ジョージワシントン大学"Patent Enforcement"のまとめ
Mar. 25, 1998
菊間 忠之
(本稿は、私の大学受講ノートを再編集したものです。未熟者ゆえ、翻訳ミス、要約ミスなどがあるかもしれません。ご指摘、ご指導を頂ければと思っております。メールでご連絡ください。)
A.誰を訴えるか?
特許法上の侵害行為"make, use and sell"
直接侵害、寄与侵害、誘引侵害
製法特許の侵害
35USC154条
特許権の排他性
特許発明の米国内での製造、使用、販売申出及び販売
製造特許についてはその製造方法で得られた物の米国内での使用、販売申出及び販売
35USC271条
特許権侵害
直接侵害 特許発明の米国内での製造、使用、販売申出及び販売
製造特許についてはその製造方法で得られた物の米国内での使用、販売申出及び販売
侵害の誘引
寄与侵害
35USC281条
侵害の補償
特許侵害に対しては民事訴訟によって補償される。
Deepsouth Packing Co., Inc. v. Laitram Corp., 406US518(1972)
(事実)L社は海老の殻剥き機に関する特許を有していた。D社はその殻剥き機の部品を米国内で製造し、その部品を外国に輸出し、外国で殻剥き機を組み立てるようにしていた。L社はD社を訴えたが、敗訴。
(判示事項)
寄与侵害を主張するには直接侵害が起きていることを立証しなければならない。
"Making"は国内で行なわれることが規定されている。L社は国内で"make"していない。
直接侵害は、特許発明の全体の実施がなければならない。発明の一部の構成を実施しても侵害にならない。すなわち本件では殻剥き機全体を製造していなければならない。L社は殻剥き機の一部を製造するだけで、全体の製造(組み立て)をしていない。
*271条(f)に、もし国内で組み立てたら侵害になるであろうことを海外で行なった場合には、侵害になるという規定が追加された。
*誘引
Hewlett-packard Co. v. Bausch & Lomb Inc.
寄与侵害"contributory infringement"271(c)と誘引"Inducement
of infringement"271(b)とは混同しやすい。
271(c)は寄与侵害の形式を列挙しているが、意図は必要ない。
271(b)は侵害誘引の意図がなければならない。
(本ケース)
BL社はローラーの製造販売部門を訴外A社に譲渡した。そのローラーの製造販売がHP特許を侵害することをBL社は知っていた。BL社は譲渡契約の中で特許補償条項を設けていた。BL社は該部門を譲渡したかっただけで侵害を起こさせる意図はなかったと主張した。一般に特許補償条項は寄与侵害の意図を成立させないが、その補償条項の目的が特許権を侵害してはならないという抑止を克服するものである場合は意図が推定される。本件ではそのような目的はなかった。
B.何処で訴えるか?(裁判管轄)
1.人的管轄 Personal Jurisdiction
2.訴訟物管轄 Subject matter Jurisdiction
3.裁判籍 venue
28USC1338条
特許関係の訴訟は、地裁が裁判権を持つ。
35USC293条
在外者は国内居住者によって手続を行なう。
DC裁判所が裁判権を持つ。国内居住者がいない場合または見つけられない場合。召喚は告示または他の方法で行なわれる。
28USC1391条
裁判地(管轄)
28USC1400条
特許侵害の場合、被告の居住地、または侵害地及び被告の主要ビジネス地
*裁判管轄
VE Holding Corporation v. Johnson Gas Appliance company
28USC2201条
争いがあれば、裁判できる。
*ライセンシーの裁判権
Textile Productions, Inc. v. Mead Corp. and Fiber Trim Sewing Co.(Decided:
JAN 28, 1998 CAFC)
(事実)T社とM社は車用の特殊ワイヤーを共同で発明し、1989年にT社は特許出願をした。
1990年に、T社とM社とは一般契約と販売契約とを締結した。
一般契約では、T社の特許をM社に譲渡すること、訴訟になった場合はT社の利得を守る合理的手続をM社が行なうことなどを規定していた。
また、販売契約では、T社はM社の需要の100%を製造し供給し、M社は購入すると規定されていた。T社は"Mead's
exclusive source"であり、M社は"Textile's sole customer"である。さらに、販売契約には"second
source contingency"の規定があった。それは、T社がM社の合理的需要に応じきれなくなったとき、M社はT社からの供給不足分を他社から供給を受ける権利を有する。ただし、(1)M社はT社にsecond
sourceを探す意思を適切に通知し、(2)T社が設備を増設するか又はM社の需要量を下請けさせるための機会とを与える。さらに、M社はsecond
sourceにライセンスを与え、そのライセンス料はM社とT社とで分けると規定していた。
1991年に5016859特許が発効した。一般契約に基づき特許がM社に譲渡され、販売契約に基づいて1992年7月(T社の経営者が変わる)まで供給は順調に行なわれたが、同月以降から、T社の製品に不良品が頻出するようになった。M社はT社に改善要求をし、T社は最善の努力をすることになった。
1995年3月、M社はT社に通知せずに、F社に接触し、F社から製品を購入した。同年9月T社はこの事実を知った。M社はT社に販売契約下での保留行為"suspending
performance"であると通知した。
T社はM社とF社を提訴し、"exclusive license"の権利を侵害するとの略式判決を求めた。一方、M社とF社はT社には訴訟を起こす権限がないとの略式判決を求めた。地裁は、T社に起訴権限なしと判決した。
(判旨)
侵害訴訟は特許権者のみが自己の名のもとに起こせる。ライセンシーは自己の名で提訴できない。但し、特許権の全権をライセンスされ、特許権の譲受人のごとき効果をもつ者は実質特許権者とみなすことができ、提訴可能である。
exclusive licenseeは自己の名で原則提訴することができず、特許権者と一緒になって共同原告として提訴できるだけである。
唯一の例外として、特許権者が侵害者であり、特許権者が自己を訴えることができないときのごとく、公正さが完璧に破られることを防ぐ必要があるときは、exclusive
licenseeは自己の名で提訴することができる。
ライセンシーがexclusive licenseeかbare licenseeかは、特許権者がライセンシー以外の第三者による発明の実施を排除することをライセンシーと約束したか否かによる。単にexclusive
supplyerであるということではexclusive licenseeにならない。
(判決)
T社はexclusive supplyerであって、exclusive licenseeではない。販売契約でsecondary
supplyerについて規定していた。従って、地裁判決を支持する。
*特許権共有者
Ethicon, Inc. and Inbae Yoon, M.D.
v.
United State Surgical Corp. and Young Jae Choi(Decided: Feb. 3, 1998 CAFC)
(背景)
Yoon氏とChoi氏はシースイントロデューサー(trocars)の改良研究を18カ月間共同で行なっていたが、C氏はY氏が製品の上市に積極的でないことから、その研究から手を引いた。
同年、Y氏はC氏に通知せずに単独で、trocarsの改良発明を特許出願し、その後、特許権を得た。さらにE社にライセンスをした。
E社はU社を特許権侵害で訴えた。U社は訴訟の最中にC氏の存在を知った。C氏はU社に協力することになった。
U社は、C氏が共同発明者(特許権共有者)であり、そのC氏から遡及的ライセンスを受けているので権利侵害はないと主張した。地裁はU社主張を認めた。E社は控訴した。
(争点)
1)C氏は共同発明者か?
2)訴訟手続に対する協力で、U社がC氏に多額の支払いをするのは妥当か?
3)C氏のU社に対するライセンスが有効であるとして、そのライセンスは特許権全体に適用されるか?
4)遡及的ライセンスは有効か?
(CAFC判示事項)
1)共同発明
発行された特許に名前を載せた者だけが真の発明者であると推定される。C氏にはその推定が働かない。
C氏が共同発明者であるとのC氏自身の証言には、補強証拠が必要である。C氏が描いたスケッチが補強証拠になるかどうか?
E社はC氏がスケッチを描いたことは認めたが、それはY氏がC氏に発明を説明してそれを描き起こしただけだと主張した。
しかし、次の点を考慮すると、C氏が発明して描いたものであると考えられる。(1)Y氏は電気関係の専門技術知識を欲していた。(2)C氏は電気系専門技師であった。(3)Y氏はC氏に共同開発を持ちかけた。(4)打ち解けたビジネス関係にあった。(5)共同開発の期間の長さ、(6)C氏に対する報酬が無かった。(7)C氏のスケッチと特許発明との類似性。(8)C氏がY氏たちの"メンバー"から脱退したときの手紙。(9)さらにU社はC氏のスケッチは電気系専門家だけができる内容を含んでいると主張した。したがって、スケッチは補強証拠として十分である。
i)クレーム33発明に対応する図18及び19に示されるものに含まれるスケッチをC氏が描いていた。そして、C氏が長くY氏とクレーム発明に関して共同で開発してきた。さらにY氏の法廷での証言は証言録取におけるものと相違しており、事実と矛盾する点があり信用がおけない。
クレーム33についてC氏は共同発明者である。
ii)クレーム47について、C氏のスケッチを提出したが、クレーム47に対応する図面とは異なるものであった。クレーム47はミーンズクレームであるので、112(6)を適用し、明細書開示の均等物を考慮に入れる必要がある。
広いミーンズクレームの内の一実施態様がスケッチに描かれていたという事実から、その広いクレーム発明に寄与したとすることはできない。しかし、Y氏はC氏が広いクレーム範囲の内の一態様の実施化をしたに過ぎないということを示せなかった。
クレーム44についてもC氏は共同発明者である。
2)訴訟に協力してもらうのに金銭的優遇をするのは、一般的に行なわれていることである。
3)ライセンスの範囲
特許権者であるかどうかと、発明者であるかどうかとは区別して考えるという判決(原則)がある。が、発明は発明した人に推定的に所有されているとの立場を採る。
共同発明の場合、それぞれの発明者は特許発明全体を所有する。それぞれの発明者が寄与した発明だけを所有するものではない。
C氏はクレーム33及び44のみの発明者であるが、すべてのクレームの特許権者である。
ライセンス契約は州の契約法に基づいて解釈される(法律問題である。)。
契約の規定では"C氏が関与した発明"及び"including trocars"との記述があった。"including"は要素の限定をしない用語であること及び契約書全体の記述から、C氏は特許全体をライセンスしたと解釈できる。
4)ライセンス期間
特許権の共有者の一人は単独で遡及的ライセンスができるが、他の共有者は依然として、ライセンス以前の損害賠償の請求権をそのライセンサーに対して持っている。
しかし、訴訟は共有者全員によって起こされなければならない。共有者の一人は損害賠償などの請求を阻止するために自発的に原告にならないことができる。
*
Indium Corporation of America v. Semi-Alloys, Inc.
(事実) S社は3つの特許を所有していた。そして、I社などに対して、S社は「有用な特許権を持っている。もし興味があればライセンスを与える」旨の手紙を出した。
I社は、特許無効、非侵害で、S社を訴えた。
(判示事項)
S社の手紙には、侵害物の特定はなく、侵害に対しては権利行使するといった脅しも含んでいない。確認の訴では、被告が原告に対して権利行使するという脅威を与えたということがなければならない。
I社とS社との間には争点がない。
*
Arrowhead Industrial Water, Inc. v. Ecolochem, Inc.
(事実)
E社は特許権を所有し、訴外の第三者に対して訴訟を起こしていた。E社はA社の顧客であるVP社に、A社はE社の特許権のライセンスを受けていないから、VP社のプロセスの使用は直接侵害である。E社は特許情報をVP社に与えることができる旨を手紙した。
VP社はA社に特許補償を求め、A社はそれに同意した。
E社はA社にA社の特許プロセスをE社は使用しているようである。もしそうなら、すぐに止めるように通達した。
A社はE社に対して特許無効の確認判決を求めて訴えた。
(判示事項)
確認判決を求める場合には、両者間に争いが無ければならない。
争いがあるか否かは次の基準で判断される。
1)権利者が非権利者に対して侵害訴訟を起こすであろう不安を起こさせるような行動を起こしていたか否か。
2)非権利者が実際に製品を製造し、または製造の準備を行なっていたかどうか。(製品は特許権を侵害しているかもしれないと思われるものである。該製品が特許侵害していることを立証する必要はない。権利者が訴えるであろう製品の存在の立証をすればよい。)
C.何時訴えるか?
35USC286条(損害賠償請求の時効)
訴状または反訴提出6年前についての補償は求められない。
政府に対する特許侵害の賠償請求訴訟においては、政府の担当部門に対して賠償を要求した日からその賠償要求を拒否する旨の通知がされた日までの期間は、前記6年の期間に算入しない。
35USC287条(損害賠償請求の制限及び他の補償、特許表示と警告)
A. 原告
1.必要書類
裁判管轄
請求
判決の要求
陪審審理の要求
2.書式
特許公報
3.規則12
Rule11(訴状のサイン、代理、sanction)
Loctite corporation v. FEL-PRO, Inc. and Felt products Mfg. Co.
Vista Manufacturing Inc., v. TRAC-4 Inc., et al.
A.応答期間 規則12
B.必要書類
認否
反論
特許無効
特許権行使不能
非侵害
反訴(カウンタークレーム)
Patent misuse 権利乱用
Unfair competition 不正競争
Antitrust 独禁法
Rule12(Pleading手続)
American Technical Machinery Corporation
v.
Masterpiece Enterprises, Inc., Norris Machine Co., Inc.,
Percy Dieffenbach and Alfred Norris
A.C. Aukerman Company v. R.L. Chaides Construction Co.
ラチェス(Laches)と衡平法禁反言(Equitable Estoppel)
・ラチェス
1.ラチェスは35USC282下の裁判で争える。
2.ラチェスが成立する場合は、提訴前に特許権者の損害賠償請求を制限される。
3.ラチェス
判断要素
1)特許権者が提訴の遅れについて理由及び釈明ができたか。
2)侵害者が特許権者が権利行使しないであろうとの先入観を持ったのがその遅れに帰するか否か。
4.ラチェスの推定
侵害を知った日から6年以上もの間、提訴しなかった場合は、ラチェスが推定される。
5.推定は立証責任を転換し、説得する責任がない。
・衡平法禁反言
1.禁反言は35USC282下の裁判で争える。
2.禁反言が成立する場合は、特許権者の請求は制限される。
3.次の3要素が必要である
1)侵害者に特許権者が権利行使しないと推測させるような行為を特許権者が行なった。その行為は、黙認、明言あるいは行動を含む。
2)侵害者がこの行為に依拠した。
3)特許権者が権利行使したら侵害者は損害を被るであろう。
4.禁反言についての推定はない。
判断基準
ラチェスと衡平禁反言は
"prepondenance of the evidence standard"で判断する。
Rule8(Pleading一般規則)
35USC282(特許有効の推定)
*CounterClaim
Walker Process, Equipment, Inc.
v.
Food Machinery and Chemical Corporaton(147USPQ404)
Patent Misuse v. sherman法(Antitrust)
(Fraud) Unfair competition
IV.Preliminary Injunction(仮差止)
A.制定法
原則
目的及び方針
B.仮差止の検討因子
合理的勝算
回復不能な損害
衡平のバランス
公益
C.仮差し止めの問題点
D.特許事件におけるTRO
35USC283(差し止め)
衡平の原則
Smith International, Inc. v. Hughes Tool company(718F2d1573)
(事実)H社は特許権者、S社の副社長はH社の特許権の存在を知りつつ、それと同様のものを作るように支持し、それを製造販売した。
S社はH社特許を侵害しているが、H社特許は無効であるとの訴を起こした。H社は特許侵害で仮差止請求の反訴した。地裁で特許無効判決が出たが、高裁で棄却差戻しになり、地裁で特許有効だが仮差止請求は棄却された。H社は控訴した。
(判示事項)
特許の有効性及び侵害が明らかで、その侵害が継続することによって回復不能な損害を生じる場合は、仮差止の決定をすべきである。
侵害の大きさ"Extent of infringement"の証明は損害賠償請求の時に要求されるが、仮差止請求では不要である。
H.H. Robertson, Company
v.
United Steel Deck, Inc. and Nicholas J. Bouras, Inc.(820F2d384)
・特許侵害に対する仮差止処分を求める場合は次の4項目を示さなければならない。
(1)その訴訟において事実上勝訴する可能性に理由がある。
(特許が無効ではない立証及び侵害されていることの立証の成功に蓋然性がある)
"a reasonable probability of eventual success in the litigation"
(2)補償が無ければ、訴訟中に回復不能の損害が生じるであろう。
"the movant will be irreparably injured pendente lite if relief is
not granted"
(3)差止処分の成否が他の関係者に損害を与える可能性がある。
(処分による原告及び被告の損害のバランスを考慮する)
"the possibility of harm to other interested person from the grant
or denial of the injunction"
(4)公益への影響"the public interest"
・過去の侵害と将来の侵害とを分けて考えるべき、過去の侵害に対しては金銭的補償しかできない。将来の侵害に対しては金銭による比較ができない。
仮差止処分の決定には、無価値な特許に好ましくない価値を与えることになる危険をはらんでいる。
・特許権の存続期間が残り少ないことが本件では考慮された。
T.J. Smith and Nephew Limited
v.
Consolidated Medical Equipment, Inc.
and Avery International Corporation(821F2d646)
仮処分を得るためには、(1)勝訴の可能性(2)回復不能な損害(3)辛苦のバランス(4)公益への影響を示す必要がある。
(1)は特許有効性と侵害を示す。
(2)は(1)の立証に成功すれば、推定されるが、この推定は反駁可能である。
本ケースでは、N社が差し止め請求するまでに15カ月間放置していたこと及びN社が他人にライセンスをしていたことがirreparable
harmの主張と食い違いということで推定が否定された。
(3)と(4)については本ケースでは(1)と(2)が立証されていないので考慮されなかった。
Lambton Manufacturing Ltd. v. Young(27USPQ2d1780)
仮差し止めの4条件+
1)Likelihood of Success on the Merits :特許有効、侵害あり
2)Irreparable Harm :1)から推定
3)The balance of Hardships :LよりYに辛苦あり
4)Impact of the Injunction on the Public Interest :最小
5)Security :本件では保証金として$1000を権利者に要求した。
(Rule 65 of the Federal Rules of Civil Procedure)
A. 目的
原告− 侵害行為、損害額 の発見
被告− 特許無効理由、権利行使不能理由 の発見
B. 対象
1. 訴訟事件に関連する事項
2. 関連特許、外国対応特許、侵害品の商業的成功、ライセンス、他の発明、Public
UseとOn Sale
C. 手続
1. Federal Rules
Discovery requests - interrogatories(尋問書)
depositions(証言録取)
document requests(文書要求)
Third Party discovery - subpoena(召喚)
2. Local Rules
3. Abuses and safeguards
原告(Offensive) - motion to compel
被告(defensive) - motions for protective orders and sanctions
Rule26
Discoveryの手続規則
*Discovery Scope(relevant to the subject matterの解釈)
Chubb Integrated Systems Limited v. The national Bank of Wahington (103F.R.D.52,
D.C.D.C.1984)
1)販売情報
販売情報のうち、コマーシャルサクセスに関係する情報は開示しなければならない。
特許無効の理由として103非自明性の判断において、セカンダリーミーニングではあるがコマーシャルサクセスが考慮される。
販売情報には、販売量、顧客の数、マーケットシェアなどのコマーシャルサクセスに関係する情報が含まれている。
2)特許性に関係する情報
発明者は英国特許出願日の利益(優先権のことかな?)を与えられた。被告は、これに関する情報を要求した。
優先権についての情報は特許性に係わるものである。特許無効は本訴においてIssueされているので、その情報は開示しなければならない。
発明者は、関係がない情報であるとの反論に加え、繰り返し(repetition)と負担(burdensomeness)を主張した。すなわち、被告は英国特許の調査において情報を得ているから、あえて原告から情報を開示する必要はないというものであるが、拒否された。
3)被告の侵害を知った際の状況をしめす情報
原告が被告の侵害を知ってから提訴するまでの経過は、ラチェス(理由の無い遅延など)や、エストッペルの立証に関係する。
従ってこれらの情報は開示しなければならない。
Truswal System Corp. v. Hydro-Air Engineering, Inc. (813F2d1207)
(事実)
T社はG社を特許権侵害でフロリダ南部地裁に提訴し、DiscoveryにおいてH社の販売情報を要求した。H社はこれを拒否し、地裁は拒否を認めた。
T社はCAFCに控訴した。
(判決)
地裁の判決を取り消し、差し戻す。
H社は販売情報の開示の不合理性、非道性を立証していない。
Western Electric Co. Inc.
v.
Piezo Technology, Inc.
v.
Donald QUIGG, Assistant Secretary and Commisioner of Patents and Trademarks
(860F2d428)
(事実)
W社はP社を特許侵害でフロリダ中部地裁に提訴した。P社は再審査を請求したが、特許された。そこで、P社は再審査の際に不衡平行為があったとの反論をした。P社はこの立証のために再審査時の審査官に供述を求めた。
しかし、審査官は特定の質問に回答しなかったので、P社はヴァージニア東部地裁に、回答を要求する訴えを起こし、これが認められた。
ところが、それでも審査官は特定の質問に回答しなかったので、法廷侮辱で長官を訴え、これも認められた。長官は控訴した。
(判決)
特許の審査は準司法的手続で行なわれ、審査官は準司法官であると考えられる。
過去の判例において、司法官に対する供述要求は、事実に関する質問に限られていた。
審査官が特許発明の技術分野の知識がどれだけあったかについての質問は審査官のメンタルな部分(特許すべきと思考した課程)を暴くことになる。
不衡平行為の立証を目的としており、特許無効の立証を目的としていないので、審査官の先行技術に関する知識は無関係である。
従って、地裁判決を棄却する。
VI.Patent Owner’s Case−In−Chief
A. クレーム解釈
1. 原則 通常の意味でクレームの文言を解釈する。
2. 審査経過及び他の限定要素
3. 当該技術分野の技術水準
4. Claim differentiation(独立クレームは従属クレームよりも広い範囲をカバーしているという推定)
5. ミーンズクレーム
6. ジュリー(陪審)の関与
*クレーム解釈
E.I. Dupont de Nemours & Co. v. Phillips Petro. Co. (849F2d1430)
A) 明細書に記述されている2種の"extraneous" limitationをクレームに読み込んで、特許を有効とした地裁の判断は誤りである。
B) 審査経過を参酌すべき。審査経過の参酌は、均等論の範囲を限定する審査経過禁反言とは異なる。
1)密度0.95の上限を"0.9451 to 0.9550"であるとliteralに解釈した地裁判断は誤り、審査中に0.954を記述した引例と区別するために出願人は"between
0.950 and 0.955"はクレームに含まれないと主張している。
2)結晶化度の上限70%を"70 ±10-20%"とliteralに解釈したのは誤り、審査中に38%を記述した引例と区別するために"40%
to 70%"とした。
だから、文言侵害ありとした地裁判断は誤りである。
均等論侵害を考慮すべきであるから差し戻す。
・故意(Willfulness)
故意の判断において"preponderance of the evidence"の基準を適用するのは誤り、損害賠償額を増やすには(故意の存在を主張するには)"clear
and convincing evidence"の基準を適用しなければならない。
*クレーム解釈
Loctite Corp. v. Ultraseal Ltd., et al. (781F2d861)
(争点)
"anaerobic"の解釈。
酸素非存在で行なうことに争いはないが、次の点に争いがある。
1)反応温度は室温に限定されるのか?
2)反応のためにメタルとの接触(存在)が必要なのか?
3)素早く且つ自発的に反応することが必須なのか?
(判決)
審査経過、明細書を参酌すると、
"anaerobic"は、酸素非存在下に、素早く且つ自発的に反応することを意味し、温度の限定、メタルの存在を必要としない。
*誰がクレーム解釈するか?
Markman et al. v. Westview Instruments Inc. et al. (134LEd2d577)
(事実)
クリーニング店のInventryの制御及び通報システムに関する特許をM社が有し、W社を侵害で提訴。
特許クレーム中の"Inventory"の解釈として、M社は"article
of clothing"を含む必要がないと主張し、W社は必ず含むと主張した。
W社のイ号は伝票と金の管理のみをするシステムであった。
M社特許の明細書には衣類の処理、所在等のクリーニング行程での流れ、伝票、入金等の管理をするシステムが開示されていた。
陪審は侵害の評決をしたが、地裁の判事はJMOLでクレーム解釈を行い、W社の解釈を採用し、非侵害の判決を下した。M社はCAFCに控訴、その後、最高裁に上告した。
(争点)
クレーム解釈は判事(裁判所)が行なうべきか?
(判示事項)
クレームの解釈は法律問題(JMOL)である。従って、地裁では判事が審理し、控訴審ではdenovo(覆審)で審理される。事実問題であれば陪審が審理を行なうことができ、控訴審ではSubstantially
evidenceの基準で審理される。
クレーム解釈のための資料
1)クレーム、2)明細書、3)審査経過記録
外部証拠(専門家、発明者の証言、辞書、論文など)は技術用語の理解には有用かもしれないが、クレームの文言の意味を変えることはできない。
*内部証拠と外部証拠
Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc. (907F3d1576)
(事実)
V社は、はんだ付けの方法特許を有し、C社を特許侵害で提訴。
特許は最終加熱ゾーンにおいて、はんだがリフローするのに十分な時間、基板を加熱することにより電子部品を「はんだリフロー温度」以下に維持しながら部品をはんだ付けすることを特徴としていた。
「はんだリフロー温度」の解釈として、V社は「最高リフロー温度」であると主張、一方C社は「液化温度」であると主張した。
地裁は、専門家証言(外部証拠)に依拠してC社の解釈を採用し、非侵害の判決を下した。
(争点)
クレーム解釈において、外部証拠に依拠することが正しいか否か?
(判示事項)
クレーム解釈においては、内部証拠、すなわち、クレームの記載、明細書の記述及び審査経過をレビューする。1)クレームの用語を通常の意味で解釈する。2)通常の意味と異なる意味で権利者が使っているか否かの判断のため明細書を分析する。3)そして、プロセキューションヒストリを考慮する。
この解釈手順によってもクレームの用語が明確でないときに限って外部証拠に依拠できる。
本件では、内部証拠のみで「はんだリフロー温度」の意味が明らかになるので、外部証拠に依拠するのは誤り、V社の解釈を採用すべき、従ってC社は侵害。
*Means plus function
Valmont Industries Inc. v. Reinke Manufacturing Co., Inc.(25USPQ2d1451)
・112条(6)の解釈
第2文は制限条件として働く。従って出願人は明細書中にミーンズプラスファンクションに対応するなんらかの構成を記述しなければならない。また、ミーンズプラスファンクションを、明細書中に記述された構造、材料もしくは作用またはそれらの均等物までの範囲に制限するように解釈しなければならない。(均等論というよりは逆均等論のように働く
・文言侵害の要件
明細書中に記載されたミーンズプラスファンクションに対応する構成の構造、材料もしくは作用と、同一または均等な手段を有し、その手段はクレームで定義されたものと同一の機能を果たさなければならない。
・均等論侵害の要件
均等論の下での均等は、非実質的変更"insubstantial change"の考え方を含む。
均等論においてはいわゆる3要素テストが含まれる。
・均等論における均等と112条(6)の均等
両者はともに、非実質的変更があるか無いかを考慮する点で共通する。しかし、両者はその趣旨及び目的が異なる。
112条の均等の決定には、3要素テストを含まない。112条の均等では明細書に記述された構造と、訴えられた物との比較を唯一の考慮対象としている。
B.侵害判断
1.二段階分析
クレーム範囲の決定 〜法律問題〜判事 〜de novo
イ号とクレームとの対比〜事実問題〜陪審または判事〜clearly erroneous
2.立証基準 〜 Preponderance of evidence 51%の確からしさで勝つ
3.文言侵害
4.均等論侵害
仮想クレーム(均等論を適用して拡張したクレーム)
Caterpillar Tractor Co. v. Berco, S.p.A. (714F2d1110)
(事実)
C社はキャタピラー用のシールについての特許(CIP出願)を有していた。そのシールは細い"Thinner"ヒンジとその両端にフランジが接続されていた。
B社はC社特許を避けるために一方のフランジの厚みをヒンジより厚くしたシールを製造販売していた。
地裁は、B社シールは侵害と判決した。B社は控訴した。
(判旨)
侵害判断では、(1)クレームの解釈、(2)被疑製品とクレームとの対比を行なう。
(1)クレーム1と19
クレーム1と19は"thinner"ヒンジと規定されている。この"より細い"の比較対象は両端に接続されたフランジである。B社製品はフランジより細いヒンジを有しないので文言侵害はない。
B社製品は実質的同一の構造を持ち、実質的に同一の方法で、実質的に同一の結果を得ることができる(3要素テスト)。従って、均等論侵害である。
B社は審査経過禁反言を主張し、均等論によるリキャプチャーは制限されると反論した。が、クレームは112条の拒絶理由を回避するため(先行技術を回避するためのものでない)に補正されたものであるから、禁反言は存在しないと判示した。
(2)クレーム10
クレーム10は"thin"ヒンジと規定されている。B社はクレーム10は112条で拒絶された親出願のクレーム2と実質的に同じであり、クレーム10は112条で無効であると主張した。が、CIPによって"thin"は明確に明細書中で定義された、すなわちヒンジの厚みは最小で0.040インチ、最大で0.080インチと記載されたので、112条は満たしているとされた。
C社製品はクレーム10を満たしているので文言侵害である。
(一部反対の意見)
クレーム1と19は102条と112条の拒絶理由を受けていた。CIP出願で最初、ヒンジは両フランジより細いという文章をクレーム1及び19で使っていた。審査において出願人は(1)細いヒンジは先行技術のものとは違う、(2)ヒンジは約0.040インチで両端のフランジはそれぞれ0.100インチ及び0.130インチであると主張している。だから、クレーム1と19については禁反言を適用すべきである。
*均等論
Graver Tank & Mfg. Co. v. Linde Air Products Co. (70 S.Ct.854)
(背景)
リンドの特許はアルカリ土類金属ケイ化物を使用する。
グレーバータンク社はマンガンのケイ化物を使用する。
(判示事項)
1)侵害の訴求は、まず、クレームの文言で判断する。
2)文言だけの判断では、特許権が無意味となる。すなわち、発明の構成の重要でない部分に変更を加えた模倣物を製造販売することを許すことになる。
3)Function/way/resultが同一ならば均等論侵害を訴求できる。
4)パイオニア発明だけでなく、改良発明にも均等論は適用できる。
*均等論とエストッペル
Warner-Jenkinson Co., Inc. v. Hilton Davis Chemical Co.(41USPQ2d1865)
(1)均等論
均等であるか否かは、特許の分脈、先行技術、事件の特殊状況に照らして判断されねばならない。置換された成分が使用された目的や、その特性、機能を考慮しなければならない。重要なことは、当業者が置換可能性を知っていたか否かである。
(2)判断手法
発明全体ではなく、クレームの個々の要素に適用しなければならない。
特許クレームの個々の要素と同一または均等である要素をイ号が有しているか否かが重要である。判断手法として、3要素テストによるのか、非実質的差異によるのかは、個々のケースに応じて決められるべきものである。
(3)審査経過禁反言
審査中の補正は特許性に関する限定であると推定される。この推定は禁反言を形成する。権利者はその補正が特許性に関するものでないことを立証する機会が与えられ、立証できれば、禁反言は働かない。
(4)判断基準
特許発効時というよりは侵害時とすべきである。
*均等論
Litton System Inc. v. Honeywell Inc. (39USPQ2d 1321)
(事実)
再発行特許Re32849には"Kaufman type"(KF)のイオンビームがクレームされていた。
H社は"Hollow cathode"(HC)イオンビーム及び"Radio frequency"(RF)イオンビームを実施していた。
(判決)
(HC)及び(RF)は文言侵害はないが、機能、方法及び結果が実質同一であるから均等論侵害であるとの判決。
上告され、最高裁は差し戻し判決。1998年4月CAFCは地裁に差し戻した。
Hughes Aircraft Co. v. U.S. (39 USPQ2d 1065)
(事実)
USの宇宙船(S/E)はオンボードコンピュータ上に瞬間回転速度保持手段を有し、内部同期により制御する。
H社の特許は瞬間回転速度の指示を地上に発信し、地上に実行のための制御信号を受信する手段を設けており、外部同期により制御する。
(判決)
均等論侵害ありの判決。上告され、最高裁は差戻し判決、
1998年4月CAFCは侵害ありの判決をした。
Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co. (37 USPQ2d 1161)
(事実)
F社はロッドレスシリンダの特許(シールリングが4つ)を所有。S社はシールリングが3つで、リングの配列が異なるシリンダを製造していた。
(判決)
均等論侵害ありとされた。最高裁差戻しでCAFCで審理中
*GM社のAMステレオラジオは特許権非侵害
Leonard R. Kahn v. General Mortors Corp.(Decided: Feb. 3, 1998 CAFC)
(要約)
この事件は9年間争われ、その間にCAFCに3回控訴され、12のOpinionが出されていたが、このほど、CAFCはKahn特許をGM社は侵害していないと判決した。Kahnは弁護士による代理なしで控訴し、AMステレオラジオの歪低減回路をクレームした特許が文言侵害又は均等論侵害されていると主張した。CAFCはGM社のAMステレオラジオは実質的に異なる機能(Function)を有するとした。GMは特許無効を主張していたが、これはKahnに退けられた。先行技術の組合せで自明であるとは言えないと判決した。
(事実)
K特許は、L+R信号をアンプに入力し、そのアンプ出力は、周波数倍増器からの出力とともに加算器に入力され、その加算器出力は歪みを減らすためにL−R信号の反転振幅変調に使われる。
GMラジオは、envelope detectorからのL+R信号と、demodulaterからのL+R信号プラスcos()信号とを、比較器に入力し、比較器出力信号は反転変調器に入力される。
(判示事項)
1) K特許のクレーム中の"means for deriving a distortion cancellation
component from the stereo sum signal component"は112(6)によって解釈される。この際に、そのmeansが明細書中のどのstructureに対応するかを決定しなければならない。しかし、明細書のStructureはGMラジオのstructureと異なる(周波数倍増器及び加算器が無い)。比較器は増幅器、周波数倍増器又は加算器の均等物とは言えない。
均等論は、クレームのエレメント毎"element by element"に適用される。"As
a whole"での解釈は許されない。3要素テストは有益で、本件では3要素とも不一致であった。
2) 自明性は、"as a whole"で判断する。特許発明の構成が別々の先行技術文献に記載され、その構成を組合せることを教示または提案する記述がなければ非自明性であるとの主張は成り立たない。
VII.Accused Infringer’s Case−In−Chief
A.特許無効の抗弁
1.実質同一 (102)
2.自明 (103)
3.その他
a.記載要件
b.公知文献
c.販売、使用
B.非侵害の抗弁
1.イ号
2.クレーム範囲の縮小
a.包袋禁反言
b.先行技術
3.逆均等論
*Secret use
W.L. Gore & Associates v. Garlock, Inc. (721F2d1540)
(事実)
1969年の夏にGoreは特許に係る機械でPTFEテープを製造し、販売した。その後、そのテープ製造機械の発明を出願し、特許を得た。
GoreはGarlockを特許侵害で訴えたので、Garlockは1969年のテープの製造はPublic
useにあたるから102条で特許無効を主張した。
(判示事項)
第三者の秘密使用によっては新規性は喪失しない。
本人の秘密使用によって、新規性は喪失する。
*On Sale
UMC Electronics Co. v. United States (816F2d647)
On saleの三要素テスト(In re Corcoran, 640 F.2d 1881)
1)クレームされた完成発明が販売申出をした物に具現化されているか又は自明にされていなければならない。
2)発明が実施可能であり且つ商業化可能であることを証明するために十分な試験がなされていなければならない。これは、販売申出が、発明を完成するまでできないという原則を証明するものである。単に着想しただけでは不十分である。発明の実施化を必要としない。発明の開発課程、発明の種などの発明が販売又は販売申出される状況全体を考慮する。(発明完成には「発明の実施化」を必要とするという反対意見もある。)
3)販売は、実験のためというよりは、主に利潤を求めて行なわれたものでなければならない。
*On Sale Bar(102(b))
米国最高裁は下記判決を支持し、On Sale Barに発明の実施化は必要ないことを確認した(Mar.
9, 1998 S.C)。
Wayne K. Pfaff v. Wells Electronics, Inc.(Decided Set. 8, 1997 CAFC)
(事実)
1980年11月 テキサスインストルメント社(以下、T社という。)はSocketの開発をP氏に持ちかけた。T社との打ち合せ後、P氏はSocketについてのコンセプトを示すスケッチを、さらにその後、ソケットの詳細な技術図面を作成した。
1981年2又は3月に、P社は、特注器具を製作するW社に図面を送付した。
1981年4月8日、T社の子会社D社はP氏の会社にソケットの購入注文書を発行した。この注文書は1981年3月17日の口頭注文の確認をするものであった。
1981年7月、P氏はW社に下請負させ、W社からSocketを受け取った。
その後、耐久試験を行い、問題ないことを確認して出荷した。
1982年4月19日、P氏は特許出願をし、その後、特許を取得した。
P氏はW社を特許侵害で提訴し、地裁は、一部のクレームは先行文献と実質同一ゆえ無効、クレーム発明はOn
Saleではない、W社の製品は侵害と判決した。両者とも控訴した。
(争点) On Sale BarにおいてReduction to practiceが必要か否か?
(判示事項)
102(b)は特許権の存続期間の実質的延長を阻止するために制定されている。発明がOn
saleか、否かの判断については、UMC事件の「販売及び申出の状況全体を考慮して判断する」との先例がある。地裁は基準日(出願日の1年前)に発明製品(Physical
embodiment of the invention)が存在していない、Reduction to PracticeされていないのでOn
saleではないとした。
しかし、102(b)のOn Sale Barの判断においてReduction to Practiceは必要がない。発明者が顧客に注文され得るまたは注文された製品を持っていると考えているかどうかがOn
Saleに要求される。
(判決)
P氏は発明を示す図面を作成し、製作器具を準備させるために、その図面をW社に送付している。製作器具とは製品を製作するための押出ダイ、型、リベット等をいう。
本事件は機械分野の発明であり、器具が揃えば、それらを組み立てるのは容易であった。従って、基準日前にSocketは実質上完成していた。
Socketのプロトタイプを製作していなくても、P氏は既に発明が機能することを確信していた。耐久試験は、Socketの耐久性を調べるものであった、Socketが機能するかどうかを確かめるものではない。耐久性は商業的要件であって、発明完成の要件ではない。
従って、P氏の発明は基準日前にOn saleされていたので無効。
*非自明性103、特許権有効の推定
American Hoist & Derrick Co. v. Sowa & Sons (725F2d1350)
(事実)特許権者A社がS社を特許侵害で提訴し、S社は特許無効で反訴した。
(判示事項)
282条は登録特許が有効であると推定されることを規定している。有効性にattackする者が特許無効を証明する責任がある。無効の証明には明白な説得力ある証拠を示す必要がある。
特許庁が考慮した証拠に基づいて特許権が有効であるということは尊重するが、特許庁が考慮していない証拠に基づいて特許権が有効であるということに対してそのような尊重はしない。
裁判所は特許の有効性にかかわる全ての証拠を考慮に入れる。
A社特許は先行技術から自明ゆえ、特許無効。
*Best mode
Chemcast Corp. v. Arco Indus. Corp. (913F2d923)
ベストモードの開示はクレームの範囲について行なう。
単に発明の作り方、使い方を示すだけではベストモード開示要件を満たさない。
たとえ、ベストモードの開示内容にトレードシークレットが含まれていたとしてもそれを開示しなければならない。
ベストモードが開示されたか否かの判断では、当該技術分野の技術水準が考慮される。
ベストモードであるか否かの判断では、
1)発明者が米国出願時(優先日ではない)に他のいずれよりも良いと考えるクレーム発明の実施モードを知っていたか?
2)好適なモードを考慮した事実があるときにそれを隠したか否か?が考慮される。
C.権利行使不能の抗弁
1.不衡平行為、詐欺行為、
2.誰の行為か?
3.規則56
4.バランステスト
a.意図
b.重要性
5.過失のある意図
a.重過失だけでは不十分
b.行為パターン、不衡平行為の推定
*Fraud
American Hoist & Derrick Co. v. Sowa & Sons (725F.2d1350)
materialityとIntent
materialityのテスト
1)Objective "but for"
2)Subjective "but for"
3)"but it may have been" and
4)PTO rule 1.56(a), i.e., whether there is a substantial likelihood that
a reasonable examiner would have considered the omitted reference or false
information important in deciding whether to allow the application to issue
as a patent.(materiality=道理のある審査官が特許するか否かを決めるのに重要と考えるであろうもの)
materialityであるか否かは"intent"とのバランスを考慮して決められる。
騙そうという意図が十分で有れば、materialityは低くてもよい。
materialityが高い場合は、悪意で開示しなかったと推定されやすい。
旧規則56と新規則56
*Inequitable Conduct
J.P. Stevens & Co., Inc. v. Lex Tex Ltd., Inc. (747 F.2d 1553)
コモンローのフロードの要件は
(1)重要事項についての偽りの陳述、不当表示
(2)騙す意図、意図と同等になるような結果について無頓着な精神状態
(3)不当表示を誘引した者、騙された者による不当表示に対する正当な信任
(4)不当表示に対する信任から生じる、騙された者への損害。
*Intent
Kingsdown Medical Consultants v. Hollister (863 F.2d 867)
(事実)
K社は、親出願の審査で旧クレーム50が112条の拒絶を受けたので、補正をした。新クレーム50は許可されうるとの結論を得た。
その後、親出願のクレームと追加のクレームを含む継続出願を行なった。このとき、出願人は継続出願のクレームのうち、親出願審査において許可されたクレームと継続出願クレームとの対応表を提出した。
ところが、この対応表では旧クレーム50に相当する継続出願クレームが親出願審査で許可されたものとして列挙されていた。
継続出願は旧クレーム50を含んだまま特許された。(アメリカ争点)
K社の行為(間違ったリストを提出して特許を得た行為)は不公正行為になるか?
(判示事項)
不公正な行為とは、(a)特許庁を欺く意図の元に、(b)特許性に対して重要な影響を与える情報を開示又は非開示した行為である。
不公正行為は(a)故意と(b)特許性への影響について、明白かつ確信させる証拠により立証されなければならない。
・対応表の間違いは見過ごしやすい状況にあったので、K社の行為にだます意図はなかった。
・第三者の市場参入を阻止するために第三者のデバイスを含むクレームをすることに違法性はない。そのような意図はだます意図と関係ない。
・従前判決の中には"欺く意図"の立証のために、過失(Gross Negligence)を証明すれば十分であるとされていたが、それでは不十分である。
(reviewの基準)矢
不公正行為は衡平法上の争点としてトライアルコートに裁判権がある。
そして、CAFCでは"Abuse of discretion standard"でレビューする。
(不公正行為の効果)
出願審査中に不公正行為があれば、その特許権は権利行使不能になる。
*Materiality
Halliburton Co. v. Schlumberger Technology Corp. (925 F.2d 1435)
(事実)
特許権社Hは、出願審査中にNeufeldの存在を知っていたが提出しなかった。S社はNeufeldの不提出はInequitable
Conductになると主張
(判示事項)
審査官が引用した文献よりも重要でない文献またはCumulative累加的文献(例えば、ファミリー特許のうちの英語特許を提出した場合の他の特許、出願後の公開文献など)は提出する必要がない(Materialityがない。)。
materialityが全くないので意図について考慮する必要がない。
Siemens-Elema AB and Elema Schonander Corporation v. Puritan-Bennett Corp., Memorandum Opinion 86-1728-E(June 15, 1989)
Siemens-Elema AB and Elema Schonander Corporation v. Puritan-Bennett Corp.,
Slip Opinion 90-1178, -1203(Fed. Cir. 1991)
重要な先行技術のAGA特許をS社は知っていた。それを特許庁に開示しなかった。
AGA特許を克服してスェーデン特許を得た。AGA特許はmaterialである。
「審査官は、(スェーデン弁護士が気づいていた)サーボタイプの呼吸装置をまだ見つけていない」との手紙をスェーデン弁護士が米国弁護士に送っている。これはAGA特許を隠そうとする意図がある。
以上から、原告は不公正行為を行なったので、特許は権利行使不能とした。
*特許権共有者
Ethicon, Inc. and Inbae Yoon, M.D. v. United State Surgical Corp. and Young
Jae Choi(Decided: Feb. 3, 1998 CAFC)
(背景)
Yoon氏とChoi氏はシースイントロデューサー(trocars)の改良研究を18カ月間共同で行なっていたが、C氏はY氏が製品の上市に積極的でないことから、その研究から手を引いた。
同年、Y氏はC氏に通知せずに単独で、trocarsの改良発明を特許出願し、その後、特許権を得た。さらにE社にライセンスをした。
E社はU社を特許権侵害で訴えた。U社は訴訟の最中にC氏の存在を知った。C氏はU社に協力することになった。
U社は、C氏が共同発明者(特許権共有者)であり、そのC氏から遡及的ライセンスを受けているので権利侵害はないと主張した。地裁はU社主張を認めた。E社は控訴した。
(争点)
1)C氏は共同発明者か?
2)訴訟手続に対する協力で、U社がC氏に多額の支払いをするのは妥当か?
3)C氏のU社に対するライセンスが有効であるとして、そのライセンスは特許権全体に適用されるか?
4)遡及的ライセンスは有効か?
(CAFC判示事項)
1)共同発明
発行された特許に名前を載せた者だけが真の発明者であると推定される。C氏にはその推定が働かない。
C氏が共同発明者であるとのC氏自身の証言には、補強証拠が必要である。C氏が描いたスケッチが補強証拠になるかどうか?
E社はC氏がスケッチを描いたことは認めたが、それはY氏がC氏に発明を説明してそれを描き起こしただけだと主張した。
しかし、次の点を考慮すると、C氏が発明して描いたものであると考えられる。(1)Y氏は電気関係の専門技術知識を欲していた。(2)C氏は電気系専門技師であった。(3)Y氏はC氏に共同開発を持ちかけた。(4)打ち解けたビジネス関係にあった。(5)共同開発の期間の長さ、(6)C氏に対する報酬が無かった。(7)C氏のスケッチと特許発明との類似性。(8)C氏がY氏たちの"メンバー"から脱退したときの手紙。(9)さらにU社はC氏のスケッチは電気系専門家だけができる内容を含んでいると主張した。したがって、スケッチは補強証拠として十分である。
i)クレーム33発明に対応する図18及び19に示されるものに含まれるスケッチをC氏が描いていた。そして、C氏が長くY氏とクレーム発明に関して共同で開発してきた。さらにY氏の法廷での証言は証言録取におけるものと相違しており、事実と矛盾する点があり信用がおけない。
クレーム33についてC氏は共同発明者である。
ii)クレーム47について、C氏のスケッチを提出したが、クレーム47に対応する図面とは異なるものであった。クレーム47はミーンズクレームであるので、112(6)を適用し、明細書開示の均等物を考慮に入れる必要がある。
広いミーンズクレームの内の一実施態様がスケッチに描かれていたという事実から、その広いクレーム発明に寄与したとすることはできない。しかし、Y氏はC氏が広いクレーム範囲の内の一態様の実施化をしたに過ぎないということを示せなかった。
クレーム44についてもC氏は共同発明者である。
2)訴訟に協力してもらうのに金銭的優遇をするのは、一般的に行なわれていることである。
3)ライセンスの範囲
特許権者であるかどうかと、発明者であるかどうかとは区別して考えるという判決(原則)がある。が、発明は発明した人に推定的に所有されているとの立場を採る。
共同発明の場合、それぞれの発明者は特許発明全体を所有する。それぞれの発明者が寄与した発明だけを所有するものではない。
C氏はクレーム33及び44のみの発明者であるが、すべてのクレームの特許権者である。
ライセンス契約は州の契約法に基づいて解釈される(法律問題である。)。
契約の規定では"C氏が関与した発明"及び"including trocars"との記述があった。"including"は要素の限定をしない用語であること及び契約書全体の記述から、C氏は特許全体をライセンスしたと解釈できる。
4)ライセンス期間
特許権の共有者の一人は単独で遡及的ライセンスができるが、他の共有者は依然として、ライセンス以前の損害賠償の請求権をそのライセンサーに対して持っている。
しかし、訴訟は共有者全員によって起こされなければならない。共有者の一人は損害賠償などの請求を阻止するために自発的に原告にならないことができる。
VIII. Patentee’s Rebuttal Case(原告の反駁)
A. 特許有効の証拠としてのセカンダリーミーニング
1.商業的成功
2.長い間待望されていた事実
3.その他
B. 不衡平行為に対する反駁
1.過失のある意図が無いこと、善意 の証明
2.重要性が無いこと の証明
*商業的成功と103
Demaco Corporation v. F. Von Langsdorff Licensing Limited et al. (851F.2d
1387)
商業的成功のような二次的因子は、自明/非自明との結論を出す前に考慮しなければならない。
商業的成功(ライセンス、販売などの成功)は、特許権(技術的優位性)と因果するものでなければならない。特許権以外の因子(広告など)による成功は、二次的因子として考慮しない。
*長い間待望されていた効果
Eibel Process Co. v. Minnesota & Ontario Paper Co. (43 S.Ct. 322(1923))
E社の特許に係る紙製造機が、従来の製造機に比べ、良質の紙を早く生産できるという事実は新規性や有用性があることを示す強力な証拠となる。
IX. Attorney-Client Privilege と Work Product
A. 特許訴訟における原則
1.Attorney-Client Privilege
2.Attorney work product immunity
B. 責任〜保留情報
C. Breaking the Privilege
*Attorney-Client Privilege & Attorney work product
とFraud and Waiver
Hercules Inc. v. Exxon Corp. (434 F.Supp. 136)
(争点)1)社内弁護士と営業担当や研究者とのコミュニケーション、社内弁護士と社外弁護士とのコミュニケーションがAttorney-Client
Privilegeの適用を受けるか?
2)知的財産部弁護士の作成した書類(審査中の書類)がAttorney work productになるか?
3)審査中のFraudでPrivilegeは消えるか?該Fraudは犯罪目的か?
4)一部の書類の開示でPrivilegeは放棄されたか?
(判示事項)
1)Privilege
(Privilegeの目的)
秘密のコミュニケーションの不可侵性を保障することによって、クライアントと弁護士との間のコミュニケーション情報をすべて開示させることを目的としている。
(Privilege適用の条件)
1)Privilegeの適用を求めているものがクライアントである。
2)コミュニケーションをした相手が、(A)裁判所のBarのメンバー(弁護士)、あるいは該弁護士の指示で働く者、((B)法律家として行動する者は除く)である。
3)(A)クライアントによって、(B)他人の存在なしに、(C)(i)法律上の意見あるいは(ii)法的サービスあるいは(iii)法的手続の手助けを第一に保障する目的で、(D)犯罪の目的でなく、弁護士が知らされた事実に関するコミュニケーションである。
4)Privilegeがクライアントによって、(A)請求され、(B)放棄されていない。
・研究者と社内弁護士とのコミュニケーションが法的アドバイス等を含むものであれば、たとえ、商業的アドバイスが付随していても、適用される。
・Patent Agent はBarのメンバーではないから、通常は適用ない。しかし、Patent
Agentが弁護士の"Subordinary"であれば、適用ある。
・技術情報のコミュニケーションは適用されない。通常、技術情報は特許庁に誠実に開示することになっている。しかし、鑑定を求めるための技術情報である場合は適用ある。
2)Attorney work product immunity
(immunityの目的)
相手方弁護士の情報を保護することによって、訴訟における対審制度(当事者主義)を維持することを目的としている。
(work productの例)
・法的書類、ライセンス契約、譲渡契約などの下書き;
・鑑定書、特許権または特許出願の権利範囲や有効性に関するメモ;
・インターフェアレンスにおける相手方のポジションの評価又は分析;
・インターフェアレンスに関して社外特許カウンセル又は社内弁護士によって準備された、会議の要約を含むメモや内部書類、技術情報についてのコメントを除く法的検索、
・一方当事者の手続、例えば、特許出願審査などにおける書類〜特許性のあるクレームを考慮したもの〜は、原則としてimmunityの適用はない。が、その手続書類が将来の訴訟を第一に考慮されていたものであれば、immunityの適用がある。
3)審査中のFraudで、審査後の書類に関するPrivilegeの価値低下はない。
4)一般に、クライアントによる1又はそれ以上のPrivilegeの適用ある書類の自主的(不注意によるものであっても)放棄は、同じ弁護士と同じクライアントによる同じ主題についての全てのコミュニケーションに関するPrivilegeの放棄になる。
Privilegeの放棄は必ずしも同じ主題についての弁護士のメモのような書類のImmunityを放棄したことにはならない。
X.専門家
A.専門家の選択、専門家の役割
1.技術専門家 〜 社外専門家と社内専門家
2.法律専門家
3.損害計算の専門家
B.専門家証言
1.何時?
2.何を?
C.専門家証言のプレゼンテーション
XI.略式判決のモーション
A.特許事件における位置づけ
B.基準
C.戦略
Willi Moeller v. Ionetics, Inc. (794 F.2d 653)
略式判決
重要事実の真の争点がない場合、
法律問題についての判断をする場合に行なわれる。
略式判決を求められた者(被告)の立場で、証拠を検分し、推論や疑いがある場合は被告に有利になるように判断する。(「疑わしきは罰せず?」)
専門家
クレーム解釈は、法律問題であり、明確に解釈できるならば、内部証拠のみで判断する。外部証拠は内部証拠のみでは曖昧な場合に使用する。
専門家証言(外部証拠)を使うかどうかは地裁の裁量である。
Barmag Barmer Maschinenfabrik AG v. Murata Machinery Ltd.(731 F.2d 831)
略式判決を求められた者は、詳細な事実についての反論を少なくともすることによって、証拠の矛盾をしめさなければならない。
XII.公判
A.プレゼンテーション
1.侵害の有無?
2.特許有効?無効?
3.不衡平行為?
4.損害額?
B.陪審審理と判事審理
XIII. 損害賠償
A.損害賠償
1.法規
2.一般
3.実施料相当額の標準
4.遺失利益の標準
a.特許品の需要
b.置換可能な非侵害品の不存在
c.販売損失
5.Prejudgment interest
6.弁護士費用などの特別の補償を与えるための標準
35USC284(Damages)
35USC285(Attorney fees)
State Industries, Inc. v. Mor-Flo Industries, Inc. (883F2d1573)
(背景)
地裁はM社はS社の特許権を文言侵害していると判決し、次いで、賠償に関しては、S社の市場占有率は40%であるので、M社の販売の40%はS社の遺失利益であるから、M社はそれを賠償し、M社の販売の60%については合理的実施料3%をS社に支払えと判決した。故意侵害は認めなかった。
両者は損害賠償額及び実施料の争点について控訴した。
(判示)
・遺失利益を損害賠償として請求する基準としてDAMPテストが知られている。
すなわち、権利者は以下の4項目の立証責任がある。
1)特許製品に対する需要があったこと、
2)市場に受け入れられる非侵害代替製品が存在しなかったこと、
市場占有率
3)特許権者が需要を満たす製造および販売能力を有していたこと、
4)特許権者が得ていたであろう利益の額
Entire Market Value rule
特許に係る部品を含む製品全体の価額で利益額を計算する。特許に係る個々の部品に分けて価額を計算しない。ただし、製品が予備品、修理部品である場合は、それのみで計算する。
・実施料
侵害者の利益額によって決定しない。侵害開始時にライセンサーとライセンシーとが交渉によって決めるであろう額によって決定する。
Beckman Instruments, Inc. v. LKB Producter AB (892F.2d1547)
(背景)
L社はB社の特許権を侵害するチップを製造販売していた。L社とB社とは多くの争点について地裁で争った。B社の訴訟戦略はややいらただしいものであった。地裁はB社に30日以内に製品の破棄命令をしたが、B社は製品を米国外(フィンランド)に輸送した。B社の故意侵害は認められなかった。
そのため、地裁は、"Exceptional Case"を認定し、弁護士費用の全て、専門家証人費用及びコンサルタント料の支払いを命じた。
(判示)
弁護士費用等の支払いを認める要件
1)例外的(exceptional)な事件であること、
2)地裁が決定権をもつ、
3)弁護士費用がリーズナブルな額であること、そして
4)勝訴者(prevailing party)に与えられること、
・"Exceptional Case"の例
故意侵害
特許庁に対する不公平行為
訴訟中の間違った行為
いらだたしく、そして不正な訴訟手続
取るに足らない訴え
これらの行為がClear and convincing evidenceで支持されていることが必要である。
本ケースではL社の訴訟戦略のうち3例を挙げて、それらが苛立たしい行為に該当するとした。また破棄命令に対する違反があるとして、Exceptionalを認定した。
・リーズナブルな額
弁護士費用の支払いを認める285条の目的
(1)侵害者に対する懲罰的罰金を与え、侵害をさせないようにする。
(2)悪意による訴訟遂行、Gross injusticeひどい不正を妨げるようにする。
本ケースでは故意侵害はなかったので侵害をさせないようにするという目的は該当しない。
B社は破棄命令に違反したが、これは訴訟中の間違った行為(misconduct)に該当するに過ぎない。弁護士費用の全ての支払いを求めるのは誤りである。
Rite-Hite Corp. v. Kelley Company, Inc. (56 F.3d 1538)