。該治療薬はZ社所有の特許された薬である。M社の請願書には、ANDA(略式新薬出願)と、Z社特許が無効であること、有効であるとしても侵害していないという証明書が添付されていた。ANDAは21USC355(j)(2)(A)(IV)に従って、Z社にも送られる。Z社はM社を侵害でペンシルヴァニア地裁に訴えた。
提訴後、Z社は本件をメリーランド地裁へ移送を求めるモーションを提出した。メリーランド地裁は管轄権を持たないとしてペンシルヴァニア地裁に戻すと判断し、ペンシルヴァニア地裁はZ社のモーションを認めメリーランド地裁に戻すと判断した。
本件の争点は、M社はメリーランド州との接点としてFDAにANDAを提出したということだけである。この接点だけでメリーランド州に管轄権を持つと言えるかどうかである。
(判決)M社はメリーランド州に管轄権がない。政府機関等との接点は人的管轄権の接点として考慮しない。
*Step-Plus-Function Claim
Seal-flex Inc. v. Athletic Track and Court Construction and Owen E. Perry
(97-1432, -1504, 98-1045, April 1, 1999, CAFC, Newman, Rader and Bryson)
(事件の内容)S社がAT&CC社を特許侵害で訴えた。特許発明は、基礎の上にアクティビティーマットを設置する方法に関するものであって、クレームには"[the
step of] spreading an adhesive tack coating for adhering the mat to the
foundation over the foundation surface"というステップ(工程)が含まれていた。争点は、"an
adhesive tack coating"が、ゴムラテックスを含むか否かであった。原告及び被告は上記工程はStep-Plus-Function
elementであり、112条第6パラグラフで解釈することに同意した。その結果、Step-Plus-Function
elementの解釈に、112条第6パラグラフの"Means-Plus-Function element"と同様の、明細書に記載されているもの(工程)又はそれの均等物(均等工程)という解釈を適用した。そして、文言侵害が判決された。
(Rader判事の追加意見)
この事件では、クレーム中の要件の解釈に112条第6パラグラフを適用すべきか否かを独立に決める必要があった。特に、この構成要件が、"means
plus function element"であるか、否か、又は"step plus function
element"であるか、否かを特定することは、本事件の適正な判決にとって決定的なものであったと信じる。
["means plus function element"であるか、否か、又は"step
plus function element"であるか、否か]
112条第6パラグラフでは、"means-あるいはstep-plus-function"の構成がある場合の解釈手法を規定している。"means"は"structure"又は"material"と、"step"は"act"と関係することを明らかにしている。従って、クレーム中に特定の構造又は物質の規定なしに"means
for performing a function"と表現されていたら、means-plus-function
elementであると、また、特定の行為の規定なしに"step for performing
a function"と表現されていたら、Step-Plus-Function elementであると評価される。
"means"の表現がクレーム中にあった場合は、means-plus-functionであると推定することとしている。そして、もしクレームされた機能を実行するための構造又は物質がクレーム自身に挙げられていたら、又はもしmeansに関連する機能を挙げ損ねていたら、この推定は働かない。
"maens"の表現がクレーム中にない場合は、means-あるいはstep-plus-functionであると、通常は、みなされない。しかし、構成が、構造や物質を列挙するような表現ではなく、純粋に機能的用語のみで表現されていた場合には、meansの表現がなくてもmeans-plus-function"として解釈される。
Step-plus-functionはmeans-plus-functionと同様に扱われるが、step-plus-function特有の問題がある。
"means"の用語が"structure"又は"material"の一般化表現であると同様に、"step"の用語は"acts"の一般化表現である。しかし、"step"という単語は、クレームの文脈によって"acts"又は"function"のどちらかを表現したことになる。従って、"step"という言葉を使ったからといって、112条第6パラグラフの適用を推定することはしない。例えば、方法クレームの構成を"steps
of"のフレーズで書き始めることがある。"steps of"の言い回しは、機能というよりもむしろ特定の行為"acts"を導入するための口語表現であり、112条第6パラグラフの適用を推定させるものではない。
"of"とは違って"for"は機能を列挙するための口語表現である。"step
for"は通常機能的表現を導入することになる。だから、"step for"の用語がクレーム中で使われたときは112条第6パラグラフの推定が働く。しかし、step
for performinf a functionの表現があったとしてもその機能"function"を実行するための具体的な行為がクレーム中で表現されていたら、112条第6パラグラフの適用はない。
meansの表現が無かった場合でも112条第6パラグラフを適用できたのと同様な扱いが"step
for"の表現が無い場合にもできる。方法クレームの構成を、機能を実行するための行為として解釈するか、機能として解釈するかで、その内容が大きく変わる。行為と機能はともに動詞+"ing"で頻繁に表現される。例えば本事件のように"the
steps of""spreading an adhesive tack coating"と単に表現されていた場合には、"spreading"の表現だけから、それが機能なのか、行為なのかを明確にできない。従って、このような場合には、クレームと明細書との全体の文脈から、クレーム解釈を慎重に行うことが要求される。
本ケースのクレームでは、"spreading an adhesive tack coating"は行為を示し、"for"の後に続く"adhering
the mat to the foundation"は機能を表現している。従って、本ケースでは"[the
step of] spreading an adhesive tack coating for adhering the mat to the
foundation over the foundation surface"は具体的行為を表現しており、112条第6パラグラフの適用がない。仮に、本ケースで"the
step for adhering the mat to the foundation"とのみ表現されていたなら、この構成には112条第6パラグラフが適用されるであろう。
*トレードドレス、商標、不正競業防止、271条(企業幹部の責任)
AL-SITE Corp. and MAGNIVISION, Inc. v. VSI International, Inc. and MYRON
Orlinsky
(97-1593, 98-1108, March 30, 1999, CAFC, Mayer, Rich and Rader)
(技術)M社(その前身がAL社)とVSI社は共に眼鏡を販売しており、M社特許発明はラックに眼鏡を置いて展示することに関するものであった。M社はVSI社を特許権、トレードドレス及び商標権の侵害、不正競業行為で訴え、さらにVSI社長のMYRON氏をこれら違反行為についての個人的責任を追求した。地裁は、M社の訴えを全て認めた。VSI社及びM氏は控訴した。CAFCは特許権侵害を支持したが、その他は棄却した。
(特許権侵害)
112条(6)のミーンズプラスファンクションの解釈で、地裁とCAFCで異なった判断されたが、結論に影響はなく、侵害が支持された。
(トレードドレス)
トレードドレスの侵害を立証するために、原告は以下の3点を示さなければならない。
1)トレードドレスの本来的に持っている自他識別性、あるいは二次的意義
2)トレードドレスが必要不可欠な機能要素でないこと
3)被告のトレードドレスと類似するために、出所、提供者又は定評について、需要者が、混同を起こしやすいこと
これらの中一つでも立証ができなかったときはトレードドレスの侵害は成立しない。
1)[自他識別性]自他識別力のあるトレードドレスは、需要者が他の商品と区別でき、出所によって商品を特定できる。第11巡回裁判所は、自他識別性とは、トレードドレスが通常の基本形状又はデザインであるかどうか、その特定の分野において特有の又は普通でないものかどうか、物品の良く知られた装飾形態又は通常適用する単なる洗練であると公衆がみなすかどうかを基準にすると判示している。
[二次的意義]そのトレードドレスの使用によって、物品と提供者との間の関係を需要者が想起するかどうか、提供者を知っているか、知らないかを基準に判断される。二次的意義の立証にはいくつかの方法がある。たとえば、消費者調査によって、あるいはトレードドレスを変わることなく、長期間使用していたことを示すことによって、立証できることがある。
2)[非機能要素]その物品の目的又は使用に本質的な機能である場合もしくは物品の費用又は品質に影響する機能である場合、トレードドレスは必要不可欠な機能要素である。このような機能要素をトレードドレスとして保護しない。
3)[混同蓋然性]混同しやすいことの立証はいくつかの因子を総合して判断される。
a)原告の特徴部分の特質、b)特徴部分の類似性、c)特徴部分を有する商品の類似性、d)小売販売店及び顧客の類似性、e)広告宣伝の類似性、f)被告が原告の特徴部分をコピー又は模倣しようとした意図の有無、そしてg)事実上の混同の有無。
(商標)
商標侵害の立証にために、原告は、原告商標と被告商標とが需要者によって混同されやすいことを示さなければならない。混同しやすいかどうかは、a)原告の特徴部分の特質、b)特徴部分の類似性、c)特徴部分を有する商品の類似性、d)小売販売店及び顧客の類似性、e)広告宣伝の類似性、f)被告が原告の特徴部分をコピー又は模倣しようとした意図の有無、そしてg)事実上の混同の有無、を総合して判断される。
さらに、商標の混同判断においては、h)商標の強さ、i)類似の商品に使用されている類似標章の数及び特性、j)事実上の混同状況及び程度、k)事実上の混同があったとする証拠がなく、両商標が同時に使用されていた期間の長さ及び状況、が考慮される。
(不正競業)
不正競業防止による保護は、商標法及びトレードドレス法によって与えられる保護に追加して与えられるものである。商標及びトレードドレス侵害を、不正競業防止を求めるための根拠としてもよいが、裁判所は商標及びトレードドレス侵害の立証で示されなかった被告行為を審理するために追加行為をしばしば要求する。M社は、不正競業を立証するための追加行為を示すことができなかった。
(個人的責任)
特許法271条には、企業活動による侵害の責任を、企業の幹部に課す権限を与えている。しかし、271条の個人責任の規定を適用するためには、企業のベールを見破ることを正当化するに十分な証拠が要求される。たとえば、異常な状況下においても、企業の組織(指示系統、調和)を無視するような個人の行為を企業が正当化するようなことがない限り、その企業実体は、尊重と法的評価を受けるだけの価値がある。会社を、幹部個人の単なる「別の自分」又は「分身」のごとくみなせる場合には、会社組織を無視していることの理由になる。M氏は単独で被疑侵害物の使用継続を決めたが、その行為は会社組織上の権限地位(CEO)と一致するものであり、会社組織を無視した行為であったとす証拠は示されなかった。
*
Pharmacia & Upjohn Co. v. Mylan Pharmaceuticals, Inc.
(98-1360, March 18, 1998, CAFC Newman, Lourie and Schall)
(発明)
Upjohnは2つの重要成分を含む、糖尿病治療に用いる経口糖尿病薬グリブライド(C23H28ClN3O5S)に関する発明を163特許取得した。その重要成分は微粉化されたグリブライドと、ラクトースであって。ラクトースには、含水(一水)ラクトースと、賦形剤として働く無水ラクトースがある。賦形剤は薬効がない。含水ラクトースは圧縮性が乏しく、ホッパーに目詰まりしやすいので、グリブライドの工業生産に使用するのは難しい。この問題を避けるために”スプレードライ・ラクトース”(含水ラクトースで粒子が形成されている)あるいは無水ラクトースが使われる。スプレードライのものと無水ラクトースは両方とも圧縮性があり、含水ラクトースよりも大きな粒径をしているので、タブレット製造が容易である。163特許は主要な賦形剤としてスプレードライ・ラクトースを含有する微粉化グリブライドをクレームしていた。
Mylanは数種の微粉化グリブライドを案出し、それらの全てに主要な賦形剤として無水ラクトースを使用し、スプレードライ・ラクトースは一切使用していなかった。163特許の権利期間満了前にFDAにANDA(簡略新薬申請)を出願した。21USC355条(j)(2)(b)(ii)の規定にしたがって、96年の8月30日にUpjohn社にこの新薬は163特許を侵害していないという保証書の通知を送った。
(地裁)
UpjohnはMylanのADNAの出願は特許権侵害であるとして提訴した。文言侵害が無いことは認めたが、スプレードライのものと無水ラクトースとは均等物であるとして均等論侵害をUpjohnは主張した。一方、Mylanは、1)審査経過禁反言を理由に非侵害であると、あるいは、2)Upjohn
v. MOVA Pharmaceutical事件での特許無効と権利行使不能の判決によって平行的に禁反言で禁じられると主張した。
地裁は、163特許の審査経過を検討し、Upjohnがスプレードライのものを使用することが"criticality"であることを強調していたこと、スプレードライのものを使用しないと発明の効果が得られないと主張していたことから、通常の競業者は、Upjohnがスプレードライでないラクトースを含有するグリブライドをクレームの範囲から放棄したと考えるのが理に適っていると判示し、禁反言によって均等論は制限されるから非侵害であると判決した。
また、163特許は、自明であるから特許無効であり、そして、不公平行為があったので権利行使不能であるとのMOVA事件における判決をうけて、Upjohnは並行的に禁反言で禁じられると地裁は判決した。Upjohnは控訴した。
(CAFC)
地裁の判決を支持した。昨年のCybor事件(96-1286,-1287 Decided:March 25,
1998 CAFC en banc)を引用し、競業者が、特許権者は関連する主題を放棄したと、合理的信じるであろうかどうかのテストをこの事件に適用した。
他の裁判所における判決によって並行的に禁反言で禁じることができることを支持した。ただ、該他の裁判所の判決は控訴されているので、もし、Upjohnがその控訴審で勝てば、この判決は修正されるかもしれない。
*商標登録異議申立適格
William B. Ritchie v. Orenthal James Simpson
(97-1371, March 15, 1999, CAFC, Newman, Plager and Rader)
(背景)
S氏は、O.J.SIMPSON、O.J.及びThe JUICEの商標を、幅広い商品を指定商品として出願をしていた。本商標出願は許可され、商標公報に掲載された。R氏は、この3つの商標の登録に対して、「該商標は不道徳(immoral)あるいは中傷的(scandalous)なものである」という理由と、「該商標の中の一つは単なる姓(あだ名)である。」という理由で異議申立をした。しかし、特許庁審判部はR氏には異議申立適格がないとしてその申立を却下した。R氏は控訴した。
(CAFC)
異議申立人適格とし、1)異議申立人が手続きに"Real Interst(利害)"を持っていること、2)損害が生じていると信じる"reasonable
basis"があることが要求される。 R氏はこれら要件を満たしている。従って、審判部の申立却下を取り消し、差し戻す。
1.The Real Interest Test
真の利害を要求するのは、真の論戦をするつもりのない単なる干渉者"Intermeddler"による申立を排除するためである。従って、異議申立手続きの結果に直接的にそして主観的に利害関係を有するものでなければならない。特許庁審判部によれば、一般公衆の利害を越える"beyond
that of generic public"個人的利害"personal interest"を持っている場合にだけ"Real
Interest"を個人が持っているとしている。しかし、審判部は、いままで、このような判断基準を適用していない。例えば、Bromberg事件では、"ONLY
A BREAST IN THE MOUTH IS BETTER THAN A LEG IN THE HAND"なるレストランサービスについての商標に、二人の女性から異議申立がなされた。異議申立人は、該マークは階級としての女性をけなすものであると主張し、種々の女性団体の支持を得ているという供述書を提出した。この申立は受理された。
R氏の申立では、このマークは彼の家族に関する価値観をけなすものであると主張した、なぜなら、彼は、妻と夫とは愛しあい、育むことが神聖なる結婚であると信じているからである。そして、彼の申立によれば、このマークは、妻への虐待あるいは妻の殺人というのと同義であるから、前記のように信じる者に対し損害を与える恐れがあると主張した。
R氏の立場は、Bromberg事件と同じであるから、R氏は"Real Interest"を持っている。
2.Reasonable Belief of Damage
申し立てられたマークが明確にそして直接的に暗示している特徴を異議申立人が持っていることを主張すれば、Reasonablenessの必要要件を示すことができる。Bromberg事件では、女性の全てがそのマークによって評判を落とされていると主張される特徴を有していたので、Reasonablenessが認められた。
本事件のマークにはキリスト教徒のような彼に不快感を与えるような言外の意味があった。また、彼に賛同する全米の人々が署名した請願書を得ていると彼は申立の中で主張した。それによって、彼だけが、そのマークに対して不快感を覚えているのではないことが示された。従って、R氏はreasonable
belief of damageを持っている。
*著作権のOwnership
DSC Communications Corp. v. PULSE communications, Inc.
(98-1024, -1031, March 11, 1999, CAFC, Mayer, Friedman and Bryson)
(背景)
DSC社とPULSE社はRBOCs社として知られる会社に対する取引で競業していた。DSC社は、Litespan
2000という装置と、その装置に接続可能なインターフェースカードを製造販売していた。この装置には、カードを機能させるためのPOTS−DIソフトウェアが保存されている。この装置に該カードを挿入し電源を入れると、ソフトウェアの複製物がカード中のメモリーにダウンロードされ、電源を切るとソフトウェアの複製物がカード中のメモリーから消滅する。DSCはRBOCs社のネットワークにこの装置が使えるように設計した。DSCはLitespan
SystemをRBOCsに引き渡す契約を交わした。DSCは他の電話ネットワーク会社とも同様の契約をした。
一方、PULSE社は、Litespan用のカードと互換性のあるカードを開発したが、そのカードを機能させるためのソフトウェアの開発はせず、DSCのカードと同様に、Litespan装置に保存されているソフトウェアをカードにダウンロードすることで機能するようにした。
地裁は、著作権法17USC117条の規定を適用し、RBOCsはソフトウェア著作権のOwnerであるから、DSCソフトウエアを直接侵害していない。従ってPULSEのカードは寄与侵害していないと判決した。DSCは控訴した。
(CAFC)
寄与侵害が成立するためには直接侵害がなければならない。著作権法117条はコンピュータプログラムのコピー物のOwnerは他のコピーを作成しても侵害にならない旨規定している。この規定の中のOwnerというのは、立法経緯などから"rightful
possessor"ということでは足りない。DSCとRBOCsとの契約では、"ソフトウエアに関する権利は譲渡者に残る。装置の耐用年数の間はその装置と共にそのソフトウエアだけを使用することが譲受者にライセンスされる"旨の規定があった。この契約から、RBOCsはRBOCsが所持しているDSCソフトウエアのみについての権利者であって、ソフトウエアの複製物のOwnerではないことが自明である。従って、RBOCsはDSCソフトウエアの複製物から他の複製物を作成するための権利を持っていない。著作権には、著作物の複製権、派生著作物の作成権、著作物の複写物を配布する権利、公に著作物を実演する権利、公に著作物を展示する権利などが含まれ、それらの権利は107条〜120条によって規定されている。
従って、117条の規定は適用されずRBOCsは直接侵害をしているので、DSCは寄与侵害している。
*審査経過禁反言
Sextant Avionique, S.A. v. Analog Device, Inc.
(98-1063, -1077, February 26, 1999, CAFC, Lourie, Smith and Gajarsa)
(背景)
Sextantは加速度計に関する2つの特許(Marcillat特許&Boura特許)を所有していた。2つの特許は特許法上のファミリー関係にない、すなわち継続出願、分割出願又は部分継続出願という関係はないが、Boura特許の明細書中で先行技術としてMarcillat特許を引用し、Boura特許はMarcillat特許を改良した物であると記述していた。
Marcillat特許の審査経過:
出願当初、コンデンサー板を一構成要件とする加速度計がクレームされていた。審査においてRudolf特許を引用しての103条による拒絶理由を通知された。Rudolfには半導体製造技術によって形成された加速度計が開示されていた。その技術として、導電性を付与するために不純物をドープさせた単結晶シリコンで形成された旋回可能なフラップが開示されていた。そのフラップはコンデンサー板の一つを形成するものであった。出願人はクレームを補正し、"metallizations"という規定を追加してコンデンサー板の種類を特定した。さらに意見書において、「Rudolfにおけるフラップはホウ素をドープした単結晶シリコンを含んでいる。そして"metallization"でコンデンサー板は形成されていない」と主張した。下記のBouraに拒絶理由を通知した後、Marcillatは特許された。
Boura特許の審査経過:
出願当初、Marcillat特許同様にコンデンサー板についての限定はなかった。審査において拒絶理由として、112条による記載不備と、Deval特許を引用しての103条による自明性とを挙げられた。Bouraの特許弁護士(この弁護士はMarcillatの手続も行っていた)は、クレームを補正し、"Metallization"の場所を特定し、さらにコンデンサー板が"metallization"で形成されているという規定をした。Devalとの争点は、場所であったので、意見書ではその争点についての主張を主に行った。その後、Bouraは特許された。
Sextantはこの二つの特許の侵害を理由にAnalogに対して提訴した。Analogの加速度計はドープ処理された多結晶シリコン層を使っており、積層金属箔を使っていなかった。地裁は審査経過禁反言により非侵害と判決した。
(CAFC)
地裁判決を支持した。クレームに"metallization"の要件を追加した理由が審査記録に無い。審査記録で理由を示していないので、その要件を加えた理由は特許性に係わるものであると推定する。この推定に反証できない場合は、Warner-Jenkinson米国最高裁判決によれば、その要件に関して、均等論を適用する余地はない。
Marcillatに関して、クレームの補正は先行技術による拒絶理由を回避するためのものであった。従って、審査経過禁反言により、"metallization"の均等範囲を"dope"にまで広げることはできない。
Bouraに関して、クレームに"matallization"の規定を追加した理由は明らかでないが、その規定を追加した理由が審査記録から明らかでないので、この補正は特許性に係わるものであると推定される。従って、審査経過禁反言により、"dope"した製品は均等の範囲から除外される。
*”Inherent”
In re Anthony J. ROBERTSON and Charles L. Scripps
(98-1270, February 25, 1999, CAFC, Newman, Friedman and Rader)
(背景)
P&Gの発明者Robertsonは紙おむつに関する特許出願をした。特許出願のクレームは、赤ん坊におむつを取り付けるための2つのファスナーと、汚れた紙おむつを始末するためにおむつを巻き上げ、それを固定するための第三ファスナーとを有する紙おむつか記述されていた。特許庁は、"Principles
of inherency"に基づいて102条により先行技術と"anticipation(実質同一)"であるとして拒絶した。
具体的拒絶理由:先行のおむつ(Wilson)は2つのスナップ留めが前と後ろに取り付けられており、さらに第二のおむつ締め付け手段として別個独立した留め帯びひもが付いていてもよかった。Wilsonの明細書にはおむつを取り付けるために使用したスナップ留めを使って巻き上げ固定することによって容易に始末できると記述されていた。Wilsonのおむつには、本来的に汚れたおむつを巻き上げて固定する能力があったと認定し、P&GおむつはWilsonおむつにより"anticipation"であるとされた。P&Gは審判請求したが、拒絶審決がなされた。P&Gは控訴した。
(CAFC)
外部証拠によって、発明の構成が、先行技術の中で"必然的"に存在するものであることが明確にされた場合にだけ、発明の構成は、先行技術の中に本来的に存在するものであると認定できる。その構成の存在蓋然性あるいは存在可能性があるというだけでは"inherency"に基づく拒絶をすることはできない。
*先行特許に関するメモを米国特許庁に提出しなかったことで特許は権利行使できなくなる。
ELK Corp. of DALLAS v. GAF BUILDING MATERIALS Corp. et al.
(98-1369, February 11, 1999, CAFC, Michel, Plager and Rader)
(背景)
ELKの従業員4人が、新しい屋根板をBettoli特許を参考にして開発した。ELKの発明者の一人、W氏は特許性調査の手配をした。調査を依頼するための彼の手紙において、彼は、開発された屋根板がBettoli特許に開示されている屋根板に似ていると認めていた。
調査後、W氏に調査報告書が送られてきた。報告書にはGiles特許についての言及があった。W氏は報告書を検討した後、共同発明者に宛てたメモを書いた。メモにはGiles特許は"special
interest"であることを指摘していた。この報告書とメモは特許弁護士に送られた。
ELKは屋根板に関する意匠出願(144特許)の審査中に、多くの先行特許情報を特許庁に開示していたが、Bettoli特許とGiles特許については開示をしなかった。一方、144特許の継続出願の審査においてBettoli特許とGiles特許を特許庁に開示した。
ELKはGAFに対して144特許の侵害で提訴した。GAFは審査中の不公平行為により権利行使不能の確認判決を求める反訴をした。地裁は権利行使不能の判決をした。ELKは控訴した。
(CAFC)
"Materiality":通常の審査官が特許として許可すべきかどうかを決定するのに重要な情報であると考えるであろうとの可能性があれば、"material"である。
特許庁に開示した先行特許と開示しなかった先行特許との相違点を考慮すると、開示しなかった先行特許は、開示した先行特許と重畳的なものではなく、開示した先行特許よりも"material"であると認定した。
さらに、発明者は144特許が開示しなかった先行特許に類似していることを知っていた。また特許弁護士は、開示しなかった先行特許が"material"である可能性があること知っていたと証言した。開示しなかった先行特許は"Materiality"が非常に高かった。
"Intent":特許庁を騙す意図があったかどうかの判断に直接証拠は必要がない。出願人の行為などの状況から判断することができる。また、"Materiality"が非常に高い場合は"Intent"が低くても不公平行為であると認定できる。地裁の判決を支持する。
*実施可能要件(112条第1段落)
NATIONAL RECOVERY TECHNOLOGIES, Inc. v. MAGNETIC SEPARATION SYSTEMS, Inc.
et al.
(98-1134, February 4, 1999, CAFC, Rader, Schall and Gajarsa)
(背景)
Recoveryは、透過電磁放射を利用してポリ塩化ビニル(PVC)とポリエステル(PET)などの物質の分別をする装置及び方法に関する特許を有していた。PETは高透過率(低吸収率)を示し、PVCは低透過率(高吸収率)を示すので、この吸収率の差異によって、PVCとPETとを分別できることが知られている。
しかし、従来の分別システムでは、プラスチック容器の形状が特殊であったり、押し潰されたり折り曲げられたりしていることによって、容器厚みに不規則な部分ができ、そのため光路長が変化し、それが光吸収率に影響し、樹脂の分別判定を誤らせるという問題があった。
特許クレームは、“物品の不規則部分を透過していない信号を選択する”ことを一つの構成要件としていた。一方、明細書には最大強度を有する透過信号は不規則部分を通過していないであろうという仮定に基づき、容器の長手方向に沿って幾つかのポイントで容器に放射線を照射し、最も高い透過率を有する測定値を選択することが記載されていた。地裁では、明細書に不規則部分を通過しない信号を選択する方法が実施可能なように記載されていないとして特許無効の略式判決をした。Recoveryは控訴した。
(CAFC判決)
Recoveryはクレーム中の"選択する(select)"は、不規則部分を透過している信号よりも、不規則部分を透過していない信号を"好む(prefer)"という意味であり、信号の選択が完全完璧であることを要求していないと主張した。しかし、本願の明細書に、"select"を、辞書的な通常の意味から逸脱した意味に解釈すべきとする記述はない。"select"は辞書的な意味の"選択する"と解釈するのが妥当である。
一人の証人は、不規則部分を透過していない信号を選択するということはできていなかったと証言した。不規則部分を通過していない信号を選択する代わりに最も高い透過率を有する測定値を選択することが明細書に記述されている。この代替の選択方法は実施可能なように明細書に記載されている。しかし、不規則部分を通過していない信号を選択する方法の開示はない。代替方法が実施可能要件を満たしているからといって、不規則部分を透過していない信号を選択する方法が実施可能要件を満たしているということにはならない。
112条第1段落の実施可能要件を満足するには、過度の実験を要することなしにクレーム発明を当業者が実施できるように明細書を記載しなければならない。
すなわち、クレームの範囲は、明細書に開示された実施可能な範囲と等しいか又は狭い範囲でなければならない。明細書に開示された実施可能な範囲は、明細書に実際に開示された範囲だけでなく、当業者が過度の実験を要することなしに実施可能な範囲(いわゆる自明な範囲)までが含まれる。
本事件では、“物品の不規則部分を通過していない信号を選択する”ステップがクレームに記載されているが、明細書には、このステップを如何に実施するかについて全く記載が無かった。従って、地裁の判決を支持する。
*ライセンス契約と特許侵害
ENGEL INDUSTRIES, Inc. v. LOCKFORMER COMPANY, IOWA PRECISION Ind. and MET-COIL
SYSTEM Corp.
(98-1294, -1295, February 3, 1999, CAFC, Mayer, Archer and Clevenger)
(背景)
Lockforerは空調ダクトシステムに関する米国特許4466641の特許権者である。1985年にEngelとLockformerとの間でライセンス契約を締結した。Engelは契約にサインする前、契約交渉中、そして契約後も、競合するダクトは'641特許を侵害していないと主張し、契約のステートメントにもそのことが記録されていた。それにもかかわらず、Engelはライセンス契約(Lockformerが641特許に基づく義務をEngel及びその顧客から弁除することに合意した。すなわちLockformerがEngelに権利行使しないという合意)にサインをした。
1986年、Engelは特許無効、特許非侵害及び契約が違法であるから、該契約における特許権使用料の支払いが免除されるべきであるとの確認訴訟を起こした。地裁の判決の後、ライセンス契約及び特許は有効であるが、特許は非侵害であるとして控訴した。CAFCは特許非侵害、ライセンス契約は特許権乱用ではなく合法として、地裁判決を一部認容し、一部棄却したが、差し戻しはしなかった。
1997年、Engelは地裁に特許権使用料の支払い分の返金を求めるモーションを起こした。地裁は管轄権がないとして棄却したので、Engelは控訴した。
(CAFC)
上級裁判所から下級裁判所への職務執行令状(Mandate)が出された場合、地裁はmandateの範囲を超える救済を与えることはできないが、下級裁判所に差し戻された場合には他の争点に関しての判断は自由である。
本件では、前控訴審において、CAFCは特許及び契約が有効であり、特許権侵害はないとの判決をした。また、先のCAFCの判決で、下級裁判所に差し戻していないし、Mandateを出していないから、地裁に新争点を考慮する管轄権がないと判決した。
*
NOVAMEDIX, Ltd. v. NDM ACQUISTION Corp. and VESTA EALTHCARE Inc.
(97-1507;January 28, 1999, CAFC, Rich, Smith and Newman)
NDMとNovamedixとは医療フットポンプの市場において競合している。Novamedixは4つ特許権を所有しており、NDMとVestaに対して該特許の侵害で訴えた。両当事者は和解契約条項で特許侵害訴訟を取り下げることに合意した。
和解契約において、NDMは(1)Novamedix特許を侵害していること、該特許が有効で権利行使可能なものであることを認め、(2)特許を侵害することを止め、(3)フットポンプとスリッパの在庫を顧客リストとともにNovamedixに引き渡し、さらに(4)NDM所有の特許について排他的ライセンスをNovamedixに与えることに合意した。
NovamedixはNDMを特許侵害に対する損害賠償の責任から免除することに合意した。さらにNovamedixはNDMの顧客の全てに通知を送ることを要求され、NDMの在庫が移転されたことを顧客に知らせており、そして”Novamedixは相互に認めた条項で顧客が必要とするものを供給したい"という主張をしていた。和解契約にはニューヨーク州法準拠の規定が含まれていた。
オハイオ州南部地区地裁は1996年3月に合意判決(consent judgment)を記録した。合意判決において、NDMはNovamedix特許の有効性及び権利行使可能を認め、さらに特許侵害を認めた。また、合意判決はNDMの更なる侵害を禁止し、該判決に和解契約が編入された。両当事者は契約条項を遵守することを要求された。
NDMは在庫と顧客リストをNovamedixに引き渡した。ところが、両当事者間で、NovamedixがNDMの在庫品をNDMの顧客に販売することを意味していたと解釈するかどうかで疑義が生じた。解釈はともあれNDMが在庫し、Novamedixに引き渡したスリッパはFDAの要件を満たしていなかったので販売できないものであった。Novamedixは"ニューヨーク州法下ではこの和解契約は物品売買契約であるから、ニューヨーク州UCCの適合性と市場性の黙示保証に従属している"というモーションを行った。
地裁は、合意判決はUCCの保証の暗示を目的に物品販売契約として扱われるべきか否かという争点にNovamedixのモーションを置き換えた。そして、地裁はUnited
State v. Armour,402 U.S.673(1971)に依拠して、上記のように扱われるべきでないと判決した。和解契約の言葉は不明確ではなく、解釈のために外部証拠を使うことを妨げたと判示した。さらに、Armourは当事者の一方の目的を助成するような同意判決をすることを禁止しているので、明確に規定された条項に和解契約を拘束しなければならないと地裁は決定した。在庫品の品質に関して明確な保証をNDMは与えていないので、地裁は和解契約が売買契約であると解して保証を暗示しているということを否定した。
CAFCは地裁判決を支持した。
*Corroboration
THOMSON S.A. v. QUIXOTE Corp and DISC MANUFACTURING Inc.
(97-1485;January 25, 1999, CAFC, Rich, Schall and Gajarsa)
(背景)
原告Thomsonはコンパクトディスク(CD)などの光学情報記録装置に関する特許権の譲受人であり、CDを"Read"あるいは"Play"する装置を製造し、CDを製造する会社にライセンスを与えている。被告QuixoteらはCDを製造している。原告は被告を特許侵害で訴えた。
公判で、被告は102(g)で特許無効を抗弁した。両当事者は原告発明日が1972年8月25日であったと規定した。そして被告は訴外MCA
Discovision Inc.が1972年8月より前に開発した非特許のレーザービデオディスク(LD)と本願発明とが実質的に同一(anticipate)であると主張し、その証拠を示した。
公判後、被告は特許を侵害しているが、該特許は102(g)で新規性がなく無効であるという特別評決を陪審が出した。
原告は新規性がないとする証拠が不十分であるとしてJMOLのモーションを提出した。原告はMCAのLDの発明者の証言には裏付け(Corroboration)がないと主張したが、地裁は原告のモーションを棄却した。原告は控訴した。
(CAFC)
控訴における原告は(1)陪審評決はビデオディスク事業で研究していた訴外MCAの従業員による証言証拠に単に支えられてものであり、(2)この証拠は102(g)の特許無効判決を支えるには法律問題として不十分である、なぜなら、先行発明の発明者による証人証拠には裏付けが要求されるからである、と主張した。しかし、この主張は受け入れることができない。
インターフェアレンスや侵害訴訟において、発明者証人だけが先発明に関する事実に関与している場合、裏付けなしでは証拠として不十分であると判示してきた。証拠に裏付けを要するというルールは、証言をする発明者が自己利益を相殺するためだけに要求される。すなわち、証拠の裏付けは、先発明を主張している証人としての発明者が、告訴されている当事者、該当事者の従業員あるいは該当事者に譲渡した者であるときにだけ必要である。
本ケースでは、証人として証言した発明者と称する者らは訴外の非当事者である。Thomsonは該証人はQuixoteに製品やサービスを供給するビジネスに関与しているから、その証言に裏付けが必要であると主張しているが、裏付けルールの適用を正当に理由づけるための”自己利益がある”というレベルには達していない。
従って、訴外発明者証言に裏付けは要しない。
*
CONNAUGHT LABORATORIES, Inc. v. SMITHKLINE BEECHAHM P.L.C. and SMITHKLINE
BEECHAM Corp. v. U.S. Food & Drug Administration
(98-1471;January 25, 1999, CAFC, Mayer, Clevenger and Gajarsa)
(背景)
ConnaughtはSmithKlineに対して787特許侵害を訴えた。787特許はある種のワクチンの精製に関するものであった。SmithKlineは787特許が権利行使不可、無効及び非侵害を主張した。特に、FDAが787特許発明前にワクチン精製の科学的研究を行っていたと反論した。このことを証明するためにFDAの研究内容を記述した書類提出を要求した。しかし、その書類からは十分に証明することができなかった。そこで、SmithKlineはFDA職員3名を宣誓証言人として求めた。しかし、FDAは拒否した。
この拒否に対して、SmithKlineは3名のFDA職員に対し、彼らを宣誓証言人として引き出すために召喚を求め、そしてFDAに対しデラウェア州連邦地裁の召喚にFDAを従わせるための申立を行った。FDAはこれに対して召喚を破棄するよう申立した。地裁はSmithKlineの申立を認め、FDAの申立を拒否した。さらにFDAは、職員を宣誓証言人として許可しないことに対する申立手続は行政手続法に従ったと主張したが、地裁はSmithKlineは行政手続法ではなく、民事訴訟連邦規則にしたがって手続きをしていると判示した。またFDAは司法権からの免除によって保護されていると主張したが、その免除は州裁判所にだけ適用され、連邦行政機関に対する連邦裁判所の召喚には適用されないと判示した。FDAは控訴した。
(判決)
CAFCの管轄は地裁の最終判決の再審理に限定されている。従って、証人から証拠提示を求める指令に対する控訴はできない。このルール"Finality
rule"はディスカバリー指令が裁判当事者でない証人になされた場合にも適用される。
非当事者は、ディスカバリー指令に従わないこと及び結果的に侮辱的(最終)指令に控訴することによって該指令の再審理を求めることができる。
しかしながら、FDAは副次的指令論又は職務執行令状のどちらかを通しての侮辱的な命令を受けずに再審理が可能であると主張している。
副次的指令"Collateral orders"はFinality ruleから除外される決定の一種である。副次的指令は論議中の問題を最終的に決定する、訴訟の本案から完全に分けて重要な争点を解決する、そして最終判決からの控訴では事実上再審理されないと最高裁は判示している(In
Cohen v. Beneficial Industrial Loan Corp., 337 U.S. 541(1949))。
職務執行令状"writ of mandamus"はFinality ruleを迂回する他の道を提供する。指令の許可あるいは拒否において、司法の裁量乱用又は権限不法使用が明らかである場合に限って地裁の指令を覆すことができる。
*
In re JOYCE A. CORTRIGHT,
(98-1258; January 19, 1999,CAFC, Mayer, Newman and Rader)
(背景)
CORTRIGHTは1992年に禿の治療方法に関する発明を特許出願した。その治療方法は牛の乳房を柔らかくするために使われていた商品"Bag
Balm"(登録商標)を頭皮に適用するものであった。
クレーム1は、A method of treating scalp baldness with an antimicrobial
to restore hair growth, which comprises rubbing into the scalp the ointment
wherein the active ingredient 8-hydroxy-quinoline sulfate 0.3% is carried
in a petrolatum and lanolin base.
クレーム15は、A method of offsetting the effects of lower levels of
a male hormone being supplied by arteries to the papilla of scalp hari
follicles with the active agent 8-hydroxy-quinoline sulfate to cause hair
to grow again on the scalp, comprising rubbing into the scalp the ointment
having the active agent 8-hydroxy-quinoline sulfate 0.3% carried in a petrolatum
and lanolin base so that the active agent reaches the papilla. であった。
審査官は有用性が無いと認定し101条に規定により拒絶した。審査官によれば、禿は治療できないものであると、一般に、信じられているから、本発明の有用性を俄には信じがたい。そこで審査官は、クレームされた発明の有用性を示させるために臨床証拠を要求した。しかし、発明者はそれを提出しなかった。クレーム15に関して、有効成分が毛乳頭に到達し、男性ホルモンを相殺するという作用についても、その作用が起きているという証拠は示されていない。
また、審査官は新規性が無いとも認定し102(a)条の規定にとっても拒絶した。すなわち商品"Bag
Balm"を人間の皮膚に適用することが先行文献に開示されており、頭皮は頭の皮膚であることから、anticipateであると認定した。出願人は審判を請求した。
1997年9月23日に審決がなされた。有用性がないとの理由づけが十分でなく、臨床証拠は、明細書の実施例が示されているから不要であるので101条の拒絶理由は棄却した。先行文献は人間の皮膚に適用することを開示しているだけで、禿の頭、すなわち頭皮に適用することを開示していないから102条の拒絶も棄却した。
その代わりに、112条1項の実施可能な開示要件を満たしていないとの新たな拒絶理由を通知し、これを理由に審決した。すなわち、明細書には髪の毛の成長を戻すために必要な"Bag
Balm"の投与の方法、量が開示されていなかった。クレームの広さと増毛分野での予測できない副作用とを考慮すると当業者は十分な実験なしでは発明を実施できない。
出願人は再考慮を要求したが、1997年11月28日に審判廷はその要求を拒否した。審判廷はクレーム1について"restore(ing)
hair growth"を"to return to its original state"すなわち、"a
full head of hair"と解釈できるので、これを実施する程度に記述していないと認定し、クレーム15については、(1)毛乳頭の刺激と(2)毛乳頭に動脈によって運ばれる男性ホルモンを相殺することによって髪の毛の成長が促されることを示す証拠がないから発明を実施できる程度に記載していないと認定した。
出願人は控訴した。
(CAFC判決)
1)クレーム1について
特許庁は、適正で最も広い範囲に解釈したクレームで審査を行う。このクレーム解釈は当業者の解釈と矛盾するものであってはならない。また、クレーム解釈は明細書の記述と矛盾してはならず、クレームの語義は明細書に照らして読む取るべきである。先行文献によって当業者が信じるある言葉の意味を示すことができ、議論されている術語が当業者によってどのように使われているかを示すことができる。したがって、クレーム中の術語を、類似分野の他の特許で使われている術語に与えられた意味と矛盾するような広い意味に解釈すべきでない。
本願前のいくつかの特許で、"restore(ing) hair growth"は"a
mount of hair growth"と解釈され、"a full head of hair"というような意味には解釈されていない。明細書には"Bag
Balm"を何時、どれだけの量を適用するかを開示しており、これら服用説明が開示されていれば当業者は発明を実施可能である。
2)クレーム15について
出願人は、発明の動作原理を知る必要はない。したがって、裁判所が増毛原因の証明を出願人に求めたの誤りである。しかしながら、明細書にはクレーム15の規定、すなわち、有効成分が毛乳頭に到達することあるいは相殺が生じることを示していなかったので、クレーム15の拒絶理由は支持する。
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VOICE TECHNOLOGIES GROUP, Inc. v. VMC SYSTEMS, Inc.
(97-1465; January 8,1999, CAFC, Rich, Newman and Lourie)
VMCはUSP5222124を所有していた。Voice Tech.は特許非侵害の確認の訴えを起こし、地裁は証人としての発明者の意見を排除し、Voice側の証人の意見を採用してクレーム解釈をし、非侵害の略式判決をした。VMCは控訴した。
CAFCは発明者証人の意見を採用し、略式判決を棄却した。マークマン判決では発明及び背景技術を説明させるための発明者証人を不適任なものとはしていないと判示した。
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MIKOHN GAMING Corp. v. ACRES GAMING, Inc.
(98-1216,-1217; December 30, 1998,CAFC, Newman, Rader and Bryson)
(背景)
AcresとMikohnはともにスロットマシンなどのゲーム機器の製造販売をしていた。AcresはUSP5655961を所有していた。Acresは当該特許発明に関係する製品"ハリケーンゾーン"を販売し、Mikohnは"マネータイム"というゲーム機を販売していた。AcresはMikohnの顧客及び需要家に対して次のような手紙を送った。
「マネータイムの構造及び操作方法を良く調べてみなければ最終的に決定することはできないが、Mikohnによって製造販売されている"マネータイム"は添付の特許を侵害している。Acresは961特許と同じ開示をするUS出願をいくつか持っている。これら特許が発行になったときに、Acresはそのようなシステムの使用を止めさせるために該特許を使うつもりがあることを認識しておくべきである。」
さらにAcresは961特許の発行を新聞発表した。そして、Mikohnはこの特許発行によって明らかに市場での損害を被っていること、顧客は特許を侵害するような製品を扱う会社との取引は通常避ける旨の主張を発表した。
MikohnはNevada地裁に特許非侵害の確認の訴と、Nevada州のコモンローににづく、故意的な妨害行為を追求した。
地裁はMikohnの訴えを認め、AcresはMikohnの顧客に対して上記のような行為をなすることを差し止めた。Acresは控訴した。
(判決)
Acresの行為が正しかったどうかの判断には連邦特許法を適用しなければならない。特許権者が、善意侵害者に特定の製品が特許を侵害しているとのアドバイスをすることは不適法なことではない。
以上。