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ジョージワシントン大学"Patent Law","TIPS"のまとめ(10〜14)

Apr. 27, 1998
菊間 忠之

(本稿は、私の大学受講ノートを再編集したものです。未熟者ゆえ、翻訳ミス、要約ミスなどがあるかもしれません。ご指摘、ご指導を頂ければと思っております。メールでご連絡ください。)

10.権利化手続(Prosecution)

・共同発明
Kimberly-Clark Corp. v. P&G Distributing Co.
(事実)赤ちゃんの使い捨ておむつ
1979年P&Gのブエル氏がインボードフラップ付きおむつの着想、製作を行なった。
1982年K−Cのエンロー氏が直立式弾性フラップ付きおむつを着想
1985年P&Gのローソン氏がインナーフラップ付きおむつの着想
1987年P&G出願
P&Gはブエル氏を共同発明者として追加補正し、特許を得た。K−Cは共同発明の要件を満たさないから無効を主張した。
(判示事項)
116条の共同発明の要件
1)物理的に同時に働かなくても、
2)同じ種類または程度の寄与がなくても、
3)すべてのクレームに寄与しなくても、   共同発明者になれる。
 他人の仕事と何も接触がない場合又は全く気づいていない場合は共同発明者になれない。共同発明者には少なくとも実体的な協力または関係があることが要求される。共同発明を構成するには個々の発明者が同一の主題について働き且つ発明的思考や最終結果に対しなんらかの貢献をする必要がある。
(その他)
 実験を補助しただけの者は共同発明者になれない。共同発明者の貢献がなければ効率、簡素化、経済性その他の利点劣ったであろうことが言える必要がある。

*誠実且つ善意な手続義務(欺く意図)
Kingsdown Medical Consultants, Ltd. v. Hollister Inc.
(863F2d867,9USPQ2d1384)
(事実)
 K社は、親出願の審査で旧クレーム50が112条の拒絶を受けたので、補正をした。新クレーム50は許可されうるとの結論を得た。
 その後、親出願のクレームと追加のクレームを含む継続出願を行なった。このとき、出願人は継続出願のクレームのうち、親出願審査において許可されたクレームと継続出願クレームとの対応表を提出した。
 ところが、この対応表では旧クレーム50に相当する継続出願クレームが親出願審査で許可されたものとして列挙されていた。
 継続出願は旧クレーム50を含んだまま特許された。
(争点)
 K社の行為(間違ったリストを提出して特許を得た行為)は不公正行為になるか?
(判示事項)
 不公正な行為とは、(a)特許庁を欺く意図の元に、(b)特許性に対して重要な影響を与える情報を開示又は非開示した行為である。
 不公正行為は(a)故意と(b)特許性への影響について、明白かつ確信させる証拠により立証されなければならない。
・対応表の間違いは見過ごしやすい状況にあったので、K社の行為にだます意図はなかった。
・第三者の市場参入を阻止するために第三者のデバイスを含むクレームをすることに違法性はない。そのような意図はだます意図と関係ない。
・従前判決の中には"欺く意図"の立証のために、過失(Gross Negligence)を証明すれば十分であるとされていたが、それでは不十分である。
(reviewの基準)
 不公正行為は衡平法上の争点としてトライアルコートに裁判権がある。
 そして、CAFCでは"Abuse of discretion standard"でレビューする。
(不公正行為の効果)
 出願審査中に不公正行為があれば、その特許権は権利行使不能になる。

*欺く意図(故意)
Halliburton Co. v. Schlumbereger Technology Corp.(17USPQ2d1834)
(事実)
 特許権社Hは、出願審査中にNeufeldの存在を知っていたが提出しなかった。S社はNeufeldの不提出はInequitable Conductになると主張
(判示事項)
 審査官が引用した文献よりも重要でない文献またはCumulative累加的文献(例えば、ファミリー特許のうちの英語特許を提出した場合の他の特許、出願後の公開文献など)は提出する必要がない(Materialityがない。)。
materialityが全くないので意図について考慮する必要がない。

*Materiality
A.B.Dick Company v. Burroughs Corporation(230USPQ849)
(争点)先行技術の非開示がInequitable Conductになるか?
(判示事項)
 重要性:審査官が出願に特許を許可するかどうかを決定するのに重要であると考えるであろうと実質的に見込みがある場合、そのような資料はMaterialityがある。
 故意:文献がMaterialityであると知っていたあるいは知っているべきであった場合に、それを開示しないのは故意を形成する助けとなる。

*Materiality
Molins PLC v. Textron, Inc.(33USPQ2d1823)
(事実)
1965-66年:英国M社は米国を含む各国へ方法発明とシステム発明の出願をそれぞれ行なった。
 米国以外の審査でM社のWhitsonは引例Wagenseilの存在を知った。米国以外の方法発明の特許は拒絶。米国では方法とシステムとが一緒になってCIP出願されていたので、WagenseilをPTOに開示しなかった。
 1983年:方法発明を削除し、システム発明について特許された('563)。
 1984年:Whitsonは退職した後、後任のHirshがWagenseilの存在を知った。規則501によりWagenseilを含む90の文献を提出した。被告関連会社請求の再審査においてWagenseilが引用されたが特許維持された。
 1986年:方法発明について特許された(410特許)。
(判示事項)
 引例がMaterialityであるか否かはreasonable審査官の基準で行なわれる。特定の審査官が再審査で拒絶理由の引例として依拠しなかった事実だけではその引例はMaterialityであるかないかを決定するものではない。
 特許性は国毎に異なるので、他国での審査でその引例が引用されたにも係わらず特許されたという事実だけをもって、本国でMaterialityがないことを意味するものではない。
 Materialityを故意(Intent)に提出しなかった場合は不公正行為になる。Intentの立証には直接的証拠を要しない、状況や事実などの間接証拠によって証明される。他国で引用され、それが重要であると認識しながら、米国にそれを示さなかったこと、提出が遅れたことは不公正行為にあたる。

*materiality
General Electro Music Corp. v. Samick Music Corp.(30USPQ2d1149)
(事実)S社は意匠特許出願の早期審査請求を行なった。該請求にあたってS社内弁護士は当該意匠に関する当業者に関連意匠について尋ねるとともに彼独自の先行技術ファイルを調査して、それを以て関連する先行技術の調査をした旨の宣誓書を提出した。(MPEP708.02では関連する先行技術について十分な知識を有する者が先行技術調査をすることを要求している。)
(判示事項)
*重要性 早期審査請求に付随して提出する宣誓書は、早期審査の主題と直接関係しないが、早期審査は出願人に慎重かつ完全な調査を要求する見返りに審査を早期に行なうというものであるから、要求される調査は審査官がその調査結果に依存できることが前提となり、早期審査の宣誓書における誤った記述は、もし早期審査が許可されるならMaterialityに関係する。
*故意 欺く意図を示す証拠が直接的にない場合でも、特許庁を誤認させる記述がされた書類の提出(状況)は欺く意図を形成する助けになる。

*ダブルパテント
Miller v. Eagle Mfg. Co.
同一発明者に、先行発明を包含する広い概念の発明に特許を与えることはできない。
(事実)
 一の出願にliftingとdepressingの効果及びlifting powerについて記述があった。発明者はこれを分割出願して前者を'767特許として、後者を'479特許として得た。
 侵害事件において被告はダブルパテントを理由に特許無効を主張した。
(その他)Oviousness double patentの拒絶に対してはTerminal disclaimerによって存続期間を親出願に合わせて拒絶理由を回避できた。出願日から20年の存続期間の規定になった現在でも、この方法は有効である。存続期間に関する効果は無くなったが、Terminal disclaimerによって、二出願特許の関係を密にし、一方が無効になれば、他方も無効になる効果が生じる。


11.特許後の手続(Post-Grant Procedures)

*再発行特許
Hewlett-Packard Co. v. Bausch & Lomb Inc.(882F2d1566,11USPQ2d1750)
 BL社はクレーム1〜9のXYプロッターに関する特許を所有していた。この特許はHP社の装置をカバーしていたが、クレームが広すぎるとの判断から、HP装置の詳細構造を取り込んだ新クレーム10〜12を追加して再発行特許出願した。
 PTOは再発行の要件であるエラーを特定していないとして拒絶した。
 BL社はDeclarationとAfidavitを提出して、再発行特許を得た。
 BL社はHP社を訴え、HP社は再発行出願の手続に問題があり特許無効、権利行使不能を主張した。
(判示事項)
251条の”Error”とは”手続上のエラー”と”特許のエラー”とがある。
”特許のエラー”
 本来、権利として与えられるべき範囲よりも狭くクレームしてしまった場合
 この場合、登録から2年を限度にクレームの拡張ができる。
クレームが無効理由を持っていることに気づいた場合、クレームが権利行使不能であることに気づいた場合、
 クレームを減縮できる。
”手続上のエラー”
不注意による事故、又は誤解による場合
(結論)
 宣言書、宣誓供述書は不完全であり、上記エラーを見いだせない。再発行特許のクレーム10〜12は無効、クレーム1〜9は有効である。再発行特許は権利行使不能

*再発行出願〜Recapture Rule
In re Clement(45 USPQ2d 1161,1997)
 特許権者は再発行出願で特許クレーム1中のいくつかの限定を外して新クレームを提出した。この限定は特許の審査において先行技術による拒絶を回避するために追加されたものであった。再発行の審査で該新クレームは拒絶され、審判でも拒絶され、CAFCも審決を支持した。
(判示事項)
 Recapture Ruleを適用できるかどうかの判断のための3段階テストを示した。
 1)特許クレームと再発行クレームから"aspect"を特定し、その"aspect"が広くなっているか否かを決める。
 2)再発行クレームの広い"aspect"が放棄された主題に関連しているかどうか決める。
 *放棄の意味
  放棄されたかどうかは、クレームの補正、出願人の主張などの審査経過を見て決める。
  a)補正をしたことがクレームの範囲に特許性がないことを認めたことであると思わせる証拠が無い場合には、その補正自体によってリキャプチャールールは働かない。
  b)特許権者の意図を証明するのに十分な証拠が無いとき、クレームの範囲の変更から"放棄を認める"意図を推定できない。
  c)先行技術と区別するために出願人が意図的に加えた限定によって、放棄の意図を推定できる。
  d)出願人が審査官の中間処理なくして行なったクレームのキャンセルは、放棄の意図を有しない。
 3)再発行クレームとキャンセルされたクレームを比較し、キャンセルされたクレームが補正されていたクレームを含むかどうかを考慮する。比較の手法として下記の手順を示した。
 (1)再発行クレームの権利範囲が、放棄あるいは補正されたクレームと完全に同じであるか、あるいは全ての側面において広い場合は、リキャプチャールールにより再発行クレームは拒絶される。
 (2)再発行クレームの権利範囲が、放棄あるいは補正されたクレームよりも全ての側面において狭い場合は、リキャプチャールールは働かない。
 (3)再発行クレームの権利範囲が、拒絶理由と密接に関連する側面において放棄あるいは補正されたクレームよりも広いが、拒絶理由と全く関係のない側面においては放棄あるいは補正されたクレームより狭い場合は、リキャプチャールールによって再発行クレームは拒絶される。
 (4)再発行クレームの権利範囲が、拒絶理由と密接に関連する側面において放棄あるいは補正されたクレームよりも狭くなっており、拒絶理由と全く関係のない側面において拡大している場合は、リキャプチャールールは働かない。
 (5)再発行クレームの権利範囲が、拒絶理由と密接に関連する側面において放棄あるいは補正されたクレームよりも狭くなっている部分と広くなっている部分があり、拒絶理由と全く関係のない側面において拡大している場合は、特許権者が審査中に放棄した主題に直接に関係する部分において再発行クレームが広くなっているか否かのバランスでリキャプチャールールの適用を考慮する。
 (6)再発行クレームの権利範囲が、拒絶理由と密接に関連する側面において放棄あるいは補正されたクレームよりも狭くなっている部分と広くなっている部分があり、拒絶理由と全く関係のない側面において狭くなっている場合は、特許権者が審査中に放棄した主題に直接に関係する部分において再発行クレームが広くなっているか否かのバランスでリキャプチャールールの適用を考慮する。

Hester Industries, Inc. v. Stein, Inc.
(97-1352,-1353,Decidec May 7, 1998, CAFC)
 251条の再発行出願の要件として"ERROR"と"ORIGINAL PATENT"の要件がある。
・"ERROR"
 上記のClementの判決を踏襲。
 審査経過禁反言が適用される事項についてのリキャプチャーはできない。
 この事件では元クレーム中の"solely with steam"と"two steam souce"という限定を再発行クレームで削除した。これらの限定は審査中に先行技術との区別を主張するために繰り返し"critical"あるいは"materially"であると主張していた部分であった。この事件では出願人の主張(補正なし)だけでリキャプチャールールが適用されることが示された。
・"ORIGINAL PATENT"
"objective intent to claim"要件を基礎にして判断する。
 112条の開示要件を満たすこと。

*Recapture rule
Ball Corp. v. United States
(事実) B社は審査中にクレーム1〜8をキャンセルし特許された。その2年以内後に再発行出願し、元の特許クレームより広く、またキャンセルしたクレーム8よりもある意味で広いクレームで登録された。USはキャンセルしたクレームを再発行特許で得ることはできないとして特許無効を主張した。
(判示事項)
 キャンセルしたクレームについてB社が放棄したことを示す証拠が不十分である。
 追加したクレームは、限定を加えている点クレーム8より狭く、他の限定を書いていることからクレーム8より広い。
 再発行特許されるか否かは、Scope of claimsを諦めたか否かであって、審査中に個々の特徴や要素を諦めたか否かではない。
(過去の判例)
 元の出願で放棄されたChief elementは再発行特許で付加することはできない(Riley v. Broadway-Hale Stores)、キャンセルしたクレームと同じか、それより広いクレームを再発行特許で得ることはできない(Haliczer v. United State)。

*Intervening Right
Seattle Box Co. v. Industrial Crating & Packing Inc.
(事実)
 S社はパイプの径よりも大きい高さのスペーサーブロックを有するシステムの特許を有していた。I社はこの特許を回避するためにパイプ径と同じ高さのスペーサーブロックを有するシステムを実施していた。
 S社はI社を訴えた後、再発行特許出願を行い、パイプの径と実質的に同じまたはそれよりも大きい高さのスペーサーブロックを有するシステムにクレームを補正した。
(判示事項)
 I社は再発行特許は侵害しているが、元の特許は侵害していない。I社は再発行特許が登録された時に持っていた在庫品についてその実施が許される(Intervening Rightがある)。

*再審査
In re Recreative Technologies Corp.(38USPQ2d1776)
(事実)
 R社がP社を特許侵害で訴え、P社がR社特許に再審査を請求し、再審査において審査官が元の審査で引用された証拠で拒絶した。
(判示事項)
 1)再審査で提出できる情報は、特許出願の元審査のときに示されなかった先行技術に関するものに限る。
 2)元審査で証拠が示されなかった時に元審査での欠陥を再審査でやり直すことができる。元審査で証拠が示されている場合はやり直すことができない。

*再審査
In re Portola Packaging, Inc. (42USPQ2d1295)
(再審査請求の要件)
 特許性に関する新たな問題を提起する場合に限り再審査請求できる。
(事実)
 審査において、引例Aと引例Bとが引用され拒絶理由されたが、引例AとBとを組み合わせるという拒絶理由はなかった。出願人はクレームを補正し特許された。
再審査において、請求人は(1)引例Aまたは引例C(新しい引例)と同一、(2)引例Aと引例Bとの組合せから自明、との理由を示した。
 PTOは引例Cがあることから、再審査の請求を許可し、再審査を開始した。
 特許権者はクレームを補正したが、最終的に引例Aと引例Bとの組合せから自明という拒絶査定が出された。
(CAFC)
 再審査は3つの利点を達成するために施行された。 
  (i) クレームの有効性の確定を裁判所よりも早く且つ安く行なう。
  (ii) 裁判所が特許法と技術の専門知識を有する特許庁に有効性の問題を検討させる。
  (iii)有効性に疑いのある特許を見直す機会を与えることによって、特許権をより確実にし、投資家の信頼を強化する。
 一方で、議会は法制定時に特許権者に対する嫌がらせによ再審査や、同じ先行技術に基づく根拠のない再審査を強いられ、特許期間が無駄になるという恐れとのバランスを考慮した。その結果、特許出願の審査において審査官がすべての関連先行技術を示していなかった場合に限り再審査請求を許可することとした。先の審査が適切になされたか否かにかかわらず、同じ引例に基づく同じクレームの再審査は許されない。
[判決]
 (1)審査ではAとBとの組合せの拒絶理由を明示していないが、審査官は公務員として適切に公務を遂行したと推定できる。審査官は引例が拒絶理由に適切であるかどうかの評価を行なっている。
(2)再審査によって、クレームの拡張は許されない。再審査における補正後のクレームはもとのクレームよりも広い事項を含むことは有り得ない。従って、より狭く補正されたクレームは、もとの審査において審査官が必然的に考慮しているはずである。
 よって、原審破棄。


12.国際権利化手続(International Prosecution)

*パリ条約の優先権
In re Gostelli
 外国出願を基礎にした優先権主張が認められるための要件
 基礎となる外国出願が112条(a)の記載要件を満たしていることが必要である。
 本ケースでは、Subgenusを開示していた外国出願を基礎に優先権を主張して、米国出願でGunusをクレームした。この外国出願と米国出願との間にspeciesを記載した米国出願があった。
 外国出願にはSubgenusしか開示していなかったので、Gunusクレームについて外国出願は112条を満たしていなかった。従って、優先権が認められず拒絶された。

*119と102(e)との関係
In re Hilmer(Hilmer 1)

 優先権主張出願の後願排除効(102(e))の基準日は米国出願日である。

*119と102(g)と103との関係
In re Hilmer(Hilmer 2)
 102(g)の後願排除効の基準日は米国出願日である。
(本ケース) インターフェアレンスにおいてHilmerは敗者となった。その後、カウントの主題から特許的に区別できる発明をクレームした。インターフェアレンス勝者のカウントと他の引例との組合せで自明であるとの拒絶を受けたが、先行技術は米国出願日を基準にするので、該米国出願日よりも早く出願した本願のクレームに権利が与えられた。

*119と102(g)
In re Deckler(977F.2d.1449,24USPQ2d1448)
 インターフェアレンスにおいて、相手側の外国出願の優先日により敗者となった場合、インターフェアレンスの際のカウントの主題と特許的に区別できないクレームについて権利を得ることができない。権利を得ることができるとすると、インターフェアレンスの勝者のクレームと再びインターフェアレンスを行なわなければならなくなる。インターフェアレンスの決定は、既判効果と付随的禁反言の効果が生じる。

13.権利侵害(Infringment)

*クレーム解釈
Markman v. Westview Instruments Inc.
クレームの解釈は法律問題(JMOL)である。従って、地裁では判事が審理し、控訴審ではdenovo(覆審)で審理される。事実問題であれば陪審が審理を行なうことができ、控訴審ではSubstantially evidenceの基準で審理される。
 クレーム解釈のための資料
 1)クレーム、2)明細書、3)審査経過記録
 外部証拠(専門家、発明者の証言、辞書、論文など)は技術用語の理解には有用かもしれないが、クレームの文言の意味を変えることはできない。

*均等論
Graver Tank v. Linde(339US605)
(背景)
 リンドの特許はアルカリ土類金属ケイ化物を使用する。
 グレーバータンク社はマンガンのケイ化物を使用する。
(判示事項)
1)侵害の訴求は、まず、クレームの文言で判断する。
2)文言だけの判断では、特許権が無意味となる。すなわち、発明の構成の重要でない部分に変更を加えた模倣物を製造販売することを許すことになる。
3)Function/way/resultが同一ならば均等論侵害を訴求できる。
4)パイオニア発明だけでなく、改良発明にも均等論は適用できる。

*均等論と包袋禁反言
Warner-Jenkinson v. Hilton Davis Chemical Co.
(判示事項)
 1)均等論
 クレームと被告方法との差異が非実質的であるか否かを客観的基準に基づいて評価し、非実質的であれば均等論を適用する。
 非実質的か否かのテストの一つとしてfunction-way-resultテストがあり、これがすべてではない。当業者が置換可能性があるものを知っていたかも重要な基準となる。
 侵害者の主観的要件は均等論の適用に影響を与えない。
 desiging aroundは均等論侵害を否定する方向で働く。独自開発は侵害の成否に無関係であるが、模倣は非侵害を否定する方向に働く。
 2)オールエレメントルールでクレーム解釈を行なう。
 3)均等の判断時は侵害時である。
 4)審査経過中の補正は、特許性に係わるものであるという推定が働く、この推定を覆すためには特許権者が特許性に係わるものでないことを立証しなければならない。

*The "All Elements" Rule
Penwalt Corp. v. Durand-Wayland, Inc. (833F.2d.931,4USPQ2d.1737)
(背景) ペンウォルトは果物選別装置に関するUSP4106628を所有しデュランドの装置に対して侵害訴訟を提起し、地裁は文言侵害も均等論侵害もないと判決した。ペンウォルトは控訴した。CAFCは地裁判決を認める。
(判示事項)
1)文言侵害について
 means plus fanctionクレームは、その機能を備えるすべての手段を含むものではない。112(6)に規定されるとおり、明細書に記載されたものと、その均等物に限定される。
 デュランド装置には上記手段が欠如している。従って、文言侵害はない。
2)均等論侵害
 均等論の下では、実質的に同じ結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を達成すれば侵害が認定されることがある。
 しかし、これはクレームの限定を無視できることを意味しない。
 被疑装置にクレームのすべてのエレメント、あるいは、その均等物が存在することを証明しなければ侵害を認定しない。

*Means plus function
Valmont Industries Inc. v. Reinke Manufacturing Co., Inc.(25USPQ2d1451)
・112条(6)の解釈
 第2文は制限条件として働く。従って出願人は明細書中にミーンズプラスファンクションに対応するなんらかの構成を記述しなければならない。また、ミーンズプラスファンクションを、明細書中に記述された構造、材料もしくは作用またはそれらの均等物までの範囲に制限するように解釈しなければならない。(均等論というよりは逆均等論のように働く
・文言侵害の要件
明細書中に記載されたミーンズプラスファンクションに対応する構成の構造、材料もしくは作用と、同一または均等な手段を有し、その手段はクレームで定義されたものと同一の機能を果たさなければならない。
・均等論侵害の要件
均等論の下での均等は、非実質的変更"insubstantial change"の考え方を含む。
均等論においてはいわゆる3要素テストが含まれる。
・均等論における均等と112条(6)の均等
 両者はともに、非実質的変更があるか無いかを考慮する点で共通する。しかし、両者はその趣旨及び目的が異なる。
 112条の均等の決定には、3要素テストを含まない。112条の均等では明細書に記述された構造と、訴えられた物との比較を唯一の考慮対象としている。

*Element & Limitation
Corning Glass Works v. Sumitomo Elec. USA, Inc.
(868F.2d.1251,9USPQ2d1962)
1)"Element"の意義には、"a single limitation"の意と、"a series of limitation"の意とがある。"All element rule"においては、訴追対象物がクレームの"limitation"の均等物を持つことを示さなければならないが、対応する"component"を持つことを示す必要はない。
2)均等判断には"function/way/result"テスト、"substitution of ingredient"がある。
3)均等と公知
 均等論によって広がる範囲は公知技術を含むことはない。

*禁反言
Southwall Techs, Inc. v. Cardinal IG Co.
 出願審査において、2ステップの引例を示され、本特許は1ステップで行なうと特許権者が主張していた(実際には特殊組成の2層被膜にすることが発明のポイントであったようだが)。
 イ号方法は2ステップで行なっていた。本特許は審査経過禁反言により2ステップは含まれないと解釈するべきであるから、イ号方法は非侵害。

*均等と公知技術
Wilson Sporting Goods Co. v. David Geoffery & Assocs.
(904F2d677,14USPQ2d1942)
 従来技術を含みような範囲にまで均等の範囲は広がらない。
均等論によってイ号製品を含むような仮想クレームを作成したが、該仮想クレームが先行技術を含むような場合は侵害にならない。

*Dedication to the public(Maxwell case 39 USPQ.2d 1001)の解釈
YBM Magnex, Inc. v. International Trade Commision et al.
(97-1409, Decided May 27, 1998 CAFC Newman)
(事実)
YBM社は永久磁石合金に関する特許を有していた。その特許のクレームは
「6000〜35000ppmの酸素が含まれる」ことが要件となっていた。
San Huan, Ningbo と Tridusの3社は、永久磁石合金を米国に輸入していた。その永久磁石合金は
”5450〜6000ppmの間の含有量で酸素を含んでいる”ものであった。
YBMはITCに輸入差止を求めたが、ITCは1996年に判決されたMaxwell caseを引用して"明細書に開示しているがクレームに記述していない主題は公衆に献上されたもの"であるから、均等論を適用することはできない。従って侵害しないと決定した。
[Maxwell Case]
 Maxwell caseの事実関係は、均等判断の決まり切った事実関係ではなかった。
 Maxwellは明細書に2つの別個の代替方法を開示していたが、そのうちの1つの方法についてのみクレームしていた。両方法の詳細は特許の中で開示されていた。Maxwellは、クレームしなかった方法をクレームされた方法と区別し、クレームしなかった方法が審査されるのを避けた。
 2つの方法を区別している点から、CAFCはクレームされていない方法に、クレームされた方法の均等物として、権利行使の機会を与えることを否定した。
 Maxwell caseではクレームされていないものは公衆に献上したものであると判断した。
(判示事項)
 1)最高裁判決やCAFC判決では、明細書に開示しているがクレームに開示していないものについて、均等論を適用したものが多数ある(例えば、Graver Tank:85USPQ328(1950)、Warner-Jenkinson:41USPQ1865(1997))。
 2)一方、Maxwell caseのごとく、クレームしなかった範囲は放棄したものとみなし均等論を適用しなかった判決も、Maxwell case以前から存在している(例えば、Unique Concept: 19USPQ2d1500(1991))。
 3)均等論は、特許された内容を定義しそして知らせるためのクレームの目的と、特許発明から非実質的な変更でごまかし的に特許範囲を外すことを無効にする司法上の責任と のバランスの上に成り立っている。だから、Maxwell caseで判示された"公衆に献上した技術に均等論を適用しないというルール"が、全てのケース又は全ての事実において適用されるということではない。
(判決)ITCはMaxwell caseを誤って適用した。ITCの決定を取り消す。

*寄与侵害
Hewlett-packard Co. v. Bausch & Lomb Inc.
(寄与侵害の成立要件)
 1)直接侵害の存在
 2)特許発明以外の用途が不存在
 3)被告が侵害を誘発または寄与することを知っていて、侵害を起こさせる意図があった。
(本ケース)
 BL社はローラーの製造販売部門を訴外A社に譲渡した。そのローラーの製造販売がHP特許を侵害することをBL社は知っていた。BL社は譲渡契約の中で特許補償条項を設けていた。BL社は該部門を譲渡したかっただけで侵害を起こさせる意図はなかったと主張した。一般に特許補償条項は寄与侵害の意図を成立させないが、その補償条項の目的が特許権を侵害してはならないという抑止を克服するものである場合は意図が推定される。本件ではそのような目的はなかった。

*寄与侵害、修理と改造
Sage Products, Inc. v. Devon Industries, Inc.
(事実) アウターとインナーとの組合せからなる特許発明を原告が所有していた。そのインナーは使い捨て部品であった。原告に製品にはインナーの使用は1回に限ると記していた。被告が原告のアウターに適合するインナーを製造販売した。
(判示事項)
1)誘引または寄与侵害を証明するためには、ユーザーが直接侵害していることを証明しなければならない。
2)特許品を得た者には、それを修理するために非特許部品を交換する合法的権利が与えられている。
 その特許の中での交換部分の大きさ、重要さは、修理または交換を構成するか否かの決定においては無関係である。
3)改造(侵害)と修理(非侵害)の区別は、部品が本質的、区別的なものであるかどうかに影響されない。

Repair and Recostruction doctrine
 許されない改造とは、その製品が全体としてみたときに使い尽くされた後に事実上新しい物品を作り出すといったような、その製品の真の改造に限定される。
 摩耗することを前提とした部品の交換は改造というよりも修理である。しかし、特許されたものの第二の創作になるような交換は許されない。

14.賠償(Remedy)

Panduit Corp. v. Stahlin Bros. Fibre Works, Inc.
 法ではdamages(損害額)のみが請求できる。損害賠償額は侵害によって特許権者が被った金銭的な損失の補償として定義され、被告の違法行為による得失によらない。
 損害賠償額は、侵害のあった後の金銭的な状態と、侵害が無かった場合にそうなったであろう金銭的な状態との差として構成される。
 特許権者が侵害によっていくら被害を受けたかは、侵害者が侵害をしなければ、特許権者が何を得ることができたかを意味する。
(逸失販売利益)
 DAMPテスト
 侵害者による侵害(販売)が無かったときに得られたであろう販売の利益を損害賠償額として請求する場合には、特許権者は次のことを立証しなければならない。
 1)特許製品に対する需要があったこと、
 2)市場に受け入れられる非侵害代替製品が存在しなかったこと、
 3)特許権者が需要を満たす製造および販売能力を有していたこと、
 4)特許権者が得ていたであろう利益の額
(侵害品の値下げによる被害)
 値下げにより、販売量が増加し、結果として純利益は増加しているので値下げによる損失はない。
(合理的な実施料)
 逸失利益の立証ができない場合は、合理的実施料を請求できる。
 合理的実施料とは、業として特許製品を製造販売することを望む人が実施料として支払うことをいとわず、また、市場において適正な利益を得ながら特許製品を製造販売できる額である。
 合理的な実施料は侵害開始時に戻って判断する。さらに次のことを考慮する必要がある。1)市場に受け入れられる非侵害品が存在しなかったこと、2)特許権者の意思(ライセンスを決してしないという意思)、3)ライセンスによって失うであろう将来の事業及びそれに付随する利益、4)特許が侵害品に与えた市場価値。
(その他)
 損害賠償額はいかなる場合も侵害者がその発明を利用するための合理的な実施料に裁判所が定める利息および訴訟費用を加えたものより少ない額であってはならない。
 損害賠償額は陪審が査定する。陪審によらないときは判事が査定する。判事は査定額の三倍まで損害賠償額を増額することができる。

*特許実施(和解)契約違反に対する損害賠償
Gjerlov v. Schuyler Laboratories Inc. CAFC 97-1089
(事実)
 発明者GはS社を特許権侵害で訴えたが、和解が成立し、和解契約を締結した。
その契約には、S社は「電解質及びグルコースを合わせて69.5重量%以上含有する製品」のみの販売を認めると規定された。
 Gの特許クレームは「電解質及びグルコースを合わせて40〜60重量%含有する製品」であった。
 和解後、GはS社の製品の品質試験を行なった。この試験では電解質及び無水グルコールが併せて57.99〜59.22重量%でクレームの範囲内であり、且つ和解契約の69.5重量%を下回るものであった。
 S社は自社品質試験では電解質及び一水グルコールが併せて69.5重量%以上であると主張し、販売を続けた。
 Gは和解契約違反による損害賠償を請求し、地裁のマジストレートはその請求を認め、さらに、「特許侵害訴訟の和解契約違反における賠償額は特許侵害訴訟で認められる賠償額に準じて定められる。」との判決(Interspiro USA v. Figgie int'l., 18F3d927, 30USPQ2d1070)に基づき、賠償額を特許法に基づいて算定し、弁護士費用も認めた。S社は控訴した。
(CAFC)
1)契約違反ありの原判決を維持。
2)賠償額は州の契約法に基づいて算定しなければならない。地裁に差戻し。
 インタースピロ事件の契約は特許権侵害に直接絡んだものであった(すなわち、権利範囲内の製品について実施料を払うといものであった。)。本ケースでは、和解契約はクレームの範囲よりもさらに9.5%上回る範囲での実施についてのものであり、特許権侵害との関連がない。したがって、本和解契約違反が即、特許侵害になるわけではない。
 Gは特許権侵害についての立証が十分でなかった。クレームには上記以外の要件があり、それらを立証しなかった。特許権侵害の判断は不可能。


Rite-Hite Corp. v. Kelley Co.


*Willful Infringement
Underwater Devices, Inc. v. Morrison-Knudsen Co., Inc.
(717F2d1380,219USPQ5699)
(事実)発明者Rが下水道施設装置及び施設方法に関する特許を取得し、U者に譲渡した。
 M社はハワイの下水道工事の入札に参加したころに、U社からR特許を20万ドルでライセンスする用意があることを通知した。
M社は該工事を落札した後もU社は20万ドルのライセンスの申し出を繰り返したが、M社はライセンスを受ける代わりにR特許の回避方法を調査した。
 73年12月にM社の社内弁護士Sは「調査会社によって検索された特許のいずれのも開示されていなければ、その(従来)技術は実施料を支払わなくても実施できる。」とのメモを残したが、それには特許の有効性、侵害についての判断はなかった。
74年5月にSは「R特許に非常に近い装置と方法が51年に記載されており、R特許は(約80%の確率で)無効になるであろうから、実施料を支払う必要がない」というメモを作成した。
 SはU社の弁護士にM社はR特許が無効であると考えているとの手紙を送り、さらにSはR特許が無効であるというメモを残している。しかし、その時点においてR特許のファイルヒストリーの調査はされていない。
 その後の74年11月に特許弁護士の鑑定を受け取った。
 M社は74年8月から75年5月まで装置を使用した。U社は74年11月にライセンス申し出を止め、特許権侵害による損害賠償請求の訴を起こした。
(判決)
 侵害被疑者は他人の特許権の警告がある場合、侵害しているか否かを決定するために適正な注意を払う積極的義務がある。その義務には侵害となるかもしれない行為を始める前に弁護士から適切な法的アドバイスを受けることが含まれる。
 本件においては、M社は侵害行為を始めてから弁護士のアドバイスを受けている、Sは侵害行為を始める前にR特許の有効性、侵害について評価(この評価にはファイルヒストリーの分析が含まれる。)していなかった。さらにM社が特許弁護士から鑑定を受け取ったのは侵害が始まってからだいぶ後であった。
 従って、M社はR特許の存在を故意に無視した。よって3倍賠償(60万ドル)

*鑑定の内容
Bott v. Four Star Corp. (1USPQ2d1210)
故意侵害の認定には全体的状況を考慮にいれる。その中には
1)侵害者がアイディアあるいはデザインのコピーをしたかどうか?
2)他人の特許の存在を知ったときに、特許のクレーム範囲を調査し、それが無効であるあるいは権利侵害していないということを善意で信じるようになったかどうか?
3)侵害者の訴訟に対する態度
が含まれる。

鑑定書が正しく作成されていれば、「善意で信じることになった」ことの立証が可能である。鑑定書を作成した人が社内弁護士であってもなくても関係ない。但し、社外弁護士による鑑定の方が信用形成に有利である。

*鑑定の内容
Ortho Pharmaceutical Corp. v. Smith(959F2d936,22USPQ2d1119)
(事実)
O社は避妊薬用ステロイドに関する322特許を侵害する可能性のあるステロイドを製造していたが、これについては特許専門家から322特許とその親特許は無効かつ実施不能であるとの見解をしめす手紙を得て、それを信用していた。
 その見解には均等論に関する分析がなされていなかった。さらにその見解ではO社のステロイドが体内において化学変化して322特許のステロイドになることによる侵害可能性を示唆する内容が記載されていた。
(争点)
1)間違った見解を信じたことは故意の根拠になるか?
2)均等論の分析のない見解を信じたことは故意の根拠になるか?
3)侵害可能性を示唆する内容は故意の根拠になるか?
(判決)
1)専門家の見解は故意侵害の判定において重要なものである。その重要性は見解の法的正確性に左右されるものではない。すなわち、その見解が、裁判所が特許侵害ではないと判決するであろうと侵害者に信じさせるほど完全なものであったかどうかが問題になるのである。結論の誤りは問題にならない。
 本ケースでは、経験豊富な特許専門家によって、結論を導くための理由を十分に議論していた。従って、見解を信用するのは正当なことである。
2)結論を導くための理論性の欠如は問題あるが、均等論の分析の欠如は問題にならない。
3)体内での化学変化を特許侵害にあたらないという結論を信用してもおかしくない状況であった。すなわち、特許侵害か否かきわどい問題に関しては、自己に有利な方向に結論づけるものであり、そのことだけをみて、他人の権利を無視したとすることはできない。

*鑑定の内容
The Read Corp v. Portec Inc.(23USPQ2d1426)
(事実)
 P社はR社特許に関する鑑定を得ていたが、地裁は故意侵害を認定した。
(判示)
・原則:他人の特許権の存在を知った場合、この特許権に対し注意を払う義務がある。
 この義務には弁護士の鑑定(アドバイス)を受けることが必然的に伴う。
 しかし、アドバイスを受けなかったこと自体が故意侵害認定に直接つながるわけではない。
・弁護士の見解書の存在にもかかわらず故意が認定されるのは、次の場合である。
 1)見解書を無視して侵害者が実施した。
 2)見解書が不適格であった。
・見解書が不適格と認定するには証拠を要する。その証拠として
 1)必要な事実を調べておらず、従って結論に根拠がないこと、
 2)事実に関する検討のない単なる陳述や表面上もしくは即席の分析しかおこなわれていないこと、
 ただし、クライアントが弁護士の見解書を評価しなければならないということではない。

*故意侵害と鑑定書
Graco Inc. v. Binks Manufacturing Co.
・故意侵害の認定における鑑定書の有効性
 1)見解書において特許の有効性に必ずしも言及している必要はない。
 2)見解が法的に正しいか否か(裁判所と同意見か否か)は、故意侵害の認定においては関係ない。
・改良型ポンプ(イ号の一部)の販売開始後に得た見解書で権利侵害の結論を得、製造販売を中止した事実、イ号の一部が侵害であることを認めた事実は、
 故意侵害の根拠にならない。改良型ポンプの実施は特許権を無視した結果ではなく、不注意によるべきものだったと認定された。

*懲罰的賠償
Read Corp. v. Portec, Inc.(970F2d816,23USPQ2d1426)
1)賠償の増額は判事の裁量である。
条文に規定はないが故意侵害は増額され得る。
増額の判断はすべての事実、状況から、侵害が甚だしものであるか否かを考慮する。そして酌量されるべき点と責められるべき点を考慮する。
2)故意
被告の行為が非侵害であるという合理的信念を持たずに行なわれた場合、鑑定書にそのような信念についての証拠能力を要求される。
他人の特許権の存在を知ったものはその権利を尊重する責務がある。
故意の立証にはコピーがあったか否かが考慮される。

Ivac Corp. v. Terumo Corp
侵害開始時の善意を示さず、そして特許弁護士のアドバイスに従い、設計変更の努力をせず、訴訟で悪意をしめした場合は3倍が妥当

Datascope Corp. v. SMEC. Inc.
被告の行為は故意ではあるが、あつかましくない(not blatant)ので50%増額が妥当

Chisum v. Brewco Sales & Mfg.
被告行為は故意だが3倍にするほどひどくないので、逸失利益は3倍でなく2倍である。

*Marking & Notice
Amsted Industries v. Buckeye Steel Castings Co.
 法287条は特許製品に特許表示をしなければ、警告前の侵害行為に対して損害賠償を請求できないと規定している。
(事実) 本ケースで原告は1986年に同業他社に対して「原告は269特許を保持しており、侵害する場合は法的手段に訴える」との手紙を送付した。
 次いで1989年に被告に対して「被告は269特許を侵害している」との手紙を送付した。
(判示事項)
 警告には、侵害製品を特定し、具体的措置を請求したことを、その行為者に直接的に伝えることが必要である。侵害者が自己の行為が侵害行為であることを知っていたかどうかは関係ない。
 1986年の手紙は単なる通知で、警告にあたらない。従って損害賠償は1989年の手紙以降についてのみ認める。

*製造等していない特許権者と特許表示
Wine Ry. Appliance Co. v. Enterprise Ry. Equipment Co., 297US387(1936)
(背景)旧特許法(1861年法)では、製造等をしていない特許権者は、損害賠償を請求するために、公衆に特許品であることを知らせる義務は無かった。新法(1870年法)では、製造等をしていつといないとに係わらず公衆に知らせる義務があるような規定になった。
(判決)
 製造等をしていない特許権者は、公衆に特許品であることを知らせる義務はない。新法は旧法の趣旨を変更するものではない。
 従って、製造等をしていない特許権者は、侵害開始時から損害賠償を請求できる。

*方法特許の特許表示
Hanson v. Alpine Valley Co., Inc. 219USPQ679
(事実)H社は方法クレームと装置(スノーマシン)クレームの特許を所有し、訴外のS社にライセンスしていた。
 A社はH社にスノーマシン3台を製造させ、それを使用していた。
 H社はA社が方法特許(装置特許については不問)を侵害しているとして提訴した。
(判決)
 H社はS社が装置にマーキングしていることを立証できなかったが、本件は方法特許にかかるものであるか、287条は適用されず、マーキングは不要である。

註)装置特許の侵害をなぜ訴えなかったか? 判決からはわからないが、1)装置特許の侵害が無かったか?、2)損害賠償額が少なかったか?などが考えられる。

Devices for Medicine Inc. v. Boehl 3 USPQ2d 1288
(事実)D社は医療用イントロデューサーとそれを使用する方法とをクレームした特許権についての専用実施権を有していた。D社はB社が該特許を侵害しているとして提訴した。
 D社は特許表示をしていなかった。
 B社はD社との訴訟の争点を損害賠償のみに絞るために、特許侵害及び特許無効について争わないというStipulationをした。
(争点)
 1)Stipulationによって特許の存在を知ったB社に、D社はNoticeをする必要があるか?
 2)方法クレームを含む特許において278条のNoticeは必要か?
(判決)
 1)287条は「侵害者が侵害していることを通告された」という証明を要求している。特許の存在を知っていたことだけでは足りない。特許侵害の存在を知っていることが必要である。
 2)装置クレームと方法クレームの特許権侵害は、方法クレームのみの特許権侵害と事情が異なる。通告が必要である。

註)HansonとDevicesは、方法クレームと装置クレームとを有し、特許権としては同じシュティエーションであるが、通告についての判断が異なる。
 この2ケースから、方法クレームのみについての特許侵害を訴えることによって、通告の立証を要しないで済むという脱法行為が考えられる。しかし、それは許されないであろう。
 おそらく、Hansonでは装置クレームの侵害がなかったから、方法クレームだけで判断したのではないか、一方、Devicesでは装置クレームの侵害があったから、両方のクレームで判断したのではないかということが考えられる。

*製法クレームとマ−キング
American Medical Systems Inc. v. Medical Engineering Corp. 28USPQ2d1321
(事実)
1986年7月1日  765特許発行(装置クレームとその製造方法クレーム)
1986年7月下  M社、765特許の存在を知る
1986年8月   A社はM社に765特許の存在を知らせる。
1986年10月15日 A社は特許表示した装置を出荷(但し、特許表示のない装置も並行して出荷していた。)
1987年10月28日 A社はM社を提訴。
(判決)
1)損害賠償の起算日
 287条では、製品への特許表示又は侵害者への通知のいずれか早い時以前の侵害行為による損害の回復はできない旨を、規定している。 
 特許非表示製品の出荷は、公衆に、特許権の存在を誤解させるものである。
 特許非表示製品の出荷を中止し、実質的にすべての製品に特許表示がなされた日を起算日とする。
2)方法特許の特許表示
 方法特許に特許表示が不要なのは、特許表示が不可能だからである。
 装置と方法の特許権に対する侵害では、特許表示は必要である。

註)方法クレームには2種ある。装置の製造方法(American)と、装置の使用方法(Devices)とでは、異なる扱いがされるべきと思うが、判例では明確になっていない。

*特許表示と損害賠償(287(a))、意匠権侵害の利得返還(289)
Nike, Inc. v. Wal-Mart Stores, Inc. and Hawe Yue, Inc.
(Decided Mar. 12, 1998 CAFC)
(事実)
 1993年10月13日 N社は"Air Mada Mid"というシューズの意匠出願をした。
 1994年4月   意匠出願に係るシューズを売りだした。
 1994年07月19日 意匠権が成立した。その時点でシューズは市場に十分行き渡り小売店にストックされていた。
 N社は権利発行後、マーキングの手続を行なった。
 1995年04月   H社はN社シューズの模倣品を輸入し、
 1995年05月   W社が該模造品を小売販売した。
 1996年01月18日 N社はW社及びH社を意匠権侵害でヴァージニア東部地裁に提訴した。
 地裁は、W社及びH社はN社の意匠権を侵害していると判決し、289条に従ってN社に侵害者の利得"Profit"の返還を命じた。287(a)条は適用しなかった。
 W社及びH社は、マーキングと賠償額について控訴した。
(背景)
 287(a)条はマーキング(特許表示)に関する規定である。この規定は「特許権者は特許製品に特許表示を付すことができる。そして、特許表示などによるNoticeが無い場合はNotice以前の損害"Damage"が補償されない」旨を述べている。
 一方、289条は意匠権侵害における賠償に関する規定である。この規定では「意匠権に係る意匠と同一又は模倣物を正当な権限なく販売等した者は、総利得"Profit"の範囲で権利者に返還する責任がある」旨を述べている。
 "Damage"と"Profit"は長年区別されて扱われてきた。例えば、Braun Inc. v. Dynamics Corp. of America,975 F.2d 815(1992)では289条の利得の返還に284条の3倍損害賠償の規定を適用しなかった。本ケースでも、地裁は、利得と損害を区別し、損害に適用されるマーキングの規定を289条の利得の返還には適用しなかった。
(CAFC判示事項) 
マーキングの規定と賠償の規定とは並行して別々に発展してきた。
マーキングの規定は、(1)罪の無い侵害を防ぐ、(2)権利者に特許表示を義務づける、(3)第三者が特許品か否かの判断するのを助けることを目的としている。
 特許表示が無い場合、旧法では罰金を科せられたが、現在は"Damage"の賠償請求ができないと変更されている。
 Damageの賠償においては、しばしば、侵害者の利得を権利者の損害として賠償させるケースがあった。
一方、賠償の規定においては、意匠権侵害による損害の立証が困難であったことから、意匠権侵害者の利得を意匠権者に返還させるという289条を制定し、意匠権者の権利を強化した。
 マーキングの規定におけるDamageの意味は、法制定の歴史等から、文字どおりの損害だけでなく、侵害者の利得によって計算される賠償も含むと解される。
 従って、意匠権侵害における利得返還にマーキングの規定を適用できる。

*製法特許と輸入
The Budd Co. v. Complax Corp. (19 USPQ2d 1318)
(事実)B社は射出成型法の特許を所有していた。C社はカナダで自動車部品の射出成型を行なっていた。
 B社はC社製品"ルミナ"についてのDiscoveryを要求した。
 C社は製品を米国に輸入していないとの宣誓供述書を提出し、271(g)の適用はないから要求は拒絶されるべきと主張した。B社はC社製品が輸入され米国販売業者で販売されている証拠を提出し、271(b)の可能性があるから略式判決は時期尚早と主張した。 
(判示) 連邦民訴規則によれば、略式判決は真にマテリアルなissueが存在しないときに行なわれる。B社は規則を満たす宣誓供述書を提出している。略式判決前に"ルミナ"についてのDiscoveryが必要である。

*製法特許と輸入
Pfizer Inc. v. Aceto Corp. (31 USPQ2d 1542)
(事実)P社は調味料の製法に関する特許権を所有していた。中国企業A社は中国で調味料を製造し、中国企業シノケムに卸し、シノケムから米国企業F社が輸入していた。
 P社はA社とF社を特許侵害で訴えた。A社は直接輸入を行なっていないので、271(g)の適用はないとして請求却下を求めた。
(判示)
 271(g)は、外国で米国製法特許を使用して製造された製品の輸入を阻止するために制定された。しかし、米国製法特許の外国での使用を禁止するものではない。
 A社は製品の輸入を行なっていないので271(g)の適用はない。F社は製品の輸入を行なっているので、もしA社製品が製法特許によって得られたものであるならば、P社はF社に補償請求できる。

Pfizer Inc. v. F&S Alloy and Minerals Corp (32 USPQ2d 1369)
(事実)P社はA社に対する訴に上記のごとく失敗したが、F社に対する訴を継続した。
 P社は、P社ディレクターG氏がA社を視察した際に結論したA社製法についての証言及びP社の技師(MIT教授)によるSレポートに関する証言を行い、A社の製法がP社特許の権利範囲内であると主張した。
 一方、F社は、Sレポート(A社製法を記述したもの)とA社マネージャーのデクラレーションとA社の工場生産記録の提出及びF社専門家M氏のSレポートに関する証言を行なった。
(判決)
 F社の提出のデクラレーションは信頼性に欠けること、さらにそれは伝聞証拠であることから受理できない。A社の工場生産記録は欠落部分があり証拠とし不十分。F社の証拠はSレポートとM氏証言のみであり、非侵害の主張には不十分。

*親会社と子会社
A.Stucki Co. v. Worthington Industories Inc. (7 USPQ2d 1066)
(事実)
1976年にR社はS社特許の無効確認訴訟を起こし、S社はR社を特許侵害でカウンタークレームした。
1979年12月R社株の50%を所有するB社の株のほとんどをW社子会社が取得した。R社株の残り50%はR社長が所有していた。
1980年05月W社子会社はB社を併合し、社名をB社とした。
1983年03月R社v.S社で、地裁はR社に賠償の支払いを命じる判決を下した。両者控訴したが、1984年01月CAFCは地裁判決を支持した。
1983年11月S社はW社とR社長に対して、侵害に対する連帯責任、the Racketeer Influenced and Corrupt Organizationが有るとして提訴した。
1986年08月R社長に連帯責任を認める略式判決がなされ、その後、R社長はS社と和解した。
1987年10月W社に連帯責任を認めない評決が出された。S社は控訴した。
(争点)
 子会社の侵害行為について、親会社が責任を持つのか否か?
(判示事項)
A.直接侵害について
1)R社とW社とが別個個別の企業でないと認めるにたる証拠が有る場合のみに、W社はR社の侵害行為に責任を生じる(Orthokinetics, Inc. v. Safety Travel Charis, Inc. 1 USPQ2d 1081, 1090)。単に資本を所有しているという事実だけで別法人でないとは言えない。
 侵害行為後に、W社がR社の株を購入した事実だけで別個企業でないとは言えない。
2)親会社と子会社との間に重複する事業が存在し、その重複事業が親会社によってコントロールされている場合(Milgo, 206 USPQ 493)に、あるいは子会社の侵害行為を形成する各実施行為が親会社のコントロール下で行なわれた場合(Swift Chem. Co. v. Usamex Fertilizers Inc. 197USPQ10,21)に、子会社の侵害行為について、親会社に責任が生じる。
 W社がR社をコントロールしていたという証拠がない。
3)侵害品の製造に使用された装置などを購入した企業は、該装置の前所有者に対する差し止め命令に拘束される(Kloster Speedsteel AB v. Crucible Inc. 795F2d1565)。
 W社がR社の侵害責任を引き継いだとする証拠が示されていない。
B.間接侵害
 W社がR社の侵害を幇助したというには、積極的な証拠が必要である。
C.RICO(横領、不正など)
 W社がR社の利益を取り上げて、S社に対する損害賠償の支払い能力を奪ったとする証拠はない。

*親会社と子会社
Milgo Electronic Corp. v. United Business Communications (206 USPQ 481)
(事実)
1965年M社は8相PSKを利用した狭帯域モデモを開発し、1966年特許取得した。
1970年R社はM社特許を侵害する製品を製造、販売した。R社の親会社UBC社も該製品を販売。
1972年M社はR社、UBC社及びUBC社の親会社U社を特許侵害で提訴した。
 地裁は、R社の行為は特許侵害と認定し、さらにR社はUBC社の単なる仲介(Insutrumentality)又は代理店(Agency)に過ぎないのでUBC社は連帯責任を負うとし、U社には法的責任はないと判決した。
(争点)R社の侵害行為に親会社UBC社に法的責任があるのかいなか?
(判示事項)
親と子が一体と同様の関係にあるかどうか、そのような関係にないとしても親の行為に明白な誤りがあれば、親に責任が及ぶ。
 親子関係においてCorporate veilが認められるか否かは、以下の10要件が考慮される。
 1)親が子の授権資本の全てもしくは大部分を所有する。
 2)親と子に共通の取締役又は幹部が存在する。
 3)親が子の資金を調達する。
 4)親は子に授権資本の全てにサインしている。
 5)子の資産が不十分である。
 6)親が、子の給与もしくは必要経費、損失を支出している。
 7)子は実質的に親会社以外に事業を所有せず又は親会社から譲渡された財産以外を所有せず。
 8)親の文書中で、該子会社を部、事業部等と呼ぶ。
 9)子の取締役又は幹部は子のために独立して行動せず、親会社の支持を受けている。
 10)子には分離独立会社への正式な法的要求がない。
UBC社とR社とについては1)〜8)の要件を満たしていたので、Corporate veilの疑いが大きい。
 UBC社の行為はR社を隠れ箕にした不正行為である。地裁判決を支持する。

*子会社の裁判権
Dainippon Screen Manufacturing Co., Ltd. and DNS Electronics,LLC
v.
CFMT, Inc. and CFM Technologies, Inc.
(97-1569, Decided April 29, 1998 CAFC)
(事実)
 1992年、CFMは特許管理会社CFMTを設立し、CFMの全ての特許権をCFMTに譲渡し、CFMTは排他的実施権をCFMに許諾した。譲渡契約には「CFMTだけがサブライセンス、侵害に対する法的処置を講じる権限を有する」と規定されていた。
 1995年、D社は展示会にCFM特許の侵害を考慮した製品を展示しようとし、CFMに接触し、同年6月にCFMT社長兼CFM会長のM氏及びCFM社長のC氏とサブライセンスの可能性について交渉した。M氏及びC氏はD社製品は特許侵害があると考え、CFMTとCFM両者の代理人であるP氏に相談し、P氏がD社代理人T氏に権利行使の可能性があることを電話及びレターで通知した。
 M氏及びC氏はD社と交渉を続けたが交渉は決裂した。D社は交渉決裂後、CFMTとCFMが特許侵害で他の競合会社を訴えたことを知った。
 そこで、D社は該製品の展示及び販売開始を決定し、さらに、カリフォルニア北部地裁に特許非侵害及び特許無効の確認の訴をCFMT及びCFMに対して起した。
 地裁は、「両当事者間に争点がある。しかしながら、CFMT(特許権者)は必須当事者であるにもかかわらず、カリフォルニア州における裁判権がない。」として請求棄却した。
(CAFC)〜差戻し
A. Personal Jurisdiction(裁判管轄)
 州外者が、その州において裁判管轄をもつためには、
 1)州法(Forum state's long arm statute)が許可しているか?
 2)適正手続(due process)に違反しないか?
 CA州では、司法権が適正手続で処されているか?で判断される。
本ケースで、CFMTはCFMのM氏らを通してD社に侵害に対する権利行使の脅威を与えている。CFMはCA州においてCFMT特許に係る製品の販売等の活動をし、その収入はCFMTに還元されている。さらにCFMTはD社にサブライセンスするためにCA州で交渉した。
これらの事実はCFMTがCA州に裁判管轄をもつに十分な事項である。
B. Indispernsability(必須当事者)
 必須当事者か否かの因子は、
 1)不在者に及ぶ不利益がどこまであるか?
 2)不在者の不利益を防ぐための法的救済能力が裁判所にあるか?
 3)不在のままでの判断に妥当性があるか?
 4)仮に請求棄却しても他に訴えることができる管轄があるか?
本ケースでは、
 1)CFMTはCFMに完全に支配された子会社で、CFMTが不在でも、CFMT特許の利益はCFMによって守られる。またCFMTが不在でも争点の変更を生じない。
 2)確認の訴においては、裁判所の救済能力はあまり関係がない。確認の訴に於ける法的救済が特許権者の出席で影響されないからである。
 3)確認の訴は、原告が欠席者による確認行為を求めるものではない。
 4)CFMTはデラウエア州の法人であるから、そこで訴えることができる。しかし、他に管轄があることで自動的に請求棄却とすることはできない。全ての因子と衡平の原則を考慮すべきである。
 よって、CFMTは必須当事者ではない。

Attorney-Cliant Privilege in Japan
*Attorney-Cliant Privilege
Burroughs welcome Co. v. Barr laboratories Inc.(25USPQ2d1274)
(定義)弁護士と顧客と間で行なわれた法的問題に関する会話、通信等について秘密状態にあるものは、特権情報としてDiscoveryの際に開示が免除されること。
(要件)
1)両者が顧客関係にある。(社内弁護士と会社とにも顧客関係がある)
2)顧客が交信した相手が、弁護士あるいは弁護士の指示で活動した者等である。
3)弁護士が顧客からの連絡を受けて、第三者の介入なく、法的意見、法的助言あるいは法的手続の援助を行なった場合であって、犯罪の目的でないもの(ビジネスの助言は含まれない。)
4)Privilegeが請求され、顧客によってPrivilegeが放棄されていない
5)文書に作成日、作成者、受取人等が明記され秘密情報を服務Privilegeの対象となる文書であることを証明できるような根拠が明確である。
(国外代理人との交信について)
 原則:外国出願手続を行なった国外代理人との交信文書に対しても、その外国の法律でPrivilegeが適用されており、それが、米国法と矛盾しない場合には、米国においてPrivilegeが認められる。


Stryker Corp. v. Intermedics Orthopedic Inc.(24USPQ2d1676)
 代理人と顧客との交信が米国に関係のないものであれば、裁判書は当該外国の法律によって当該交信にPrivilegeが適用されるかどうか判断する。
 米国に関係するものであれば、米国の法律を適用する。


Alpex Computer Corp. v. Nintendo Co., Ltd.(LEXIS 3129)
日本弁理士と顧客との交信にはPrivilegeは適用されない。
 日本民事訴訟法281条は証言拒否の規定であり、書面提出免除の規定ではない。

平成10年改正民事訴訟法220条1項4号には守秘義務文書の規定と、同法314条3項に文書開示要求不可の規定が追加された。この規定は文書開示要求ができるようにした規定(日本におけるディスカバリーの導入)である。ということは改正前においては、文書開示要求はできなかったのであるから、弁理士と顧客との交信文書の提出(情報開示)義務は無かった、すなわちプリビレッジが既に存在していたとの主張ができるのではないだろうか?

Novamont North America Inc. v. Warner-Lambert Co.(LEXIS 6622)
礼譲(COMITY)
 外国法の元で認められるPrivilegeと同程度の米国法Privilegeが存在すると考えられる。外国でAttorneyとして認められていない弁理士にまでComityを適用することはない。

Santrade Ltd. v. General Electric Co.(27USPQ2d1446)
1)ライセンス交渉の書類には適用無し、公開データを含む予備的準備書面に適用無し。
2)二者間の協力体制の元でのCommunicationには適用がある。
 その協力はいろいろなレベルで実施され、その協力下でAttorneyからの要求書類を中継しまたリーガルアドバイスを協力意思決定者間で伝達すること)
3)国毎
 日本弁理士(Agent)、適用なし。


Honeywell, Inc. v. Minolta Camera Co., Ltd.(LEXIS 5954)
Privilegeが適用される弁護士の定義
 de fact Attorneyにのみ適用ある。弁護士と機能的に均等な者(実務経験、法的知識豊富だが、弁護士資格を持っていない者)には適用無し。

Renfield Corp. v. E. Remy Martin & Co.(98FRD442)
 フランス弁護士には適用する。

*特許庁の審決(行政処分)は、
 行政手続法(Administrative Procedure Act)の基準"substantial evidence" または "arbitrary and capricious"でレビューすべきか?、
事実問題として"Clearly erroneous"基準でレビューすべきか?
In re ZURKO
(96-1258,Decided May 4, 1998 CAFC in banc)
(判決)
 clearly erroneous standardでレビューすべきである。
(理由)
 法制定の経緯〜行政手続法には"substantial evidence"または"arbitrary and capricious"でレビューすべきという規定があるが、本法は判例法や特許審査のごとき事実問題に関する事項は除外されると説明されており、公式な庁(agency)の手続に"substantial evidence"を適用し、非公式な庁の手続に"arbitrary and capricious"を適用するという規定を、特許庁の特許審査には適用しないと、559条を解釈する。

*著作権(真正品の輸入=First Sale Doctrine)
Quality King Distributors, Inc. v. L'anza Research International, Inc.(No. 96-1470 Argued Dec. 8, 1997; Decided March 9, 1998 S.C.)
(事実)限定された地域で、権限を与えられたretailerだけに再販することに同意したDistributorsに、L社はヘアケア製品を国内販売していた。宣伝等で国内販売を促進させていたが、国外市場においては、あまり宣伝等に力を入れていなかった。国外販売価格($4)は国内販売価格($8)よりも安かった。英国の販売業者は著作権の存するラベルを付したL社製品(米国で製造された)をマルタの販売業者に卸し、そのマルタの販売業者はQ社に卸して、Q社はL社の許可なく$6で権限の与えられていないretailerに販売した。
 L社は著作権侵害、すなわち「著作権法602(a)条は、権利者の許可を得た場合、個人使用目的の場合、教育用の場合及び政府等が使用する場合を除いて、国外でコピーされた著作物の輸入を禁止している。」としてQ社を訴えた。
 Q社はFirst Sale Doctrine(用尽説)により、すなわち「著作権法109(a)条は権利者が適法に販売した著作物を権利者から許可を得ていない第3者が販売等してもよいと規定している。」反論した。
(判決)
 高裁は用尽説を認めず、真正製品の輸入を侵害とした。
 最高裁は用尽説を適用できるとし、非侵害とした。
 ただし、著作物が国外でコピーされ、それが輸入されてきた場合にも用尽説が適用されるかどうかはわからないと付記している。

 著作物(ビデオ、書籍)業界の事情=国内価格と国外価格に格差をつけることが一般に行なわれている。例えば、東南アジアの国で、米国のビデオを国内価格そのままで販売しても、所得水準の低さから、購入できる者がいないため、国外価格を下げざるを得ない事情がある。東南アジアで販売したビデオが逆輸入されたら、国内業者への影響は必定となる。このような事情を一因として、602(a)条が規定されている。


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